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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2020/05/17(日) NO.831号 

新型コロナウィルスの下で繁栄できる国づくり

昨日、何十年振りかで私は中目黒の自宅から一歩も出ず、専らオンライン会議と電話での意見交換に終始した。その間全国では、39県の緊急事態宣言が解除されて初めての週末だったが、早くもそこここで危機意識が希薄化、街への人出が、心配になるほど進んでしまったようだ。一方、世界的なロックダウンや日本での外出自粛などによる世界・日本の経済社会への影響は極めて甚大で、1929年の世界大恐慌を上回るダメージも予想される。しかし、感染危機がさらに長期化すれば、経済や暮らしへの影響はさらに深刻化することは必至。ここは、やはりまずは短期間での感染拡大阻止を最優先課題とし、その上で、国民一人ひとりが「新しい生活様式」の徹底をしつつ経済や暮らしの再開を図っていかねばならない。

その際、主要国が第二波、第三波に備え、共通して力点を置いているのが、PCR検査体制。1日当たりの検査数でみて各国とも高い数値目標を明確に掲げ、「検査を行い、感染者を隔離する」という、感染症への対処の基本を忠実かつ強力に徹底し、国と国民を守る、との本気度が伝わってくる。経済と暮らしを守るためには、何をおいてもまずは検査だ、ということではないか。

例えば、米国トランプ大統領は、15日の記者会見で、世界に類を見ない1日当たり約35万件の検査を既に達成した事を明らかにしているし、ドイツは20万件、フランス、英国は10万件をそれぞれ目標に体制強化を急いでいる。

しかし、日本は相変わらず桁違いの2万件目標しか掲げていない。14日の専門家会議でも検査体制の構築への提言もあるし、安倍総理も国会などで、繰り返し、検査体制強化の決意は伝えている。しかし、PCR検査センター導入後の検査数をみても、多くて8000件超止まりだ。

今回の政府の「基本的対処方針」の中の「サーベイランス・情報収集」に関する記述を見ても、何が何でも早期に感染者を一人でも多く発見し、隔離して感染拡大を阻止する、という気迫が感じられない。先日のテレビ出演の際に、日本も少なくとも10万件の数値目標を掲げるべき、と発言したが、安倍内閣としても、ここは国民生活や経済を守るため、「検査、隔離」の徹底のため、まずは10万件検査体制に向けての目標設定を行ってはどうか。慶応大学の宮田先生とLINEによる調査結果を見れば、全国で14万人近い継続発熱者が推定され、根拠はある。

この程承認された抗原検査や、抗体検査を組み合わせることは重要だが、結局重要なのは、PCR検査であり、唾液を検体として医療者の感染リスクを激減させ、同時に結果判明までの所要時間に関しても、既に60分程度への短縮も可能との試薬も開発されつつあるようだが、できるだけ短縮することが最も重要ではないか。

14日の39県の宣言解除の際、条件付き、となった唯一の県が愛媛県。私の選挙区の病院でのその前日のクラスター発生によるものだが、その新型コロナ感染者の濃厚接触者3人が引き続き暮らす有料老人ホームの責任者から昨日、私に電話で相談があった。その3人に是非PCR検査を受けさせてほしいと保健所に何度かお願いしたが、「症状も出ていないので、検査は必要ない」と断られているが、何とかならないか、との相談だ。厚労省幹部に相談したところ、その幹部は、「まだそのような事を言っていましたか」とあきれ顔だった。

しかし、厚労省が、濃厚接触者はすぐ検査を行うべし、と判断していても末端ではこのような対応である限り、総理が「検査体制を強化します」と国会などで約束するだけでは国民向けに説得力に欠く。国が何度もその意思を明らかにしていながら実現しないのには、それなりの理由がある、と考えるのが常識だろう。その原因を解決しない限り、課題は前に向いて進まない。もちろん、一番大事なのは、政府のやる気だ。

本年1月から始まったパンデミック。厚労大臣を3年間務めた者として、ここまで来る過程で、様々な反省点に気付いた。ひと言で言えば、今回のような、未知の感染症のパンデミックの非常時の国家ガバナンス、対応体制を、国、地方を合わせて抜本的に、ゼロベースから再構築しないといけない、それでなければ新型コロナウィルスの下でも繁栄できる国を作れない、ということだと思う。幸い私は今、自民党行政改革推進本部長を仰せつかっているので、この問題を取り上げる。

当初は、日本版CDCを作るべき、という考えにも魅かれ、多くの識者、政治家にもその考えがあったが、今回、米国での患者数が145万人超、死亡者数も約8万8000人と、世界で断トツに多い事を見れば、米国は失敗した、と言わざるを得ず、単にCDCの真似するだけでは済まない。日本ならではの解決法を考えねばならない。

例えば、日本の保健所制度は、世界が真似をしたいというほど地域での健康維持・増進に貢献をしてきた伝統ある、誇るべき制度との評価を受けて来ていたし、今回も現場の職員は不眠不休で頑張ってくれた。しかし、感染症防護の基本であるPCR検査に関し、内閣の意向通りに現場の体制強化が進まず、指示通りには動かなかったり、そもそも、検査結果の報告も都道府県次第であったりした。加えて、民間検査所のデータは週に一回しか上がって来ない、と様々な問題があった。

自民党行革本部としては、既にスタートしているテレワーク、オンライン時代のデジタル規制改革、に加え、新型コロナ感染症によるこれまでになかった様々な制約を踏まえた強い日本経済を作るために必要な経済構造改革、コロナ対応の随所でこれまた欠如している事が明らかになった「エビデンスに基づく政策立案(EBPM)」の体制強化、それにパンデミック対応体制再構築と合わせ、とりあえず4本柱で打ち合わせを、「三密」にならぬよう、少人数で明日行う予定だ。

その他今週は、NPO法人等公益法人の「持続化給付金」の給付要件問題に決着をつけ、「事業収益」を「経常収益」に算定基準を拡大させないといけない。中小企業庁も漸く議論に応じてきたようだ。また、休眠預金の新型コロナ感染症危機への緊急活用についても、特別枠の金額、要件などに関し、具体的に議論をして中身を決める予定だ。

先週、月曜日から金曜日まで、5日間毎日、日本時間の20時から23時までの約3時間ずつ、世界の主要医学誌のひとつのランセットが企画する Lancet Commission の、当初ノルウェーのオスロで予定されていた第3回目会合が、オンライン会議に替わり、全世界から20人余りのメンバーの参加により行われた。「低中所得国における『ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ』、『健康危機対応』、『健康増進』の三要素間の相乗効果」、が議題だが、過去2回の議論の積み重ねがあるものの、さすがに新型コロナウィルス感染症(COVIT-19)のこのテーマに対する意味合いなどの議論が噴出、日々熱い議論がネットを通じて行われた。オンライン会議が、実際に集合しての議論とあまり変わらない位の内容の濃さが実現可能であることを再認識した。