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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/10/30(土) NO.622号 

国益無視の戦略なき先送り(10月30日)

 昨日の予算委員会・理事懇談会で、那覇地検が27日に衆議院に提出してきた証拠物である尖閣諸島沖衝突事案ビデオを、漸く来週1日(月)の朝8時から観ることになった。対象者は、衆参両院の予算委員会理事など26名に加え、1日の予算委集中審議で本件について質問をする議員だ。我々が主張する一般国民への全面公開などその後の扱いについて、民主党筆頭理事は、「もうこれで打ち止めだ」と隠蔽体質を色濃く出し、繰り返し牽制したが、提出されたものは7分弱の短いビデオであることもあって、我々は強く反論、扱いを理事会で協議することで落ち着いた。

 9月30日の予算委・尖閣問題集中審議後の理事会で、与野党一致して予算委・理事会へのビデオ提出を政府に要求することで合意してから何と1ヶ月。9月7日の事件発生から見れば、約2ヶ月も経ってしまっての結論だ。あの手この手を使っての、信じられない政府・民主党の先送り戦術の連続、それも国益無視の、何の戦略性もない先送りだった。

 予算委員会の理事会において民主党は、まずビデオの扱いについて政府と協議している、として時間稼ぎ。しかし、国政調査権に応え、公判前に証拠物を提出するかどうかは検察が刑事訴訟法第47条に従って決めればよいことだ。与野党合意済みの予算委員会は、国会法第104条に基づく国政調査権発動のため直ちに決議をするだけだ、と強く迫り、当初は15日の参議院予算委員会終了後、などと、全く意味のない日程を提示、ようやく10月13日、の委員会決議が行われた。

 その後政府は検討に約2週間もかけ、ようやく27日にビデオを提出してきた。それも、検事正から議長宛、さらに、仙谷官房長官から予算委員長宛に、ほぼ同内容で、極めて慎重に取り扱う旨の要望書が添えられてきたが、かかる証拠物を一般公開すべきかどうかは、提出を受けた衆議院で判断すべきものであり、検事や官房長官の意見を考慮すべき性質のものではない。

 提出を受けたビデオの扱いについて、我々は当然27日でも理事会で見るもの、と思い込んでいたが、民主党は、9月30日に与野党間で合意した「まずは衆議院予算委員会がビデオの提出を受けた上で観、一般公開などその後の扱いについては理事会で協議する」という方針を強引に覆し、「衆・参の予算委員会の理事が合同で観てはどうか」との提案を新たに行ってきた。委員会決議を行ったのは衆議院予算委員会であり、自民党、公明党、共産党は一貫して、まずは衆議院予算委員会理事会で観る、との路線を3日間守ったが、遂に委員長が押し切り、来週月曜日朝8時に衆・参の予算委理事中心で観ることとなってしまった。何らの正式決議もしていない参議院予算委員会の理事等と一緒、というのは違和感がある。

 ベトナムで予定されていた日中首脳会談前のビデオ視聴は避けたいのか、と思いきや、中国側が突然首脳会談を中止してきた。表面的にはガス田開発問題に関する前原外相発言が原因となっているが、このビデオ問題を含めた複合的原因が重なってのことではないか。結局、民主党政権のやることは、時間を無為にかけ、策を多く弄し、なおかつ迷走し、結果は国益に大きなマイナスになることが多いのは、普天間移設問題の複雑骨折ぶりを見ても言えることだ。

 本件ビデオも、船長の身柄送検前か、釈放直後にさっさと世界に向けて全面公開し、中国漁船が明らかな領海侵犯、公務執行妨害を行った悪質ケースであることを世界に明らかにしておけば、いろいろあっても今頃二国間の緊張関係は収束に向かっていたであろうし、日中間に領土問題は存在せず、日本の姿勢が正しいことを世界が理解できたはずだ。