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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/09/25(土) NO.617号 

国益放棄の民主党政権(9月25日)

 ぶれる民主党政権が、ついに最悪の国益放棄の愚挙に出た。海上保安庁の巡視船に体当たりをして公務執行妨害で逮捕された中国人船長を、処分保留のまま、今朝未明、釈放した。同船長は、日本の尖閣諸島沖で領海を侵犯し、主権を侵害しているのだ。民間交流中止、レアメタル禁輸、遺棄化学兵器関連事業で現地視察中だった日本人4人の拘束など、中国が対抗措置を取り始め、民主党政権がどこまで持ちこたえるかに注目していた。今回の件で、現政権は、中国など外国が少しでも強く出れば、領土領海を守る」という国家としての最低限の基本まで放棄してしまう弱腰であることを露呈した。今後、この政権のもとでは次々と国益を失っていく、との強い危惧を覚える。

 釈放方針を速報で知った際松山を代表する企業経営者と面談していた。私が、そのニュースを伝えると、その方は即座に「これで日本は中国に対し、尖閣諸島は日本の領土ではない、というメッセ-ジを伝えたことになりますね」と応じ、大きく落胆された。まさにその通りだ。前原外相などが「検察が国内法に則って粛々とやっている。我々はあくまでも国内法に則ってやっていく」と明言していた。それは裁判で結論を出し、尖閣諸島における日本の法執行権を行使すること以外あり得なかったはずだ。何というぶれ方だろうか。

 さらに23日の前原・クリントン会談では、クリントン長官が、尖閣諸島が米側の日本防衛の義務を定めた日米安保条約第5条の適用対象になる、との見解を示し、同盟国として日本をバックアップをしてくれた。その結果として、日本政府が国益擁護のために一層筋を通しやすくなった、と思っていた矢先の今回の決定だ。9月24日という日は日本の戦後外交史上、最悪の汚点の一つとして記憶されることだろう。

 昨日の那覇地検の記者会見では、釈放の理由の一つに、「国民への影響」や「今後の日中関係を考慮した結果だ」、と明言している。いつから検察が外交まで担うことになったのか。昨日の仙谷官房長官も、今日のニューヨークの菅総理も「検察が事件の性質を総合的に考慮して、粛々と国内法に則って手続きを進めた結果だ」と、政治決断ではなかったと強弁している。だが、今回の決断が、仙谷官房長官を中心とした官邸による政治判断であったことは事実関係からも明らかだ。日頃は散々偉そうに政治主導を唱えておいて、肝心なときにはしっぽを巻いて官僚に責任を押し付ける。今の民主党政権の根深い体質を象徴しているようだ。

 実はかつて安倍政権時代にも、ベトナムでのAPEC首脳会合の際、台湾の李登輝総統の訪日の可能性を理由に、中国側が首脳会談の見送りを示唆し、圧力をかけてきたことがあった。しかし、安倍総理は「そのような条件付きならば、首脳会談なしで結構」と圧力に屈しないメッセージを返した。その不動の姿勢に驚いた中国は、逆に首脳会談開催を求めてきて、結局開催されるに至った。押されても圧力を跳ね返す、ぶれない態度が国益を守る良い例だ。

 問題解決に向けた交渉もしないまま、押されればどこまでも引き下がる民主党政権。その実体は、10月1日から始まる臨時国会において、私が理事を務める予算委員会などで徹底的に明らかにしていくつもりだ。