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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/06/23(水) NO.599号 

官僚主導に逆戻りの菅政権(6月23日)

 菅内閣が発足して以来、民主党政権は表だって「政と官」との大胆な関係修復に走っている。あの長妻厚労大臣ですら、省内幹部との酒席を設けた、と報道されている。しかし、この方向性は既に鳩山内閣時代から始まっており、マニフェストで国民に約束した政治主導や天下り根絶など、公務員制度改革のお題目は、実は選挙目的にしか過ぎず、民主党の官僚依存、組合依存など、その体質そのものが大問題であることが明らかになりつつあった。

 その一つが公務員制度改革関連法案の審議途中に総務省から示された国家公務員の「退職管理基本方針」だ。その驚くべき改革逆行方針が、昨日、正式に閣議決定された。もはや、民主党政権は政治主導を捨て、官僚の言いなりになる、としか言いようがない。ましてや「総人件費2割カット」などできようはずもない。菅総理は、突然思いついたように消費税増税を言い出したが、「身分保障」の美名の下に仕事もさしてない官僚を高給で雇用し続けるなら、消費税増税や財政健全化を語る資格はない。

 5月8日の「独り言」でもお伝えした「退職管理基本方針」では、「天下り根絶」を表向けは実現したように見せかけながら、高齢公務員を税金で雇い続けるためのポスト確保のため、以下のような内容を決めている。

 @現在課長級以下に限られている専門スタッフ職を幹部にも広げ、「高給窓際ポスト」を作る、A天下り、と批判されないよう、現役のまま独立行政法人に出向させ、その際は昨年9月に義務化されたはずの「役員の公募」の対象外とする、B「官民人事交流」と称し、天下り批判を回避するため、現役のまま公益法人等民間にもどんどん出向させる、さらに、C退職手当を優遇する「希望退職制度」を導入するまでの間、民主党が野党時代には議員立法まで提出して禁止するとしていた「早期勧奨退職」を、「組織活力維持等のため」との名目で存続させる、という。

 しかも、かつて民主党が「天下りバンク」と批判しながら鳩山内閣提出法案では存続することを決めている「民間人材登用・再就職適正化センター」(現行の「官民人材交流センター」に相当)での再就職斡旋の対象に、分限処分ケースに加え、早期勧奨退職ケースを加える、ということも既に委員会での政府答弁で明らかになっている。彼らが強烈に批判していた政府による一元的天下り斡旋を、政権を取れば自ら行う、というわけだ。さらに、現役出向の際には、出向期間を退職手当算出の際の在職期間の通算対象にするという。また、自民党が提案していた「天下り斡旋に対する刑事罰」を導入せず、「早期退職勧奨」を継続するというのだから、裏でこっそり斡旋を行う「裏下り」もますます広まっていくことになるだろう。いずれにしても、公務員を優遇するむちゃくちゃな方針だ。現役出向制度は7月の定期異動に間に合わせようとしていることがありありだ。しかも国会で追求されないよう、このタイミングに閣議決定する、というのはかなり狡猾だ。

 今、霞ヶ関の若手官僚の間では、既に決定されてしまった新規採用4割カットに加え、今回の高齢職員の厚遇策により、彼らの下積み期間が伸び続け、やりたい仕事もできずに昇進がどんどん遅れるのではないか、との悲鳴が渦巻いている、と聞いている。これではますます優秀な人材が公務員にならなくなってしまう。我々が目指すべきは、やる気に満ちた、優秀な、若い人材を、官民を問わず積極的に採用し、真に国民のために頑張る活力ある霞ヶ関を作ることだ。民主党政権は全く逆方向に向かっている。