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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2002/12/21(土) NO.304号 

中央銀行総裁4つの条件

 このところ来年3月に任期満了となる速水日銀総裁の後任人事が、マスコミなどを賑わせている。現下の日本経済の状況を考えると、確かに極めて重要な人事。しかし、今のところ余りにも単純な発想の報道が多く、政権幹部なども、そのような報道をされてもしかたのない発言をしているようにも見える。
 「デフレは優れて金融的現象だから金融政策の出番だ」とか、「財政が出動できないのだから金融政策の出番だ」、あるいは「不良債権・産業再生で政府が手を打つのだから、今度は金融政策の番だ」として、いよいよインフレターゲットだ、アコードだ、といった発言がそこここで聞かれ、それを実行する人を次期総裁にする、とまで報道され始めた。
 今、マネーを十分供給するのは当然の使命だし、たしかにこれまでの日銀の政策は「戦力の逐次投入」の連続で、これでは国民も、日銀はやるべき事をしっかりやっている、とは思わないだろう。
 しかし、例えば日産自動車のように、あのまま銀行のコントロールを続けていれば、まごうかたなき不良債権となっていたはずの同社の業況が見事に回復した理由は、決して日銀のマネーの供給が増えたからではなく、ゴーンさんと日産社員の血の滲むような努力の結果にほかならない。今の日本経済の本源的問題は、マネーの供給だけでは決して解決されないし、インフレターゲットも、現下の経済状況では逆に信認を失うおそれがある。
 何よりも97年の日銀法改正の真価が、現在のような状況でこそ問われる。中央銀行の独立性は、いわばその国の民主主義の熟度を表わすもの。政府と中央銀行は細い糸で結ばれているものの、微妙な距離を保つ事が歴史的にも重要である事が証明されている。できもしない事を時の政権に安易に約束させられ、殆ど不可能な目標をめざしてどこまでも空回りをする金融政策のもたらす結果は、さしたる経済効果も達成できずに唯一無二の中央銀行の信認を失墜させることだろう。それは同時に国家そのものへの信用失墜を意味する。そして、信用は一度失うと回復には驚くほどの時間と労力が必要だ。
 
 とならば、次の日銀総裁の満たすべき条件は何か。私は次の4つだと思う。

(1)マクロ経済と金融政策に明るい人
   ---マクロ経済や金融政策の素養も経験もない人は論外だろう。
(2)不良債権問題など金融の実務に精通している人
   ---膨大な不良債権と銀行の資本不足に取り組む経験、センス、度胸が大切。
(3)政治的な圧力などにも動じない腹の据わった人
   ---永田町、霞ヶ関に振り回されていては通貨に対する信用は維持できない。
(4)明るい性格で経済のムードメーカーになる人
   ---常に前向きの姿勢を示して国民からの信頼感を得られること。

いかがだろうか。