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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2008/01/25(金) NO.456号 

ダボス、世界の問題意識の出会う場(1月25日)

 昨日は、朝7:45から「極端な貧困と気候危機への解決策を束ねる( Combining
solutions to extreme poverty and climate crisis) 」 と題し、アフリカの貧困問題に力を傾注してきたシンガーのボノと、気候変動への警鐘を鳴らした映画「不都合な真実」でノーベル平和賞を受賞したゴア元米副大統領が、それぞれ二人が取り組んできた問題の解決策の出会いを探る。いずれも途上国の開発問題に関わることから、角度が異なっても一緒に政策的な手を打てるのでは、との二人の問題認識が伝わってくる。確かに、気候変動による異常気象などの被害は、最も貧困で弱い途上国の人々にとって特に悲惨な結果をもたらしている。

 何しろ広範な議題についてのセッションが沢山あり、世界中の問題意識が出会い、その解決の道を探る場がダボスだ。プログラムには載っていない関係者だけの集まりもある。昨日の午後、そのひとつである世界の化学産業のトップ企業のCEOが集まり、気候変動問題への対処方法について真剣な議論が行う場があった。気候変動問題に関して私が日本政府の推進役を果たしてきたと聞いている、との理由で招待を受け参加する。BASF、ダウケミカル、デュポン、住友化学、三菱化学、といった有名企業のCEOが勢ぞろい。現状に関する若干の説明に続き、いきなり発言を求められる。私からは、まず、昨年5月に安倍総理が明らかにした日本政府の気候変動問題への提案「クールアース50」の概要を説明、福田首相のダボス演説の概要、さらにサミット議長国として経済界のCEOとの対話も進める方針などを伝える。また、化学産業が自らCO2を排出する一方で、断熱材などの素材を開発することで、CO2排出削減に貢献してもいる、との冒頭報告に関し、今後セクター別に排出限度をどう計算するか、ポスト京都の枠組み作りに重要な示唆を頂いたことなどを述べる。同じく招待を受けた中国全人代、国連の代表からそれぞれ意見開陳。

 どうも、化学産業のトップがこうして一同に集まり、気候変動への化学産業としての対応をまとめて議論するのは初めてのようで、今後もこうした議論を続けよう、との意思統一が目の前でなされた。なるほど、ダボス会議はこうした場の提供という役割も果たしてきたことがよく分かる。 

 昨日は、国連のパン・ギムン事務総長やコカコーラ、ネスレ、ダウケミカルなどのCEOなどによる、「水問題、待ったなし(Time is running out for water) 」とのセッションもあり、日本からは川口順子元環境相・外相が参加。2025年までに、地球の人口の三分の一が水不足に直面する、という。これは必ずしも途上国だけではなく世界の重要問題であることがよく分かった。

 夜、「ジャパン・レセプション」が東京大学、慶応大学などの主催で開催され、大勢の日本人、日本に関心を持っていただいている方々が寿司と酒などを堪能しながら語らう。一橋大学の竹内教授の名司会で、「福田首相に送る提言」を会場から募る。中川秀直元幹事長からは、ガソリン税などの暫定税率分を国際環境税にすべしと提案。一方、民主党・鳩山幹事長は、暫定税率撤廃を唱えるとともに、総理のダボス講演の中で、「1990年基準年」を変えるのはおかしい、などとの批判をする。私からは、福田首相からブッシュ大統領と胡錦涛主席を説得し、それぞれサミットにおいて国別排出総量にコミットさせるよう説得することを提案した。

 今日もいろいろなセッションに参加したが、何と言ってもハイライトは40人程度のハイレベル・オフレコミーティング「気候変動:真にグローバルな対応は可能か?」だった。トニー・ブレアー前英首相、パン・ギムン国連事務総長、リー・シンガポール首相など首相クラスも多く、その他UNDPやアジア開銀など国際機関トップなど多士済々。日本からは、川口順子元環境相・外相、奥田内閣特別顧問・トヨタ相談役、緒方JICAと私の4人。議題は「共通だが差異ある責任」という整理をされてきた先進国、途上国の責任のあり方について、今後どのように考え、行動していけば本当に気候変動に対し実効あるグローバルな対応となるか、などが中心だった。

 続いて、歌手のボノと緒方JICA理事長が第四回TICAD会議に向け何をすべきか議論しよう、と、それぞれが声かけをした車座会議が開かれた(ライブ・レポートの写真参照)。20人弱が円く輪を作り、それぞれこれから5月の会議本番に向け何をすべきか自由に意見交換。ボノのアフリカにかける情熱に心が動く。

 日本から来た経済人らと夕食の後、20時から「アジア統合の課題」とのディナーセッションに参加。ジョージ・ヨーシンガポール外相、エバンズ元豪州外相(現CMG専務理事)、スリン元タイ外相(現ASEAN事務局長)など古くからの友人とも会えた。私のテーブルは、インドネシアの外相、韓国の貿易相がリード役で、なかなか良い議論ができた。

 先程、正確には26日未明、陸路チューリッヒ空港近隣のホテルに着く。福田首相もチューリッヒ滞在中で、明朝ヘリコプターでダボス入りの予定だ。私は明日7時過ぎの便でパリ経由、成田に向かう。寝る時間があまりない。