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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/01/12(月) NO.504号 

公務員制度改革に危険信号(1月12日)

 先週8日(木)に、自民党行政改革推進本部・公務員制度改革委員会が開催された。議題は12月の同委員会でいずれも私が問題点指摘をした以下の三点だ。
 
 @審議官以上(指定職)の人事を内閣に一元化する「内閣人事局」を設置する法律の今国会への提出が予定されているが、同時に、指定職だけに限った給与法を提出し、業績に応じて人材がきちんと評価、処遇される、実効ある新たな幹部人事制度とすべきではないかと指摘した点。
 
・この指摘に対して政府側は、幹部職員といえども労働基本権があり、人事院勧告なしでは給与を決められない、との立場だ。しかし、そもそも「幹部」と目される官僚 が、率先して団体交渉権などを振り回すことは容易に想定しがたい。また、「幹部職 員は、民間企業の取締役ではなく、執行役員に相当する」との議論を霞ヶ関はするが、これは政治が決する政策判断次第であり、幹部職員は一般職と異なり、いつでも異動可能な特別職とする事も可能なはずだ。
・安倍総理の決断で、会期延長までして法改正が実現した「能力実績主義人事」に基づき、これまた昨年苦労して成立させた公務員制度改革基本法で具体化する事になった「内閣一元管理人事」を、組合員はともかく、少なくとも幹部に関しては1日も早く実施すべきである。「組織益実現のため」ではなく政治の意志に従って「国益実現のため」に働く霞ヶ関を実現すべく、今国会に指定職以上に限った給与法改正法案を提出すべきだ。

 A安倍内閣は、07年国家公務員法改正により、各省の再就職斡旋を禁止した。ただし、最初の3年間は経過措置として「再就職等監視委員会」の承認があれば各省斡旋を認める事とした。しかし、同委員の国会同意人事で、民主党の反対で委員不在となった事態に対し政府は、12月19日に同委員会に代わり総理が再就職斡旋を承認する、という政令を閣議決定してしまった。そもそも「総理承認」は脱法行為の疑いが濃厚である上、いつの間にか政令に忍び込まれた「わたり」の斡旋まで容認するのは論外ではないかと指摘した点。

・我々が07年に定めた公務員法では、承認権限を総理から監視委員会に「委任する」と規定しており、「委任する事ができる」との規定振りとは異なり、一旦委任してしまった以上、総理は自らの権限行使はできないというのが、国会での内閣法制局答弁だった。これに対し、政府は改正法付則16条の「必要な経過措置」として総理承認ができる、との説明だが、経過措置で法律の規定と異なるルールを設定する事は「経過措置」の範囲を明らかに逸脱している。即座に各省斡旋がなくなる事への不安に駆られた「霞ヶ関帝国」からの「エンパイア・ストライクス・バック」という事か。
・まるで、国会同意人事が通らず空席となった日銀総裁に、経過措置として総理大臣を当てる、というのと似たような話しだ。霞ヶ関も「ねじれ国会」のコストを受け入れなければならない。そもそも、各省の天下り斡旋を行政府の長という、身内のトップたる総理大臣が承認する事を、誰が信用しようか。また、当然総理大臣本人には個別案件をいちいち精査する時間も情報もないため、実務的には幹部官僚に下請けに出さざるを得ない。何のために外部の人材だけで構成される監視委員会を作ったかを考えれば、総理承認の非合理が直ぐ分かる。

 B昨年12月に実施に移された公益法人改革に伴い、「理事のうち主務官庁出身者の割合は三分の一以下」との平成8年閣議決定ルールを、「主務官庁」という概念そのものが改革によりなくなる、との理由で廃止するとの「質問主意書答弁」が12月16日に閣議決定されてしまった。今後は新たな天下り規制ルールを設けず、公益法人が自ら決定することとするのは、旧主務官庁からの天下りを無原則に行わせる事を許す事になるのではないかと指摘した点。

・この天下り規制ルール撤廃の胡散臭さは、実は、公益法人関係者から、「今回のルール変更で、公益法人の多くの職員は天下り役員が急増するのではと心配している」と聞いて最初に気が付いた。そもそも、これまでの「三分の一ルール」も、内実は非常勤理事の数を水増ししてかろうじてクリアしているケースが多く、常勤理事ベースでは、全員が主務官庁出身理事、という公益法人が沢山あるのだ。新しく作られた公益認定基準に「国や自治体の職員が理事の三分の一を超えない事」との規定がある、と政府は弁解するが、これは「現役公務員」に関してのみで、「天下り理事」に関するルールではない。こうした天下りのなし崩し的容認は認める訳にはいかない。自民党行革推進本部内部では、行政委託型公益法人に関してのみ新たなルールを作ったらどうか、との意見があるようだが、それでは全く不十分で、天下りを野放しにしてしまう。
・公益法人制度を変えても、事実上、旧主務官庁との密接な関係が続く事は当然想定される。ならば、「旧主務官庁からの再就職は三分の一以下」とするのはもちろん、常勤ベースだけで見た新たな強化されたルールも作るべきだ。

 ことほど左様に、霞ヶ関の反撃により、公務員制度改革を中途半端なものにとどめ、「わたり」を含めた 各省斡旋による天下りを容認することはできない。ましてや、そうした事態を放置し たままで、消費税の引き上げ時期だけは明示する、という姿勢は与党として許されるはずはない。

 昨晩、石原伸晃公務員制度改革委員長と電話で話し、できるだけ早く石原委員会を再度開催するようお願いしたところ、石原委員長も同じ意向だった。改革の危険信号は早めに消さねばならない。