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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2007/09/25(火) NO.444号 

それでも改革を(9月25日)

 今日、福田康夫氏が正式に第91代首相に選ばれた。内閣は変わったが、政府・与党にとって厳しい状況が続いている事に変わりはない。ここは新総理・総裁の下に一致団結をし、国民の声をしっかり受け止めながら必要な政策を着実に実行し、失いかけた国民からの信頼を早期に取り戻さなければならない。「派閥復活」との批判が当たっていない事を立証するには、結果を出すしかない。課題山積の日本の明日を切り拓くべく、総力を上げねばならない。

 自民党が福田新総裁を選んだ大きな理由は、参院選で示された格差問題や地方の疲弊などの問題点に十分対応しながらも、大きく変わりゆく国際社会の中で地方を含めて我が国が生き残るためには、改革を進めないといけない、との考え方を支持したからのはずだ。小泉内閣の官房長官として構造改革を支え、旧来の自民党的「バラマキ型大きな政府」は作らない、との考え方を持ち続けた福田総理の政治姿勢を評価したい。時計の針を逆戻しせず、後ろ向き、内向きにはならない「福田流希望と安心の国づくり」に、期待したい。 

「改革の影」とよく言われる。しかし、その「影」の原因は様々であり、単純化する余り、全ての原因を「小泉・安倍改革」に求めるには無理がある。格差問題一つとっても、日本固有ではなく世界的問題である「グローバリゼーションの影」との側面が重要である一方、通信やサービスなど国内産業構造の変化や高速交通網の発達など、ここ20〜30年間の国内変化に起因するものもある。診断を誤れば、当然治療も誤ることになる。短絡的な「振り子の揺り戻し」的処方箋は、結果としてかえって日本の健康回復を遅らせるだけでなく、長い目で見て致命的な結果をもたらす可能性すらある事を忘れてはならない。原因に関する冷静沈着な分析、判断と根本解決へ向けた決断が必要だ。

改革は今、まさに過渡期にある。しかし、過渡期の不安と短期的な誘惑にかられ、「ばらまき」や「護送船団」といったかつての政治手法へ回帰することは絶対に許されない。改革の「痛み」に耐えてきたこれまでの国民の努力を水泡に帰すようなことがあってはならない。改革を続けるのか、来た道を引き返すのか、いずれ国民の信を問う時を見据え、勇気を持って前に進まなければならない。

参議院での与党過半数大幅割れを受け、日本の政治には新たな「知恵」が必要となるだろう。テロ特措法問題もそうだが、20年度予算、税制改正等予算関連法案の扱いなど、今後法案審議で民主党がどう出てくるか。回避すべきは、与野党が政争に明け暮れ、政策上の結論を出さずに国民生活を置いてきぼりにする事だ。そして、答えを出せない日本が世界から見捨てられ、「日本売り」を浴びせられる事だ。野党の皆さんは国政の一翼を担っているという自覚のもと、責任ある行動を取ってほしい。いたずらに「反対のための反対」や、議論そのものに乗ってこないという無責任な態度は頂けない。我々は正論を堂々と唱え、野党と真摯な議論をし、答えを出すしかない。

  丁度一年間の在任期間中に安倍総理は、後々必ず評価される成果を数々残された。「壊す改革」の小泉時代を受け、自らの国の将来ビジョンを掲げながら、国のかたちを問う「創る改革」に挑戦した。日中、日韓関係の電撃的改善に始まり、教育基本法・教育3法、防衛庁の省昇格法、国民投票法、公務員制度改革法、年金・社保庁解体法等々、国の骨格に関わる多くの重要法案を成立させることができた。同時に、格差問題への対処として成長力底上げ戦略・地域力再生機構、世界をリードした地球温暖化に関する「クールアース50」提言、歴代内閣がなしえなかった法改正を含む道路特定財源改革等々、枚挙に暇がないほど多くの改革にも道筋を付けることができた。しかし、「戦後レジームからの脱却」の本当の意味を思想的に偏狭な解釈に歪曲され、そして年金記録問題や政治とカネ、大臣の失言等の大きなうねりに飲み込まれる中で、これらの実績を国民の心まで十分届けることができなかった。休む間もなく理想を追い求め、ようやく新しい国造りが実行の緒に就いた矢先の無念の退陣。総理の無念の深さは斟酌するに余りある。健康に不安を抱える本日の本会議場の安倍総理を拝見するのが辛かった。一日も早い健康回復と政治への復帰をお祈りしたい。

 歴史の評価を待つまでもなく、とかくかき消されがちな安倍政権の実績につき、説明を尽くし理解を広め、改革の志を守り抜いていくことは、11ヶ月間、官房長官を務めさせてもらった自分の責務である。反省と自戒を込め、今後の日本の進むべき道筋を示したい。参院選で示された国民の声に真摯に応えながら、政府・与党あげて国民からの信頼回復をしっかり図り、日本の明るい未来を切り拓いていかねばならないと思う。