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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2008/03/05(水) NO.459号 

暫定税率廃止と地球温暖化(3月5日)

 先週の金曜日(29日)に平成20年度予算並びに関連税制法案などが民主党など一部野党が欠席の下で衆議院を通過した。道路特定財源の暫定税率維持を定めた法案も通過したが、民主党などは、与野党間の信頼関係が失われた、と政府・与党を厳しく批判しており、今週の参議院は開店休業が続くといわれている。

 官房長官としてとりまとめに当たった一昨年12月の道路特定財源の一般財源化に関する閣議決定では、ドライバー、自動車メーカー、営業車業界、地方公共団体の長、道路整備を望む地方住民、財政再建派、環境派等々、沢山の道路特定財源の関係者の主張を踏まえた上で、ぎりぎりのバランスをとるのに苦労した。その結果、政府は昭和29年から続いてきた、「道路特定財源は全て道路建設に充てねばならない」という特定財源制度の根本部分を改める大きな改革の一歩を踏み出したのだ。
 
 小泉元総理が先般、一般財源化を前提に修正協議を行うべし、と発言して以来、政府・与党側も修正協議に前向き発言が続いている。私も、4月以降の国民生活に混乱を来すことのないよう、合意へ向けたぎりぎりの努力を続けるべきだと思う。「『危機』という言葉は、漢字ではピンチ(危)とチャンス(機)を表す二つの字から成り立っている」と述べたのはケネディ大統領。まさに現在の危機的状況を改革促進の好機と捉え、野党の指摘を待つことなく与党が率先して国会審議で明らかになった道路予算のムダの排除や、中期計画の根拠やなぜ「10年」なのかなどについて厳しく問い直していくことにより、今回の一般財源化による財政再建メリットを国民の目にもより明確にしていかなければならない。その中で、真の「一般財源化」の意味について大いに議論が起きることはむしろ歓迎すべきであろう。

 但し、ここで大事なことは一般財源化の議論と、暫定税率の引下げの議論を混同してはいけないということだ。世界の目線からすると、ガソリンなど燃料価格の低下に繋がる税率の引下げは、地球温暖化の防止に明らかに逆行する動きと映る。先に東京で開催されたG7蔵相・中央銀行総裁会議のコミュニケでも、財政政策(税制)を使って燃料価格を人為的に引き下げることは、温暖化ガス排出を増加させるので避けるべき、と指摘している。気候変動問題に熱心な英国では、昨年11月、本年4月、そして来年と、3回連続でガソリン税を引き上げる、という。ちなみに英国のリッター当たりのガソリン価格は日本(約150円)より遙かに高い235円前後だ。

 このように、私たちが一昨年の閣議決定の時から、国民生活と同時に、地球温暖化への影響を常に考えてきたのに対し、民主党が遅ればせながら出してきた「対案」を見ると、暫定税率の廃止を唱えながら、地球温暖化への配慮はない。昨年5月に民主党が明らかにした「脱地球温暖化戦略」で暫定税率の廃止を含めた見直しとともに提案されている「地球温暖化対策税」は、導入時の税率は「3000円/tC程度」。これは「ガソリン1リットル当たり1.9 円」に相当する。もし暫定税率を廃止すればガソリン価格は約25円安くなるが、仮に民主党の地球温暖化対策税を導入しても、ガソリン価格はネットで約23円低下する。当然、価格効果で「価格が下がれば需要は増える」ことや、民間の省エネインセンティブが減少することから 、地球温暖化には明らかにマイナスだ。環境に熱心、を標榜する民主党が、温室効果ガスの排出増加に繋がる政策を主張するとは、理解に苦しむ。環境と財政再建に二重のマイナスをもたらす暫定税率の引き下げは決して国益に資する政策ではない。

 明日、明後日(6、7日)と、ロンドンで、GLOBE(地球環境国際議員連盟)が、初めて企業CEOとの対話会議を開催し、日本からは私が参加する。世界の政治家とトップ企業のCEOが地球温暖化について真剣に議論してみようという試みで、6月に予定されているGLOBE・International 東京総会では第2回目のCEO対話が予定されている。福田総理は2月のダボス会議において気候変動問題解決に向けた日本のリーダーシップを高らかに宣言したばかりである。こうした中で、今年のサミット議長国日本が、最重要課題になるであろう地球温暖化に関し、世界の流れに逆行する政策をとるはずがないという点をしっかり世界に説明してきたい。

 ねじれ国会は「答えを出す政治」を生み出す日本型民主主義の足腰を鍛えるチャンス。与野党が徹底議論し、ポジティブな答えを責任を持って出さねばならない。