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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2008/02/01(金) NO.458号 

短く、充実したNY滞在(2月1日)

 昨日朝9:30、ニューヨークJFK空港着。ホテルにチェックインを済ませ、坂本龍一君とNY市内のカフェで肉厚のハンバーガーをほおばりながら久しぶりに昼食をともにする。大半の時間を気候変動・地球温暖化問題について話す。

 実は先日、彼が最近「 More Trees 」という中間法人を立ち上げ、植林、森林保全などによるCO2の吸収・固着を促す運動を始めた。私にも賛同人にならないか、との誘いがあり、賛同者になったところだった。気候変動問題は人類共通かつ待ったなしの課題で、私も「ポスト京都」を含め、できるだけの事をやりたいと思っている事を彼にも常々話していることもあり、もっぱら気候変動問題に話題が集中。温暖化問題に一番後ろ向きと言われてきた米国も、今後間違えなく政策変更をしてくる、との見方で一致した。日本だけが後れを取るリスクが現実のものにならないよう、政治が決断しなければならないな、と昼食後、場所を彼の自宅に移し、引き続き語り合う。

 引き続き、久しぶりに元NY連銀総裁のジェリー・コリガン氏をゴールドマン・サックス証券本社に訪ねる。サブプライム問題が信用危機をもたらした事を踏まえ、米国経済の将来展望に関してやや慎重な見方であった。

 国連に、ミギロ副事務総長を訪ねる。彼女がまだタンザニアの外務大臣を務めていた一昨年2月に、エティオピアのアディスアベバで開催したTICAD平和構築会議の際、バイ会談でお会いして以来だ。法律の博士号を持つ有能な女性政治家だったが、その能力をかわれ、パン事務総長の下で副事務総長を務め、おそらく5月の横浜でのTICADIVに来られる事になろう。TICAD、気候変動問題、安保理改革問題、等について意見交換。

 今朝10時過ぎから、今回の出張の主目的であるジャパン・ソサエティーでの「日米における資本市場での法執行<英国からの教訓>」とのパネル・ディスカッションでパネリストを務める。昨秋10周年を迎えた「日米金融シンポジウム」の米国側世話人であるハーバード・ロースクールのハル・スコット教授の呼びかけで行われるものだ。最近の日米株式市場の株価低迷及び上場企業の減少に対し、ロンドン市場は上場企業も増加傾向であるが、この背景には、日米の規制当局の法執行の問題が存在するのでは、というのがスコット教授の問題意識。

 日本からは、神田、伊藤隆敏両東大教授、証券取引等監視委員会の岡村参事官、野村アセットマネージメントの柴田社長、モルガン・スタンレーのロバート・フェルドマン氏。米国側は、アトキンスSEC委員、SEC法執行局のリンダ・チャトマン・トムセン局長、ウィルマー・カトラー・ピカリング・ヘイル・ドア法律事務所のベッカー氏、リーマンブラザーズ証券ルッソ副会長、そして英国からは、FSAの法執行局のマーガレット・コール局長が参加し、二時間近く、いわゆるソクラテス方式でロースクールの授業のようにパネルディスカッションを行った後、フロアーと約30分質疑応答。その後、立食の昼食会があり、参加者との意見交換が行われた。

 米国はもちろん、日本も最近やや「ルールベース(法執行の細目事項まで法令で明文化する考え)」の監督、法執行を行っており、「プリンシプルベース(法執行の細目事項についてはある程度執行機関の裁量に委ねる考え)」の英国との差異が、市場間競争の結果に表れているのではないか、というのがスコット教授の見方。一方、私からは、「法執行はあくまでも監督行政や、市場としての魅力を構成する全体の一部であり、東京市場の競争力はそれだけで決まるわけではない。また、今後の資本市場行政は、金融庁が昨年末にまとめた「金融・資本市場競争力強化プラン」で示しているように、これまでの歴史的経緯などを踏まえ、「ルールベース」と「プリンシプルベース」との「ハイブリッド型」で行くべきだ」、と主張した。さらに質問に答えるかたちで、米国SECも、英国FSAも、しっかりした民間の自主規制機関の規律の上に行政を行っているのに対し、日本は自主規制機関を含め、証券関係機関には官庁からの天下りが多く、民間部門に行政の延長が入り込んでいるのも同然で、民と官の健全な関係の下で資本市場が運営されているとは依然として言い難い事を指摘した。

 ヒュー・パトリックコロンビア大学教授や同大学のロースクールに留学中の日本からの若者達を含め、テーマがややマニアックな割には実に多彩な参加で、皆さんと昼食を取りながら意見交換ができ、極めて有意義だった。

 雨で渋滞の中、JFK空港に夕方着き、17:55発パリ行きの便に乗る。パリで約3時間の空港滞在の後、先週も乗った同じ成田への便にて帰国予定。木曜日の昼頃からいわゆる「一泊4日」の行程だが、実質時間は3日弱で世界一周したことになる。3日(日)午前中には松山に戻っている予定だ。石手寺の節分会で久しぶりに豆と餅を撒けそうだ。