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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2006/05/09(火) NO.437号 

安保理には常時席を持つべき事を改めて痛感(5月9日)

 10時半からの人権理事会選挙を控え、10時頃に総会会場に入る。既に大勢の人でごった返し、それぞれ票の確認が必要な国の代表の席に行き、「宜しくお願いします」を連発。その他会う人、会う人にそれぞれ関係に応じた挨拶を交わす。机の上には、各立候補国がそれぞれ趣向を凝らしたPRビラを次々に置いていく。我々の選挙と同じような感じだ。中にはチョコレートや靴のミニチュアが付いていたり、日本で言えば公職選挙法違反スレスレのようなものもある。もちろん、そうしたルールは国連にはないようだ。

 投票用紙が配られ、5グループ毎に投票する国名を私が書き、確認の後、回ってくる投票箱に投函。一旦休憩に入り、結果発表は12時45分からとなる。その間にエリアソン総会議長と面談を行う。日本が安保理改革に強いコミットメントをもっている事、時期が来た場合、議長として適切なる裁きをお願いしたい旨伝え、先方も了解。彼は最近、本国スウェーデンの外務大臣も兼務する事になった実力者だ。

 投票の結果、日本は昨晩の票読みをやや上回るまずまずの得票(158票)で47カ国の人権理事国に当選する。一部定数に満たないグループに関しては、決まるまで投票を繰り返す事になっている。日本の任期は2年になる。1年任期、3年任期の国もある。

 13時半から安保理にてダルフール情勢に関する閣僚級公開会合が開催される。開会前に、順次会場に入ってくる外務大臣やその代理などと挨拶。まずは中国の李肇星外相。昨年11月、北京での三極委員会以来半年ぶりだ。就任直後の初外遊であろう英国のベケット外相にも初めて対面。続いて米国ライス国務長官と立ち話。丁度一年前にワシントンの国務省を安倍晋三自民党幹事長代理らと共に訪問して以来だ。ロシア、フランス、デンマークなどの外相とも挨拶。

 発言はまず議長国コンゴ共和国のアダダ外相が行い、続いてアナン事務総長が報告。その後、安保理メンバー15カ国が外相、副大臣、常駐代表の順で5分程度発言。私は10番目。そのほかスーダン、EU議長国のオーストリア、アラブ連盟、オランダ、ナイジェリアも発言。各国とも、5月5日のアブジャ和平合意を受け、本合意に参加をしていない勢力の早期参加と、悪化する現地の人道状況の回復を促すと共に、アフリカ連合が行ってきたPKO活動に加え、このほど概ねの合意ができた国連PKOの実施についても、実現に向けて早期に技術評価ミッションを送る事などを次々に発言する。私からは、特に2月に自らの目で見たスーダン南部での平和定着と同様のプロセスを国際社会が一体となってダルフールでも早期に実行に移すため、日本政府も最善の努力を行う用意がある旨などを表明。

 その後、安保理改革関連の会談を2件。まず安保理での作業方法の改善提案決議(いわゆるS5決議案)を既に提出しているスイス常駐代表、続いて安保理改革作業部会副議長のオランダ常駐代表と、安保理改革の重要性、早期実現の必要性、その難しさなどについて、率直な意見交換。続いて国連PKO局ゲエノ局長とはダルフールPKOの見通しについて話し合うと共に、国連分担率と同じ財政負担(19.5%)を全世界の国連PKOに対して行っている国として、日本の納税者への説明責任を果たす意味からも、PKOの内容等にしっかりコミットしていく姿勢である事、また変わりゆく国内世論を受け、今後これまで以上に非軍事面を中心に積極的にPKOには関与していく気持ちをもっている事などを伝える。

 日本は、本年末まで安保理で非常任理事国の立場があるが、この立場を失うと、あらゆる世界情勢の変化に関する情報が入りにくくなる上、PKOなど財政負担をしながらその議論に参加ができなくなる事象も多い。昨年はG4提案を中心に安保理改革へのうねりがあったが、せっかく溜まった改革へのモメンタムがまだあるうちに、そして小泉首相の政治的な資産(political asset)がある今のうちに、日本の常任理事国入りを含めた安保理改革を成し遂げないといけない。責任ある世界のリーダーとなるには、やはり日本は安保理常任理事国の一角を占めなければならないと思う。