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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2005/04/08(金) NO.393号 

NGOとの連携強化で外交力アップを(4月8日)

 イラク国民議会は6日、クルド愛国同盟議長のジャラル・タラバニ氏をイラク移行政府の大統領に選んだ。日本の外交筋、マスコミ共に、殆どノーマークの人物が大統領になり、一部新聞報道では、単に「大統領にクルド人」との見出しを掲げていた。イラク国内事情を如何に理解していないかを示すものだ。

 日本広しといえども、外務省を含め、タラバニ氏に最も近い日本人は、実はNGOのピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の大西代表だと私は思う。彼は、90年代央から北イラクのクルド人自治区で、一貫して人道支援を行ってきた。一昨年4月末、私はイラン経由陸路で北イラクに入り、大西代表と合流、翌日にはバクダッドへ。その夜、我々はタラバニ夫妻と会談したが、その際の夫妻の大西氏への応対振りを見て、如何に彼が夫妻に信頼されているか、よく分かった。当然だろう。日本政府が、フセイン政権こそ正統な政権と言ってはばからず、不法入国している格好のPWJには何らの支援をしてこない中で、自力で何年もクルド人への支援を続け、米軍の爆撃下でも出国せずにクルド人自治区で頑張ってくれた大西代表ら、だからだ。

 その年の8月、私とPWJは、タラバニ夫妻一行を日本へ招聘した。福田官房長官、川口外務大臣との面談は実現したが、残念ながら、タラバニ氏に一番会って頂きたかった小泉首相には、外遊直前で時間なし、との外交筋の説明で、お会いできなかった。我々は、イラクの新しい政府の幹部になる可能性が極めて大、と確信していたので、どうしても小泉首相との面識を得て欲しかったが、貴重なチャンスを逸してしまった。やはり、外務省を始め日本政府の認識不足といわざるを得ない。なぜか?それは、日本外交は、往々にしていわゆる「正統政権」幹部中心の人的パイプしか持たないため、その国の奥深い部分を見落としがちだからだ。中東における平和と安定はもちろんの事、クルド地域のキルクーク油田をはじめ、イラクの石油にも大きな関心があるはずの日本政府が、将来の大統領候補を首相に会わせておかない手はなかったのではないか。その1年前にも我々は、米国在住だったタラバニ氏のご子息を含め、数人のクルド人を東京に招聘し、交流をしたが、その際にも、外務省はおっかなびっくりだった。NGOの識見をうまく活かしながら、もっと上手な外交ができるのではないか。

 今日、私が委員長をしている自民党・NGO小委員会で、アフリカで活動している日本のNGOに集まってもらい、活動報告と政策提言をしてもらった。現地NGOとの連携や、国際機関を使った日本のNGOの活用の可能性など、建設的な提言が多く出された。本年7月のグレンイーグルズでのG8サミットの主要議題は「アフリカ」と「気候変動」だし、9月の国連「ミレニアム宣言」に関する首脳級会合もある。アフリカの実態にもっとも詳しいNGOの経験と英知を活かしながら、日本の対アフリカ戦略を組み直すべきだ。