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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/01/20(火) NO.505号 

国民の暮らし・経済にとっての優先順位こそ重要(1月20日)

 今日、「中期プログラム」に関し、初めて自民党内の「ヒラバ」の議論が政調全体会合で、約2時間半をかけて行われた。実体経済や国民の暮らしの想像を絶する急速な悪化を地元などで肌で感じている政治家として、こうして3年後以降の消費税増税の議論のために費やす時間とエネルギーがあるならば、今日、一体どのような追加経済対策を直ちに打って国民の暮らしや日本経済を守るかを真剣に議論すべきだと思う。夜、経済・金融の現状に精通している民間の人達と意見交換したが、案の定、日本経済は危機的状態で、この企業がここまで来ているのか、という話しばかりで、危機感はつのるばかりだ。

 そもそも税制改革に関して我々自民党は、責任ある与党として昨年暮れの「平成21年度税制改正大綱」において、社会保障改革や格差是正、成長力強化など、日本の抱えている問題解決のため、「消費税を含む税制抜本改革を経済状況の好転後に速やかに実施し、2010年代半ばまでに持続可能な財政構造を確立する」との、期限を切った決意と覚悟を既に明確にしている。

 さすれば、今、政治がやるべき事は、そうした税制改革スケジュールが遅れる事のないようにするためにも、悪化の一途を辿る未曾有の経済危機に対応し、国民の暮らしを守り切る、という政治の最も基本的責任を果たす事に全エネルギーを投入する事ではないだろうか。これだけの大恐慌ならば、2011年に増税を実施する可能性は限りなくゼロに近いだろう。にも拘わらず来年度税制改革に全く関係のない増税計画に関して税制関連法案の附則に書くかどうかで、延々時間と労力を費やしているわが党の姿が国民の目にどう映るだろうか。

 今日、大統領に就任するオバマ氏は、70兆円を超える経済対策を2月初までに決め、直ちに実行に移す。その中には約25兆円の減税が含まれている。世界では各国とも「金融の大幅緩和、財政出動、そして減税」が実行に移されつつあり、世界広しといえども、増税にこれだけの時間とエネルギーを費やしている国は日本だけだろう。

 総理は「世界で一番先に不況から脱する国になる」との決意と伺っているが、その実現のためには、二次補正予算と21年度予算よりも格段に大規模な財政出動が必要だ。我々「速やか議連」では、20年度、21年度合計で少なくともGDP比5%の需給ギャップがあるため、当面とりあえず「10兆円規模の特別予算」を21年度予算と同時に用意し、日本経済社会の将来発展の基盤整備を前倒し、先取り実行すべき、との提案を先週行った(http://www.sumiyakakai.jp/ )。親しいエコノミストや我々の率直な見通しとしては、需給ギャップは2年度合計でGDP比8〜9%にも上るのではないかと危惧している。少なくとも、どの世論調査を見ても、8割方の国民が現在の景気対策では不十分だと思い、全く安心できていない。政治は国民に安心して頂くことが大事だ。

 一方、国民への負担増をお願いする前提として、「税調大綱」にも「中期プログラム」にも「不断の行政改革の推進と無駄排除の徹底」が触れられている。この点に関し、今日の会合の最後にある税調幹部から、行革や天下り規制は際限がないので、増税をしない単なる言い訳になるかのような指摘があった。行革が終わらないと増税がダメだ、というのは確かに極端な議論であろう。しかし、国民から見ると今の政府は行革推進どころか、むしろ逆方向に動いているように見えていないか。ワタリ斡旋を含む天下りを総理自らが承認する政令や、公益法人への天下り規制を撤廃する質問趣意書に対する答弁書の昨年末の閣議決定はその最たる例として国民は注視している。この政令は、内容自体が法律およびその趣旨にも反する。また、公務員制度改革においても内閣人事局設置法は出てきても、給与を能力実績主義に基づいて柔軟に決められる給与法改正は今国会に出さず、問題先送りをしようとしているのではないかと見られている。こういう問題点を無くし、「ああ、政府も本気で行革や公務員制度改革に切り込んでいるんだ」との国民の納得を得る事が大事だ、という事を指摘続けなければならない。

 更に、増税に備えては、その負担に耐えられるだけの経済力を付けるための「成長戦略」が必要だ。しかし、先週やはり政調全体会合で消費増税との関連で議論し、最終的に閣議決定された「経済財政の中長期方針と10年展望」の中ではその戦略を「今年春を目途に策定する」、とされており、具体策は何ら示されていない。それどころか、「10年展望」の参考試算を見ると、潜在成長力は伸びるどころか、先行き低下するシナリオが基本である上、引き続き外需依存シナリオで、「内需主導経済への転換」は全くのお題目、となっている。それこそ、麻生総理が言う「底力」を発揮するシナリオになっていない。

 国民の担税力は低下するが、増税スケジュールだけは決める、という形になってしまっている。安倍内閣では、少子高齢化、人口減少下でも持続可能な社会保障制度を構築するために、経済全体の生産性の引き上げを図り、中小企業の底上げも図る、という基本ラインを明確にし、「生産性向上プログラム」も策定していたのは議論の前提がだいぶ異なる。

 ことほど左様に、足下の経済情勢が急速に悪化し、経済対策が不十分との認識を持つ国民の不安が日々募る中で、納税者の視点に立った「目に見える行革、天下り根絶、国会議員定数削減をはじめ、政治の痛みの率先垂範、などの具体的プログラム」も、「暮らし、経済の具体的成長戦略」も明確に示されない中で、増税スケジュールだけが明確になるという現状に、国民が強い違和感を持っている事をひしひしと感じる。そしてこれが政府・与党に対する不信感、反発となっているのではないだろうか。

 政争や政治の面子のための優先順位ではなく、国民の暮らしや経済にとっての優先順位に従って政策決定を行う事こそが重要だ。