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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2008/08/11(月) NO.477号 

アジアにおける希望と不安とポピュリズム(8月11日)

 7日昼の成田発直行便でインド・ムンバイへ飛ぶ。外務副大臣時代、インドとのオープンスカイ政策導入、首都圏からの週7便直行便就航を唱え、さらに官房長官の際にはアジア・ゲートウェイ構想に基づき、羽田からインドに直行便を、と主張したが、結局成田からの週7便の直行便になった、思い入れのある定期便に初めて乗る(拙稿「対インド政策 『空のビッグバン』で打開を」<朝日新聞2006・7・29掲載>、私のHP「マスコミ・ファイル」に掲載、参照)。

 6月に開催したGLOBE・東京会合の際に出会ったインドのスレッシュ・プラブー下院議員の「日印関係の一層の進展のために何が可能か議論するためにインドに来ないか」との誘いで行くことを決める。プラブー議員は、かつて工業、森林、化学、電力等数多くの大臣を歴任し、印日議員フォーラムの会長も務める親日派だ。

 8日、プラブー議員と朝食をとりながら議論。続いて造船所、港湾施設からリゾート開発まで、手広く手掛けている民間企業のトップなども交え、インドのインフラ整備に関する一層の日印協力の可能性についてインド側の考えを聞き、意見交換。最近法制定した「特別経済ゾーン(SEZ)」を日本企業だけに設ける可能性を特に強調していた。

 夕方、インドで最も古い商工会議所で、マハトマ・ガンジーも会員であったインド商工会議所にて「日印関係:不安定時代における持続的成長」との演題をいただき、講演、質疑応答。日本企業が中国に32000社も進出している一方インドには555社しか出てきていない理由は何か。どうすれば日系企業はインドに工場など直接投資を増やすのか。また、対インド株式投資を増やすには何が必要か、など質問続出だった。日本への期待は極めて大きい。

 ムンバイのあるマハラシュトラ州のデシュムク首席大臣(知事に相当)を公邸に訪問ののち、プラブー議員が声をかけてくれた30人余りの幅広い方々と夕食会。皆一様に日本との連携によるインドの飛躍に期待しており、夢実現へのエネルギーを強く感じる。

 9日夜、インドネシア・ジャカルタ空港に到着。空港から3車線の高速道路を約一時間走ってボゴールの閑静なリゾートホテルに夜中12時前に着く。高速道路も少なく、市内の道は渋滞と鳴りっぱなしのクラクションのインドとの間で、経済発展段階の大きなギャップを実感。一人当たりGDP1925ドルのインドネシアと978ドルのインドの差だ。ちなみに、中国は2461ドル。ここまで行くと、オリンピック開催も可能になる、ということか。

 10日朝、日本との2時間の時差があるため、ホテルの自室で朝8時15分から地元南海放送「れっつごー永田町」に電話で生出演。その後、林芳正参議院議員(現防衛相)らと始め、第8回目開催を迎えるアジア・ステーツマンズ・フォーラムがホテル会議室にて開催される。今回はインドネシア議員に民間経済人、研究者なども加わり、価格高騰するエネルギー・食料問題、教育・人材育成、経済連携・統合、政治情勢など、丸一日かけて幅広く議論を行う。私以外に日本からの国会議員は民主党の浅尾参議院議員が参加。グローバリゼーションがもたらすマイナス効果を中心に、インドネシアをはじめアセアン諸国が日本同様呻吟している点は、全く共通であることが確認される。  

 最後の政治情勢のセッションには、スリンASEAN事務局長(元タイ外相)も加わる。スリン氏と私は旧知の間柄。かつてオーストラリアのクーラム・フォーラムで毎年会っていたし、このフォーラムもチャーターメンバーとして、共に企画運営を行ってきた仲だ。インドネシアの政治学者から、インドネシアのユドヨノ政権が物価高騰などからポピュリズム政策をとるしか次期大統領選での勝利はないのでは、との分析があった後、その学者のタイの政治情勢に関する質問に答える形でスリン氏がタイの政治情勢を静かに、しかし重たく語る。タクシン政権のポピュリズム政策がいかにタイに国家的混乱をもたらし、社会経済の発展を妨げ、精神的にも国民を割る結果となっているという。祖国の将来を憂うる発言は、心にずしりと響いた。

 日本でも野党からは財源の裏付けのないポピュリズム政策ばかりが唱えられ続けているが、緊急対策を打つにしても、足の長い政策を打つにしても、政治が遠い日本の将来を見据えることを怠れば、国家が危うくなることを肝に銘ずべきだ。

 同じ夜、夜行便に飛び乗り、今朝成田着、さらに松山まで戻る。