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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2004/07/19(月) NO.355号 

ドイツの司法制度に学ぶ

 昨日は日曜日で役所や裁判所がお休みなので、ベルリンから車で2時間半ほど離れた、陶磁器で有名なマイセンとその近くのドレスデンを訪れる。道中、刈り取り間際の麦畑や鮮やかなひまわり畑、白樺林、そしてそこここにある風力発電の風車がうらやましいほど美しかった。また、すれ違う車の上には自転車やカヌーが。かつての東ドイツであるが、暮らす人々の人生のゆとりは日本の比ではない。自分の生活パターンを変えなければいけない、と思った。エルベ川のほとりのマイセンで、伝統の陶磁器を見る。素晴らしい。

  今日は、朝10時からベルリン州司法省にシューベルト州司法大臣並びに「参審制」「犯罪被害者対策」の責任者を訪ねる。

 まず、参審制に関しては、最近ドイツ内全州の司法大臣が、参審制の廃止ないし一部停止の是非につき議論したが、様々な困難な課題はあるものの、同制度が既に国民に受け入れられていることや、参審制の社会的負担と同制度のもたらす良い点のバランスを考えると、現状のまま継続すべし、との結論に達したとのこと。裁判現場に「素人」がいることの負担はあるが、裁判官とは異なる角度から判断する「参審員」がいることのメリットの方が大きいようだ。

 犯罪被害者対策に関して、例えば犯罪被害者が「公訴参加」し出したのは70年代からだが、累次の改革が行われ、今年も「付帯私訴」などの改革を行う法案が成立したばかりで、徐々にでも着実に改善されてきているとのこと。裁判に犯罪被害者が参加することの負担増はあるが、犯罪被害者の人間としての権利を守ることの価値の方が多い、とのことだった。

 午後、犯罪被害者支援団体である「白い環(Weisser Ring)」のベルリン支所を訪問。1976年に創設されたNGOで、ドイツ全土に18カ所の事務所があり、400人の中心メンバーと2300人のボランティアが活動している。ベルリン支所だけは事務所が警察の建物の中にある。「白い環」は、基本的に寄付金、遺産財産など民間資金で成り立っているが、唯一「科料」の割り当てがあるそうだが、このところ減少傾向のようだ。他にも犯罪被害者支援組織はあるが、30年の歴史のあるこのグループは、最も幅広い活動を続けている。日本でもこのような支援団体が育ち、もっと活躍してほしいものだ。

 明日は夜までにポルトガルに移る予定。