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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2006/05/02(火) NO.434号 

「近くて近い国」へ向け、日韓は冷静かつ根気強く、知恵を出せ(5月2日)

 日韓関係に熱心な与野党若手国会議員と朝食をとりながら、率直な話し合いを行う。与党ウリ党からはキム・ブギョン議員と韓日議連21世紀委員長も務めるソン・ヨンギル議員の2人。ソン議員は、日本人秘書を抱え、日本語を勉強中で、上手に話していた。一方野党ハンナラ党からは、何度もお会いした事のある同党最高委員のウォン・ヒリョン議員と同党広報本部長で、先日パク・クネ代表の来日時に東京でお会いしたチョン・ビョングク議員の2人。

 いささか緊迫した雰囲気も一時あったが、お互いの考え方や保有する情報の違いが如実に出て、新たな発見も結構あるこうした「バトルトーク」を粘り強く続けていく事が重要である事を双方が再認識した良い会だったと思う。

 続いて、韓日議員連盟のムン・ヒサン会長を国会の議員会館の自室にお邪魔する。訪韓前、森喜朗日韓議員連盟会長からの今般の海洋調査船問題での日韓合意に至るまでのご努力に関する感謝のメッセージを伝達するとともに、日韓関係を深化させるための方策等について幅広く意見交換。

 同じ国会の中で、統一外交通商小委員会のイム・チェジョン委員長を委員長室に訪ね、国際協力委員長を務めるチョン・ウィヨン議員(いずれもウリ党)と共に会談。かなり厳しい内容の会談だったが、最後は同委員長が私が難しい日韓関係の中にも拘わらず訪韓した事を高く評価してくれ、今後対話を続ける事で合意。

 昼食を日本研究者の皆さんと共にする。場所は人気テレビ番組「チャングム(大長今)の誓い」の名前にちなんだ「チャングム」という韓国伝統料理店。世宗研究所日本センター長のチン・チャンス氏、国民大学のイ・ウォンドク教授、東西大学のチャン・ジェグク教授の3人だ。いずれも日本語が流暢。日本通ならではの示唆に富んだアドバイスが多かったが、とりわけ、ノ・ムヒョン大統領に正しい情報と日本の意図や意志が正確に、確実に伝わる方途を考えるべき、との指摘は大事だ。

 午後3時から約2時間にわたり、韓国で仕事をされている日本人経済人との懇談。極めて沢山の事を教えて頂き、勉強になる。「近くて遠い国」との印象を語る方が多かったのが気になる。印象深かったご発言のいくつかを紹介すると以下の通り。

・靖国問題、竹島問題等日韓関係が難しくなってはいるが、経済活動面では殆ど影響はない。批判めいた事を言われる事も極めて少ない。
・韓国経済はかなりの資産バブル。先々が心配。
・労働組合が極めて強く、労働生産性が低い中、高賃金による高コストな経済構造がどこまで維持可能か注目すべき。銀行の初任給は既に日本より高くなっているとの事。また、韓国語使用の強制など隠れたコストもあり、メーカーなどで日本企業の撤退が増加傾向。
・デパート、スーパー等流通業、旅行代理店などでは日本からの参入は極めて難しい国。ローカルの食品売り場で日本製の日本食品も殆ど見られないという。一方、現代自動車は欧米で売れているのに日本国内では売り上げは芳しくないようだ。
・韓国市場の特質を象徴する「3つの失敗」
@「吉野家の失敗」
儲けの源泉の一つであるサイドオーダーの生卵、みそ汁、漬け物のようなものは韓国では「おまけ」的存在で代金請求ができない為、撤退。
A「ほかほか弁当の失敗」
500円程度の温かいお弁当を買って自宅で一人食べる、という発想は全くなく、食事は皆で鍋をつつくなど、家族や仲間と賑やかにするものであるため、お弁当は売れない。
B「ホームセンターの失敗」
「自宅にカナヅチやノコギリはあるか?」と現地職員の誰に聞いても「そんなものはうちにはない。専門の人にやらせるもの」との答えで、韓国には家庭絡みのものを自分で修理したり作ったりする、という発想がないようだ。
・韓国の人々の食べ物の趣向は、「酸っぱい、塩辛い、カレー」は苦手で、甘いものが好きのようで、最近ダンキンドーナツは伸びているという。スターバックスもまずまずのようだが、コーヒーも極めて甘いものが多い、という。
・日本製の味噌が売れない背景を探ったところ、40歳代の女性でも8割は自家製の味噌を食べているという。30歳代だとその割合は約半分、20歳代だと2割になるというので、10年後の韓国はかなり変わっているだろう、との見方。

 いずれにしても、独自の歴史や伝統文化をもつ日韓が、「近くて遠い国」との指摘を受けないよう、名実ともに「近くて近い国」になるよう、両国が冷静かつ根気強く、双方から知恵を出し合う努力を一層しなくてはならない時に来ている。

 夜8時過ぎの最終シャトル便で金浦空港を後にし、10時前に羽田空港に着く。本当に近い国だ。