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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2002/11/01(金) NO.302号 

今後の詰めが決定的に重要な金融・産業再生

 30日の夜、「金融再生プログラム」と「改革加速のための総合対応策」が発表された。いわゆる「竹中プラン」と「総合デフレ対策」だ。自民党や与党からは発表前から「こんな過激なものはとんでもない」と言われ、マーケットや海外の投資家からは公表後「こんなに妥協した、中途半端な政策では、日銀と政府に不良債権を塩漬けするだけで、またまた問題先送りだ」と、両極から共に評価は高くない。しかし内容をつぶさに見ると、繰り延べ税金資産の自己資本上の扱いは表向き先送った格好だが、私達がここ数年来一貫して主張して来た一連の政策が、ともあれ形の上ではかなり入ったとも言える。問題は、これからの詰めをきっちり行ない、問題を先送ったり、中途半端な金融・産業再生を決してしないことだ。今回こそ問題の根本解決ができなければ、日本の経済社会がもたないだけでなく、日本への世界からの失望は極に達しよう。
 
 我々が「政策新人類」と呼ばれた98年当時から「ハードランディングかソフトランディングか」という不毛な二元論が延々と続き、今回も「デフレ解消が先か、不良債権処理を急ぎハードランディングをするか」という、全く同じ構図に変わりはない。ひとつはっきりしている事は、飛行機ならば「いずれにしてもランディング(着陸)しないといけない」のであって、飛行機がいつまでも上空で旋回してランディングしなければ、いつか燃料がなくなりクラッシュする事は明らかではないか。要は、いかにしてランディングの衝撃を最小化するか、という事こそが政治と行政の責任なのだ。
 
 バブルを作ってしまったり、その急激な崩壊が起きるような失政はどの国もやらかしているが、そうした失敗を犯した欧米諸国と日本との最大の違いは、問題解決に「3、4年」ではなく「12年」もかかって、まだトンネルの向こうに明りが明確に見えなかった事だ。今回、出口こそまだ見えないものの、漸く明りらしきものが遠くにありそうだ、というところまで来ている?
 
 「竹中流」のやり方は、とても生身の銀行や企業の生殺与奪の権限を持った為政者のやり方ではなかったし、私なら異なるアプローチを取っていただろう。が、それにしても成案に至るまでの銀行や与党リーダーの「竹中案」への反発を見ていると、自らの過去に対する責任への無頓着さと、今回の小泉首相の「政策変更(ご本人は認めていないが!)」に関する歴史的意味合いの認識の欠落を感じざるを得なかった。「繰り延べ税金資産のルールを急に変更するなら、我々は貸し渋ってやる」と言わんばかりの「コーナーに追い込まれた窮鼠」的居直りは頂けない。そもそも不良債権を処理しないが故に貸し渋らざるを得ないのではないか。この根本解決に踏み切らなかった政治も等しく責任を感じなければならない。
 
 もっとも、今後を展望すると心配は多い。例えば「産業再生・雇用対策戦略本部」での産業再編と早期再生に関わる「基本指針」や「産業再生機構」の具体的姿は、財務省と経済産業省のイニシアティブで内容が詰められているらしいが、ダイエーのような中途半端な再建策に裏書きをした上に株価が怪しくなるや、やおら政策投資銀行に出資をさせるような役所や、事実上銀行救済を行なった早期健全化法を作った大蔵省(現財務省)が、今度こそ「きちんとした仕事」をできるかどうかが問われている。今後のアイディアの詰めと個別ケースの実行の厳正さこそが成功への条件だ。そして、問題解決の鍵は、「武家の商法」的な役人の頭の体操ではなく、民間人の経験と知恵、そして政治の決断にある、と言うことをお役人によく理解してもらわねばならない。
 
 もはや失敗は許されない。

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