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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/06/08(月) NO.529号 

「低炭素社会づくり推進基本法」の成立を目指す(6月8日)

 先週5日(金)の朝、自民党地球温暖化対策本部役員会を開催し、「低炭素社会づくり推進基本法」の骨格について概ね了承を得、委員長一任を頂いた。多くの抵抗があったが、種々意見は取り入れながらも基本線は維持し、結果として良い法案になったと思う。今週中に温対本部・基本法PT合同会議に最終的なお諮りをし、まとめる予定だ。

 私が副委員長を務める自民党温対本部は、低炭素社会づくりに向け、昨年6月に「中間報告」をまとめ、太陽光発電への補助金復活、固定買い取り制度導入など、すでにここにきて補正予算や新規立法によって実現しつつある政策や、「カーボン・オフセット選挙」を含め、多くの提案を行った。

 これらの提案の中心をなすひとつが、私が提案した「低炭素社会形成推進基本法」の議員提案だ。民主党は昨年も本年も、「地球温暖化対策基本法」を国会提出しているが、実現性などを度外視した目標設定をするなど、非現実的であり、内容的にもいささか薄く、狭いものだ。我々の提案している議員立法は、「炭素は最早タダではなく、コストであり、リスクでもある」との新しい基本認識を明確にしつつ、国民一人一人の生活様式、まちづくりから始まり、低炭素社会づくりに当たって取り組むべき幅広い政策課題に関する基本哲学を定める。と同時に、本気度が問われるいくつかの重要課題については、方向性と具体性をある程度持たせ、新しい社会づくりへの推進法的役割を担う法案とする内容だ。

 昨年夏から基本法プロジェクトチームを党内に立ち上げ、主査として立法作業に汗をながしてきた。途中、選挙モードのなって一旦作業がスローダウンしたこともあったが、再び活発化し、合計8回の会合を通じて問題点整理とたたき台作成までこぎつけた。そして、今から一ヶ月あまり前に、総理から与党プロジェクトへの格上げ指示があり、自民党内での法案骨格に関するコンセンサスづくりが始まった。

 経済界、関連省庁、そして関係議員からの抵抗は想像以上だった。「エネルギー効率は世界一だから、余計なことは不要だ」と言わんばかりの抵抗が続いた。「排出に関する中長期目標は全て削除すべき」、「中期目標に関しては政府の手足を縛ることになるので削除。長期目標も他の主要排出国が遵守することが『前提』であり、守らないなら日本も守ることはない」といった大胆な指摘すらあった。我々は中長期目標の具体的数字を法律に書き込む考えではなく、立法府が政府に目標設定を法律で義務づける事が大事なのだ。

 また、「経済と環境の両立」を法律目的に書き込むべし、との指摘があったが、この法律は「低炭素社会を作る」ことが目的であり、「両立の実現」が目的ではない。もちろん、「クールアース50」において安倍総理がポスト京都議定書に関する「安倍三原則」において明らかにしたように、日本の環境技術とそのイノベーションをフル活用し、日本と世界の経済成長と地球環境保護を同時に図ることは当然だ。また、適切な排出量削減目標設定や正しい規制は、未来投資を通じて経済の競争力を向上させ、将来の成長を確保することにも繋がりうる。

 また、「これから10年間の『特別行動期間』に重点的に実行すべき課題は具体的内容まで書く必要はなく、項目だけでよい」といった骨抜き論も多かった。果ては、「基本法らしい基本法で十分だ」とのむきだしの本音まで。これでは、誰かが言っていたようにこの議員立法は骨と皮だけの「骨皮筋右衛門」になってしまう。さらに、「省エネ基準で十分で、新たな温暖化ガスの排出量基準導入は不要」とし、新たな規制権限を別の役所には持たせない、という役所の縄張り争いを代弁するかの指摘もあった。「具体的政策は閣議決定に委ねれば良く、法律に書き込むことはない」と言って立法府の役割を放棄し、行政府の裁量に任せてしまう、という、政治家としての基本に関わる発言すら最後には出る始末であった。

 政治家は、国家・国民と地球・人類の未来を考え、絶えず志は高く持ち続けねばならない。延長国会の中で、この基本法が、民主党の議員立法との関係もあり、どのような扱いになるのかはいまだ不透明だ。しかし、我々の法案ではカーボンオフセットや温暖化ガス排出量の「見える化」、石炭火力における排出抑制、グリーンIT、まちづくりなどでの低炭素化、等々、民主党案では全く触れられていない重要施策が多く提案されている。地球温暖化という、地球規模での待ったなしの重要課題であるだけに、政局と関係なく与野党協議を通じて法案一本化を図り、粘り強く成立を目指していきたい。