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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/02/01(月) NO.570号 

元気な農業青年がいた(2月1日)

 1月26日(火)午後、農業や食問題などについての私の師の一人、地元の牧秀宣さんの薦めで「NPO法人J-PAO(日本プロ農業総合支援機構)」が伊藤忠本社で開催した「第2回トップマネジメントセミナー」に参加する。牧さんは愛媛県松山市の東隣の東温市にある農業法人(有)ジェイ・ウィングファーム代表だ。

 彼は米国での農業研修後、1993年に農業法人を設立、以来「地域から耕作放棄地は出さない」との方針の下、米麦二毛作にこだわりながら、愛媛県が生産量日本一を誇るはだか麦、モチ麦、四穀米などを、愛媛内外の学生なども巻き込みながら生産、2002年には日本農業賞大賞を受賞している。数年前、わが明恭塾でも「スローフードとは・・・」というタイトルでお話し頂き、若者とともに勉強させてもらった。

 伊藤忠の丹羽会長の「日本のこれからと農業」との講演に続き、パネルディスカッション。丹羽さん、J-PAO理事長の高木元農水事務次官、カイワレ大根の水耕栽培でスタートした福島県郡山市の(有)ふるや農園の降矢セツ子取締役に加え、(有)ジェイ・ウィングファームで働く28才の若者、齋藤碌君の4人がパネリストだ。

 まず進行役の高木さんから齋藤君に、丹羽さんの講演の印象を聞く。京都の仏師の息子さんで、愛媛大学農学部卒業後、2年間米国オレゴン州で畜産研修を積み、帰国後、牧さんのところで働きだしている齋藤君。なぜ自分が農業が好きで、一生の仕事としてこの道を選んだか、蕩々と語り始め、会場がパッと明るい雰囲気になる。新鮮な驚きだった。

 まず、「この世の中で一番強い職業は、農業だ」と高らかに主張。「百姓は縄文時代からいる。七人の侍の時代でも、戦時中でも、皆百姓から芋や米を交換してもらって生きてきた。また、大雨が降る時には灌漑施設の水門を閉めて備えをするなど、自然を守り、地域を守る重要な貢献をしてきた。だから最も大事な職業なのだ」と自信を持っていう。

 さらに彼は、「なのに日本では、農業のステータスが低すぎる。米国の穀倉地帯では、公共の建物の天井には、芋などを作る農民の姿が広大な農地とともに、堂々と描かれている。日本でも農業の地位を上げなければならない」と熱く語っていた。

 久し振りに農業に明るく燃えている青年に出会い、嬉しくなる。このような意欲に満ちた爽やかな若き青年がいる限り、日本の農業はまだ大丈夫だ、と確信する。我々政治家は、こうした青年達をバックアップする農業政策を推進し、農業も地域も興していかねばならない、と改めて心に誓う。やる気があってもなくても、バラマキで喜ばそうという民主党の農業戸別所得補償制度では、むしろこうしたやる気のある、頑張る農業者の意欲を削いでしまい、長い目で見て日本の農業の足腰は強くならないのではないか。

 約一時間弱のパネルディスカッションだったが、面白かった。帰り際に齋藤君と握手をし、「いい話だった。頑張れよ!」と励ます。牧さんには、松山で齋藤君を交えて一杯やりましょう、と声をかけてある。