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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/05/25(月) NO.525号 

政治からの強いメッセージを送れ(5月25日)

 このところ、公務員制度改革の足踏み状態、地球温暖化問題への消極姿勢など、自民党内の使命感、緊張感の欠如振りが非常に気になる。小沢代表の秘書逮捕により内閣支持率などが若干回復していたことがその原因だったかもしれないが、各種世論調査結果の通り、暮らしや日本の現状への国民の懸念は引き続き深刻だし、自民党への厳しい見方もすっかり元に戻っている。このまま民意を読もうとせずに慢心を続けて総選挙を迎えれば、極めて厳しい結果を迎えることになってしまう。今こそ自民党が変われるか否かのラストチャンスだ。

 例えば、先週22日(金)に総務省が提出した資料によれば、公益法人、独立行政法人などの幹部に、同一省庁の出身者が5代以上続けて「天下り」、ないし「わたり」をしたケースが、338団体、422ポストあり、対象幹部の範囲を広げた再調査といえども、3月調査時の、95団体、104ポストから、なんと約4倍増だ。

 公益法人への天下りに関して政府は、昨年12月に質問趣意書への答弁書の形で、それまでの「3分の1ルール」(主務官庁からの天下りは、役員の3分の1以内にとどめる)を廃止し、今後新たなルールを作らない、との閣議決定をしてしまった。これを受け、私達は自民党行革推進本部に、新たなルールを党独自に作るべき、と強く申し入れ、行革本部も重い腰を上げて公益法人改革委員会・公務員制度改革委員会合同会議を一回だけ開催したが、それっきりで、何の進展もない。

「幹部公務員法」を議員立法すべき、との提案をした際にも、私達は同時に再度新たな天下り規制ルール導入を行革本部幹部に申し入れているが、結局「やる、やる」と言いながら、その後今日まで、議論の場は一切設けられていない。政府から提案がまだないからだ、との説明が非公式にあったが、官僚の天下りルールを官僚に作らせること自体が本末転倒。政治の強いメッセージとして、天下りや税金のムダ遣いを根絶する新しいルールを自民党が決めるのが本筋だ。今週中にも、「幹部公務員法」を議員立法しよう、と考える仲間が集まり、行動を起こすことになるだろう。

 もう一つの政治家による使命感欠如の表れは、地球温暖化問題だ。自民党・地球温暖化対策本部において私が座長を務める「低炭素社会形成推進基本法<仮称>」に関し議論が続いているが、一部国会議員から後ろ向き、消極発言が相次いでいる。
「基本法だから、具体策は一切入れるな」、「このままなら絶対反対する」など、いささか冷静さに欠く発言に驚く。経済界の声に押されてのことだろう。さらに、「現行省エネ基準で十分で、温室効果ガスの排出基準を新たに導入する必要はない」など、経済産業省と環境省との間の縄張り争いの片棒を担ぐだけで、世界の流れに逆行する発言も多い。

ここは政治家としての責任を全うしてもらいたいものだ。我々政治家は、経済成長にも、地球環境保全にも、双方に責任を負っている。また、どの調査結果を見ても、国民の環境、地球温暖化問題への関心は極めて高い事も忘れてはならない。このままでは「自民党は環境、地球温暖化問題に後ろ向きだ」と国民から見られてしまう。

 5月21日付新聞各紙に掲載された経済団体、労働組合連名の地球温暖化問題に関する1ページ意見広告にはいささか驚いたが、それでも規制される側である経済界や労組が、将来の競争力や成長力へのマイナス効果をいろいろ心配することはそれなりに理解できる。しかし、地球環境保全と経済成長の双方を同時実現させなければならない責務を負う政治家は、成長を維持し、競争力を保ちながら低炭素社会をどう作るか、そのための適切な規制の方向性はどうなるのか、など中長期的視点から、全体を考えた上での明確な「政治のシグナル」を発信しなければならない。政治の覚悟を示せば、産業界もそれを前提に行動し、技術革新によって競争力の確保も可能となる。

 補正予算で政府与党は低炭素革命を標榜し、経済復興の柱として太陽光発電やエコカー、エコ家電、エコ住宅などを全面バックアップしている。注文殺到のプリウスは、97年の京都会議の直前にトヨタが発売した。炭素への制約は、強まることがあっても弱くなることはあり得ない、との認識により開発、製造、販売が始まった世界初の量産ハイブリッド車。いわば、「プリウスは京都議定書が産んだ」とも言える。

 「適切な環境規制は、コスト削減、品質向上に繋がる技術革新を促し、結果として企業の競争力を高める」と言われている。技術革新が遅れ、20年後、30年後に日本企業が世界の中で敗退することは避けねばならない。その責任は今日の政治が負っているのだ。