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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2003/07/08(火) NO.325号 

50余年ぶりの公務員制度改革は抜本的に

 今月初め、内閣官房行政改革推進事務局から、国家公務員制度改革関連法案が自民党行革推進本部の公務員制度改革委員会(野中委員長)に示された。本日、初めて自民党行革本部総会、関連部会合同会議にて議論されたが、「18日閣議決定」に向けて強引に取りまとめよう、というある主要官庁の秘書課が作成したシナリオペーパーが事前に出回るなど、とり運び方からして大いに問題含みだ。

 私はかねてより、日本を変えるには、政策決定過程を変え、真の政治主導の政策作りができるようにすることが不可欠であり、そのためには、公務員制度改革は必須だ、と強く主張してきた。意義ある政策選択肢を提示でき、公正、確実に法執行ができる行政を実現するためには、絶えず最も優秀で、やる気に満ち、国家・国民の将来を考える公務員に霞ヶ関で働いて頂かなければならない。そして、その際の「優秀さ」は若き時の大学での成績や、一回だけの公務員試験の順番ではなく、そのときそのときの問題解決能力であり、同じ「官」の中からでも、「民」からでも、要は最も「有能」な人に問題解決に当たってもらうのがベストだ。そのためには「出入り自由の公務員制度」にしなければならない、と強く考えてきた。

 今回の改革案では「能力等級制」により、採用試験区分や学歴に関係なく能力に応じて人を貼り付ける、といういわゆる「キャリア・システム」の弊害是正を行おうというのだ。このことは前進かもしれない。私が大きな問題だ、としたのは「再就職規制」と「再就職後の行為規制」だ。

 平成13年の12月に「公務員制度改革大綱」が閣議決定されており、大筋はこの中で方向性が出ている。例えば「時々刻々変化する行政課題に迅速・的確に対応しうる能力を常に確保していくことが重要であり、そのためには、・・・公務部内の人的資源を最大限に活用することに加え、外部から多様で質の高い人材を公務に誘致し確保していくことが求められている。」として「民間の有為な人材を弾力的に確保しうるシステムを構築する」と明言している。

 しかし、今回の案では再就職を「人事院の承認制」から「大臣の許可制」とする一方で、「クーリング・オフ期間」は引き続き2年のまま。これでは民間の有為な人材は、「官」から再び「民」に戻るに際し、2年間の事実上の「浪人」を強いられるため、誰も来ないのが実情。いったいどのようにして民間人を確保すると言うのか。この案を作成した官僚たちには元々その気がない、としか思えない。世の天下り批判が強いからこのようなことになるのかもしれないが、本来は「再就職後の行為規制を厳しくし、再就職自体は本人の能力本意で、即刻可能」とすべきだと思う。米国の行為規制は刑法に定められており、「自ら実質的に参画した特定案件については、影響を与える意図を持って連絡、面会をしてはならない」し、上級職員以上は「退職後一年間は、その省庁の職員に、影響を与える意図を持って連絡、面会をしてはならない」と厳しい。かつて橋本元総理も「昨日までSECの職員だった者が、厳しい行為規制の下で今日から証券会社で働くことができるような仕組みも考えるべきだ」と言っておられた。

 しかし、もっとひどいのは「行為規制」だ。初めて「行為規制」を導入する、といっても、営利企業に再就職した者が「当該営利企業に有利な取り扱いをすることを要求し、または依頼することを禁止」するだけで、営利企業の集まりで、「天下り」先として最もポピュラーな業界団体など公益法人や特殊法人に再就職する者には、何の規制も掛からないという。「官」と「業」の癒着の典型であるこうした「天下り」は引き続き自由、というのでは国民は納得できないだろう。昨年、公益法人での給与の公開などを定めて決着済みだ、などというが誰も理解できまい。

 さらに大きな問題は、閣議決定のスケジュール先にありき、という役所の姿勢が明らかな「シナリオ・ペーパー」が出回ったことだ。50余年ぶりの改革案を、多くとも2回の会合で了承させようという内容である。上記のようなさまざまな問題点が残されているにもかかわらず、反論らしい反論もない。「再就職については、既に長い間議論を重ねてきており、今から議論を蒸し返すと、行革本部に対する信頼を損ねかねません」とまで言うなど、まるで「臭い物には蓋」のような扱いである。国民の誰が「天下り問題は決着済み」と思っているというのか。

 国民が、公務員の給料の高さと「天下り」に対して、今一番神経を尖らせていることを軽く見ないほうが良い。現行制度下では「天下り」しない限り、公務員が食べていけないほど労働力の流動性が低いのは事実だが、今回の案では、あまりにも現状肯定的で、国民の納得は得られないと思う。真の改革を前に進めるためには、さらなる議論が必要だ。