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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2002/08/21(水) NO.289号 

かけがえのない仕事をする日本のNGO

 バンコック経由でプノンペン入り。空港で、東京から先回りをしてくれていた地雷関連活動を中心とする日本のNGO「難民を助ける会(以下AAR)」の事務局長の長さんと合流。
 
 まずはポル・ポト時代に反対派を徹底弾圧・拷問・殺戮した収容施設「 Tuol Sleng 」を見る。延べ一万数千人を収容し、生き残ったのはたったの6人。後は拷問死かキリングフィールドで虐殺された。75年から79年までのたった4年弱の間に全人口の2割弱を殺したという。それも同じ民族で、共産化に反対ないしその疑いのある全ての人を殺すという、まれに見る蛮行だ。ポル・ポトはとりわけインテリが大嫌いで、メガネをかけた人は皆殺されたという。
 
 日本のODAでできた「カンボジア日本友好橋(現地での俗称「日本橋」)を渡り、中洲にあるAARの「キエンクリエン職業訓練センター&車椅子工房」(93年開設)を訪れる。地雷被害、ポリオなどの障害者の社会参加・復帰支援が使命だ。所長さんは唯一の日本人としてAARから派遣されている。元気の良い鹿児島出身の女性で、端々からこの一年余り、全力投球して来た事が分かる。丁度若手日本人男性と交代するタイミング。ちなみにこの女性の前任地はラオスだったそうだ(NGOではいつもしっかりした女性に出会う!新所長にも頑張って貰おう!)。
 敷地はカンボジア政府からの割り当てで、同一敷地内に義肢(義手、義足など)作成と、それらを着装しての障害者のリハビリをやっているアメリカのNGOと、ライ病患者のお世話をしているフランスのNGOが協力し合いながら共に活動。
 AARのセンターでの職業訓練は[1]テレビ・ラジオ修理、[2]オートバイ修理、[3]裁縫、の三つの技術訓練コースが中心で、訓練後、生徒が自立できている事を確認するフォローアップ調査にも力を入れている。当センター卒業生の7割はとりあえず自分の村などで電気屋さん、オートバイ屋さん、縫製屋さんを始めるが、その後はまだ不透明だそうだ。電気も電話も道もなく、地雷原もまだまだあるこの国で卒業生の追跡調査は困難だ。
 ちなみに各クラス約12人ほどで構成され、全員全寮制で約10ヶ月の訓練を受ける。約半分は地雷被害者で、義足の人が多い。もちろん両足不自由で車椅子の人も結構いる。一クラス2人くらいはポリオ障害者だ。
 当センターのもう一つの特徴は、全部品カンボジア製の折り畳み式車椅子工房を持っている事だ。建物の入り口を見ると「森進一氏からの寄付で建設」と書いてある。カンボジア国内で4つのNGOが約3000台弱の車椅子を製造し、そのうち約300台をAARが製造しているが、折り畳み式はAARだけだ。
 訓練生の眼差しは皆真剣そのものだ。教材はないので、指導者の言ったことを、綺麗にノートに書き留めている。このノートが彼らの郷里での「唯一の命綱」となるのだ。しかし皆明るい。車椅子工房では、私が来るのでわざわざ日本語の名札を着けて待っていてくれた。
 長さんや所長さんの話を聞くと、農業など肉体労働が中心のこの国では、地雷被害にあうと、「お荷物」として家族からもうとまれ、精神的には、地雷で体の一部を吹き飛ばされたショックと、「自分は足手まといだ」というプレッシャーでダブルにこたえてしまうそうだが、この訓練所に来ると、「同じ仲間がこんなにいるんだ!」との発見をして、皆明るくなり、お互い助け合い、毎日を真剣に生き始めるそうだ。数が減ったと言っても、この半年で500人強の地雷被害者がまだ出るこの国だ。AARの皆さんは、何とかけがえのない仕事をしているのだろうか!
 
 アメリカではODAの3割強がNGOを通じて行なわれている。それに対し日本はたった 0.5% 程度しかない。日本のODAのうち、カンボジアのような低所得国向けの一般無償援助は、全体で毎年2000億円強あるが、NGOは現在一切入れない。今回の一連の贈収賄事件で有名になった「コンサル」と呼ばれる企業が、商業ベースで企画したものを現地政府に働きかけ、JICA を通じて行なっているのが実態だ。現地ニーズに通じ、なおかつ商業ベースではなく「公益」を考え、実現しているNGOに対し、可能なものから一般無償援助の門戸を開放すべきではないだろうか。
(この点は私のホームページにも掲載している、NGO小委でまとめたNGOからの要望事項を参照してください。私としては、自民党に新たにできたODAを見直す小委員会のメンバーとしても、このような問題もしっかり検討していきたいと思います。)

バックナンバー

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