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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2017/12/17(日) NO.811号 

特別養子縁組により子ども達にパーマネンシー保障を

 今年は、民法改正により特別養子縁組制度が導入されてから30年となります。本日、その節目を記念して認定NPO法人CAPNA主催、日本財団協力により「特別養子縁組制定30周年の集い」が開催されました。二度にわたり児童福祉法を抜本改正した当時の厚生労働大臣としての思いをお話し頂きたい、との講演依頼を頂いていましたが丁度同時刻に地元松山で愛媛県医師会での講演をお引き受けしていたため、以下の祝辞をお送りしました。ご笑覧頂ければ幸いです。
 
「お祝いメッセージ」
 
認定NPO法人CAPNA主催によります「特別養子縁組制定30周年の集い」のご盛会を心よりお祝い申し上げます。
 
1987年の民法改正により特別養子縁組制度が導入されて以来この30年間、多くの子ども達が、新しい親子の絆と温もりのある家族関係の下で、社会に巣立っていかれました。
 
昨年5月、児童福祉法が国会において全会一致で抜本改正され、子どもの位置づけや社会的養育に関する考え方の、戦後初めての大きなパラダイムシフトが行われました。そこにおいて、我が国の法律として、初めて「子どもの権利」が明定され、同時に子どもの「家庭養育優先原則」も明確に定められました。
 
改正児童福祉法において、子どもは、まずは生みの親の下で養育されるべきであり、仮にそれが叶わない場合には、「家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育される」べき、とされました。すなわち、特別養子縁組や里親です。そして、それも難しい場合に限って、小規模なグループホームのような「良好な家庭的な環境」である施設において養育されることがありうべし、との優先順位が明確にされたのです。このことは、大規模な施設での子供たちの代替養育は今後考えらず、子どもは家庭で養育されるのが大原則、との考えが明らかにされたこととなります。

既にドイツでは、就学前は原則として施設に入れない、との対応が定着しており、英国では同じ方針が中学校進学前まで適応されている、と聞いています。
 
この考え方によって、平成23年の「社会的養護の課題と将来像」に示された考え方とは明確に決別をし、代替的な養育であっても、子どもの愛着形成や人格形成の上から、パーマネンシー保障が何よりも大切であり、その観点から、特別養子縁組が最も有力な選択肢である、ということが明確にされたのです。同時に、改正法では児童相談所の正規の業務として特別養子縁組が位置づけられました。さらに、民間による養子縁組あっせん法が昨年12月に成立し、児童相談所と民間団体との連携の下で、特別養子縁組が推進されることともなりました。
 
加えて、本年8月2日には、「新しい社会的養育ビジョン」が厚生労働省において取りまとめられました。これは、昨年の抜本改正に続き、本年も在宅養育における司法関与強化の新たな仕組みの導入のための改正が全会一致で行われた、改正児童福祉法の高い理念を実行に移すための子ども家庭支援の全体像と、その実現に向けた青写真を示したものです。
 
そこにおいて、特別養子縁組については、現状年間約500件であるのを、おおむね5年以内に1000件にまで倍増する、との数値目標が示されました。この目標達成の実現のためには、現在の制度の様々な制約を取り除く必要があります。目下、法務省において、厚労省の問題提起を受け、年齢要件の引き上げ、児童相談所長による申し立て、実親による同意の撤回への制限、などに関し、法改正に向けての議論を深めてもらっています。
 
いずれにしても、子どもが特定の大人との安定的な固い絆と温かい家庭の中で健全に成長していくために、パーマネンシー保障としての特別養子縁組は、今後一層進められていくべきと思います。
 
本制度の担い手などとして、子ども達の未来のために常にご尽力頂いています本日お集りの皆様におかれましては、「新しい社会的養育ビジョン」で示された特別養子縁組や里親による養育の数値目標の達成や、平成30年度内に行われる「都道府県推進計画」の全面見直し、さらには児童相談所の拡大強化、市町村での健全養育支援体制の整備、フォスタリング機能強化、施設の専門高機能化、をはじめとした諸課題解決に向け、今後一層のご指導とご協力を賜れますよう、伏してお願い申し上げます。

平成29年12月17日
 
                    前厚生労働大臣
                    衆議院議員 塩崎恭久