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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/07/16(金) NO.604号 

政治主導を捨て、司令塔なき政権へ(7月16日)

 今朝の新聞をみて、驚いた。菅政権は、民主党の金看板であった「政治主導」を捨て、いよいよ司令塔なき政権となるようだ。そして、日本を一気に橋本行革前の、各省縦割りの官僚主導国家に逆戻りさせるようだ。これでは、日本経済の低迷に拍車をかけ、国民生活の先行き混乱を招くこと必至、と思う。

 昨年の総選挙マニフェストにおいて、民主党は、「国家戦略局を設置し、新時代の国家ビジョンを作り、政治主導で予算の骨格を策定する」としていた。政権交代後、閣議決定で国家戦略室がとりあえず設けられた。しかし今回その役割から府省間の政策調整を外し、単なる首相のブレーン機能だけにする、という。すなわち各省にまたがる政策には関与しない、というのだ。国の形を作るのに最も重要な予算の編成調整は、官房長官、財務大臣、民主党政調会長の三人に任され、国家戦略相は外される。政治主導から、事実上の財務省主導予算編成となる、ということだろう。今回の参院選の結果、政治主導確立法案の成立が困難になったとはいえ、この結論はないだろう。

 そもそも民主党政権は、「構造改革の象徴」としての経済財政諮問会議を廃止し、「政治主導の象徴」として国家戦略局を設置することにしていた。橋本行革で諮問会議を設置した最大の目的の一つが、予算編成の主導権を財務省から内閣に取り戻すことだった。まさに政治主導だ。しかも、広範な経済政策についても、諮問会議では常時オープンに議論し、年に一回は主要政策の方向性を「骨太の方針」としてとりまとめ、さらに「予算方針の基本方針」も定めてきた。議事要旨も直ちに公表され、透明性は高かった。

 民主党政権になり、諮問会議は開催されなかった。これにより、経済政策を常時議論する場はなくなり、経済政策全体の司令塔が不在となって久しい。かろうじて、「新成長戦略」を国家戦略室でとりまとめてはいたものの、それとて議論の過程は全く見えない。菅総理がにわかに大事だ、といい始めた財政再建にしても、社会保障改革にしても、またグローバル競争と世界最速の少子高齢化に打ち勝つためにも、経済再生、経済・産業構造の大転換が喫緊の最重要課題だ。だが、政権からも、参院選中の民主党首脳の演説でもそのようなメッセージはまったく伝わってきていない。霞ヶ関の経済官僚に聞いても、政務三役にはそのような問題意識をほとんど持ってもらえていない、と嘆き節しか聞こえてこない。

 いっそのこと、まだ法的に生きている経済財政諮問会議を復活させ、本当に「強い経済」の実現に向けて政治主導の、透明性の高い議論を始めてはどうか。呼んでくれるなら、その場で我々自民党の成長戦略について説明、議論しても良い。