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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2008/08/06(水) NO.476号 

大根畑とブロードバンド空白地域(8月6日)

 3日の日曜日早朝、松山市から国道33号線を高知方面に向かう。三坂峠を越え、40分ほど走った久万高原町上畑野川に、友人のご両親が耕作されている大根畑を訪ねるためだ。ここは中選挙区時代の私の選挙区だったところ。現地では大根作りを学ぶとともに、その地域の農業者と懇談、勉強する機会もその友人が作ってくれる予定だ。私の若手支援グループの仲間も二人ほど一緒に参加する。

 友人のご両親は、昭和10年代中ごろ開墾されたご自分の農地で約40年前から大根作りを始められ、現在3町歩ほどの大根畑で、2月から11月くらいまで、ほぼ毎日2000本の大根を出荷されている。かつては自ら高知に運び、ピーク時には毎日約5000本も出荷していたそうだ。しかし、熊本などが中心だった大根耕作も、温暖化とともに北海道、東北でも盛んになり、とりわけ瀬戸大橋ができてからは北海道等からトラック便でどんどん四国に入荷し、値段もかつて一本100円くらいしたものが、今や30〜50円にまで低下している、という。そうなると、いかに新鮮でおいしい大根を消費者に届けるかが価格維持の勝負で、最近は市場を通さず、スーパーに直に届けるルートを開発しているようだ。市場を通すと出荷した翌々日にしか店頭に並ばないが、直であれば出荷4時間後には店頭に並ぶ、という。大根も元気が良ければ値も良い、というわけだ。

 大根畑に入ってみる。大根は年に2回収穫できるそうで、時間差で種を植え、順繰りに出荷している。地表の温度を下げるためのシルバー色のビニールシートに直径7〜8センチの穴が開いており、そこから芽が出ている。よく見ると、必ず芽は二つ。種が1粒だけだとひ弱な大根にしか育たないそうで、必ず2粒植えるそうだ。やはり大根たちも競争で切磋琢磨して初めて元気な大根になるという。人間だけでなく、植物にも競争があるのだ。おもしろいことを知った。出荷間際の大根を皆で一緒に抜いてみる。立派な大根で、重い。葉っぱにはところどころ小さな棘があることも初めて知った。普通店頭で私たちが買う、少し元気がなくなっている大根の葉っぱでは棘は分かりづらいのかもしれない。
 
 場所を近くの観光リンゴ園に移し、近隣農業者と懇談する。開口一番、脱サラ10年目のトマト耕作をやっている若手が「何で内閣改造を今やらないといけないのか聞いてきて、と奥様に言われて来た」との質問に言葉が詰まる。しかし、何といっても、燃料費などの高騰が観光リンゴ園への客足を遠のけるのではないか、採算悪化をもたらすだろうから政府は何とかしてほしい、と切実な要望が突きつけられた。食料自給率維持に関しても強い訴えがあった。私からは、「守りの農業」ではなく、従来の枠にとどまらない担い手の拡大、輸出などを含め「攻めの農業」に転換し、農業の未来を開き、地域活性化を図るべきであることを強調した。

 一方、久万高原町のうち旧久万町は林業が中心ながら、ラグビー練習場やキャンプ地、ゴルフ場、天文台など、松山に極めて近い高原の町として故河野町長以来まちづくりに熱心なところだが、よく聞けば高齢化とともに周辺地域で耕作放棄地が増えつつあり、あと何年かすれば町の中心部以外は高齢者ばかりの本格的な限界集落として、住めないところになってしまうのではないか、との懸念が示される。松山から一時間以内、気候はさわやかな高原であることから、IT関連企業や製造業なども進出可能ではないか、そのためにも「ネット環境」を早急に整備しなければならない、との声が上がる。ブロードバンドが来ていないというのだ。

 早速上京後の今日、経済産業省と総務省から説明を受け、ブロードバンド空白地域での新規設置には、@市町村が「公設民営」により光ファイバーを敷設するのに対し国が交付金(三分の一補助)を出すか、AケーブルTV局などによる無線サービス、しかないという。ケーブルTVは、松山市内の一部でしか営業しておらず隣町の山の上では全くダメだ。

 そこで、松山にある総務省四国総合通信局に「ブロードバンド空白地域は県内にどれだけあるのか?」「久万高原町の役場近くには光ファイバーが来ているようだが、そこから上畑野川まで延長する工事を町がやるとしたら、どれだけのコストがかかるのか?」の2点を問い合わせたところ、「ブロードバンド空白地帯は、県内はもとより、全国的にどのような状況か把握していない」、「光ファイバー延長敷設のコスト試算は、これからやるので一週間ほど時間がほしい」と言われ、がっくりした。

 ブロードバンド空白地域解消のための交付金は、全国ベースでもたった総額50億円程度しか用意しておらず、それも一世代前のADSLを前提に試算した予算らしい。おまけに要求があって初めて検討する受け身の態勢。「手上げ方式(希望者にのみ対応する方式)」なら我々が危うく阻止した「社保庁の紙データ年金記録の確認」と同じだ。そして最も驚いたのは、総務省も経済産業省も、「ユビキタスネット社会」づくりを標榜し、日本のICT化を推進して来たはずなのに、そもそも全国のブロードバンド空白地帯がどこにあるのかも知らない、という。この分野に私は余り深く関与してこなかったが、この国の隅々までをICTを駆使してどのような国にするか、という政治の強い意志が全く感じられない行政の対応だ。ここは政治が急ぎ動かねばならない、と痛感する。

 久方ぶりに景気対策を導入する、という。政府や党執行部がどのような対策を打つ方針かは分らないが、企業にしても、農林水産業にしても、地域にしても、足腰を強くするのに資する未来投資が必要なのであって、単なる一時の痛み止めのためのバラマキなら、将来にツケを回すだけで、止めたほうがよい。特定の地域や中山間地の活性化のためには、その地域による自主的かつ実現性のある再生計画によって裏打ちされた政策で、ICT立国など国づくりの方向性とも一致し、なおかつ中長期的に意味がある活性化策であることが重要だ。その場合なら、国は大いに応援すべきだ。そのためのインフラ整備に関しては、国は「待ちの姿勢」ではなく、能動的、積極的に支援すべきだろう。上畑野川のブロードバンド空白状態解消も、地元が中心となってひと工夫してまちづくりの絵をしっかり描き、国も積極的関与の上、応援して実行すべきだ。