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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2002/04/12(金) NO.274号 

将来を考えない金融行政

 主要行の「特別検査」の結果が公表された。大口融資先のうち要注意先に分類されていながら市場評価が悪化している149社(融資残12兆9000億円)について見直し、71社(同7兆5000億円)の分類を引き下げたそうだ。その結果、不良債権処理損失は7兆8000億円と、昨秋公表した予想を約1兆4000億円上回ったというし、自己資本比率もごく一部を除き、10%台をキープしたという。柳沢大臣は「公的資金で補強しなければならない状況にはない」と胸を張られた。
 果たして、そうだろうか?これでわが国金融システムへの信認は回復したといえるのだろうか?私は全くそうは思わない。これまでの企業破綻の際の債権回収実績と銀行による引当状況を見れば、今回の措置は単なる「問題の先送り」でしかないはずだ。そして、最も必要であった、金融監督当局への信頼回復のチャンスは失われた。そして、企業も国も最後の砦は人材だが、私が最も恐れているのはこうした状況が続けば、日本の銀行から大切な人材が外資や海外に本格的に流出してしまう事だ。私の言う「イチロー現象」だ。何よりもこれが一番困るのだ。
 金融庁側は「かなり思いきった処理をしてもらった。・・・今後は平常状態に徐々に近づいていくと思っている。2004年に正常化するよう努力したいし、努力すれば可能だ」と言い切っている。3年前の資本注入時の「不良債権処理終了宣言」よりは若干慎重だが、事実上の「安全宣言」といえよう。2年も経てば今回の判断の意味する事は分かるはずだ。
 ITを中心とした製造業や輸出関連産業中心に若干上向き機運が出ている中で、銀行を含め日本の経済の健全性に関する人々の見方は今若干緩んでいるように見えるが、本質的問題は何ら解決されていない。今日本に必要だったのは、問題の本質に切り込む、という政府による固い決意と実行だったのに、これで再びズルズルといく事となってしまった。いよいよ「小泉構造改革」には黄色信号が点滅し始めてしまった。何となれば、銀行の健全性回復と企業・産業の構造改革無くして、まだまだ間接金融に依存する日本では他のいかなる改革も貫徹できないからだ。竹中大臣には繰り返し申し上げてきた事だ。何とかしなければならない。やはり「政治システム(政策決定方式)」を変えるしかなさそうだ。

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