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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/12/16(水) NO.560号 

国の背骨が揺れている(12月16日)

 昨日の朝8時から、エバンス元豪外相、川口順子元外相らと朝食会。二人は、世界中の核弾頭を2025年までに現状の十分の一の2000発以下にする、との提言をまとめた国際賢人会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」の共同議長でもある。昨日の午後、日豪両首相に提出した最終報告書の内容について朝食を取りながらポイントの説明を受け、今後の課題などについて議論。エバンス氏とは、2000年前後に私が毎年参加していたシュルツ元国務長官、ビル・ブラッドレー元上院議員主宰の「アジア太平洋円卓会議」(ペブル・ビーチ会議」)以来の、気の合う友人だ。開口一番、「選挙で生き残って良かったな、ヤス!心配していたぜ」と来た。さすがかつて労働党議員として選挙を戦ってきた政治家だけに、私の選挙事情についてもよく知っていたようだ。

 朝食会場の帝国ホテルを出て祝田橋交差点まで来ると、交通規制に合う。目の前を習近平中国副主席の車が、物々しい警戒の車列で皇居方面から国会方面に向かって駆け抜けていく。天皇陛下との会見を済ませたところだ。陛下の体調に配慮して作られた「30日ルール」を守らずに特例会見を実現したことは「天皇陛下の政治利用」ではないかと物議を招き、小沢幹事長が宮内庁長官に辞任要求までした、いわく付きの会見だ。

 同幹事長は、国事行為でもない天皇陛下の要人会見について、内閣の助言と承認に従って行えば良く、体調が優れなければ、優先度の低い他の行事をお休みになればいいことだ、とまで言い切ってしまった。間違った憲法解釈を使ってでも政治目的を貫徹しよう、という態度を奢りと受け取った国民は多いのではないか。国の先行きに危うさを感じる。

 さらに昨日、鳩山内閣は国家の背骨に関わる重要な事を、他に二つ決めた。一つは沖縄の普天間基地問題について、もうひとつは、2009年度第二次補正予算案と2010年度予算編成の基本方針だ。

 普天間代替基地の決定先送りは、10年以上かけてまとめた日米合意を事実上白紙に戻すもの。安倍官邸時代も地元や関係団体から様々な異論はあったが、同盟国との合意の重みを背負い、苦労しながら一歩一歩前に進めてきたものだ。外交には常に尊重すべき過去からの積み上げが両サイドにあり、オバマ大統領も政権交代の際、この日米合意は前政権から踏襲した。外交の重みを鳩山総理は感じなければならない。しかし、ここまでの迷走により、日米同盟関係の相互信頼が根本的に揺らいでしまっている。

 11月頃、民主党中枢に近いある人物は私に「今の一見ちぐはぐして見えるのは出来レース。総理、外相、防衛相がそれぞれ役割分担をしているだけ。最後は年末までに辺野古移転でまとまる」と言っていたが、優柔不断の鳩山総理に沖縄県民感情や名護市長選での県外移転派推薦候補の扱い、社民党の連立離脱圧力など、いずれも裁けずに行き詰まってしまった。官邸にいれば常にとてつもない孤独な決断へのプレッシャーに晒される。こういう時にこそ、政治家の神髄が試されるのだ。

 日米首脳会談で「Trust me!」と見栄を切った鳩山総理だったが、オバマ大統領との間に信頼関係は既に消滅しているようだ。先日、一年以上の米国滞在から帰国した友人は、最近彼の全精力を投入している感染症対策などグローバル・ヘルス問題に関しても、ホワイトハウスが、当面日米二国間の連携はストップせよとの指示を出したと言われている、と心配していた。事態はここまで広がりを持って深刻化しているのだ。北朝鮮問題、対中国問題、非核化、地球温暖化政策など、日米で緊密に連携しなければならない問題が山ほどある時に、選挙の際沖縄県民向けに「普天間は、できれば国外移転、最低でも県外移転」と鳩山幹事長(当時)自身が言ってしまった事、および過去の自民党政治の否定、という国内政治の論理の延長線上で「内向きな外交」が行われることで、日米の間に冷たい風が吹く事態を招くのは、国益の重大な損失だ。

 もう一つの懸案は経済財政政策の迷走。今回補正予算をここに至って漸く決めたが、そもそも既に執行されていた15兆円の補正予算を、一旦全面執行停止させた上で3兆円カットした事により、日本経済を9〜10月にがくっと落ち込ませ、さらに事業仕分けにより様々な経済主体がすっかり萎縮気味になってしまっていることが経済に大きなマイナスとなっている。マクロ経済に関心の薄い現政権は、相変わらず経済実態の深刻さと、科学技術などイノベーションに裏打ちされた産業構造の大転換の必要性への認識が乏しい。

 また、マニフェストにおいてバラマキ的な政策を多く掲げたからには、それらの政策実施に当たり、かつての「骨太2006」のように財政を中期的にどのように運営し、財政再建との整合性をいかに取っていくかの展望を同時に示す事が肝要で、その上でマニフェスト実施の初年度である来年度予算を編成すべきだ。しかし基本方針では、「中期財政フレーム」は来年前半にしか示さないという。問題先送りであり、財政再建に関しても無責任だ。

 今日、松山空港でお会いした地元金融機関の幹部は、私を見つけるなり「塩崎さん。この国を何とかして下さい。心配だ!」と真剣な面持ちで言って来られた。確かにここに来て、天皇制、外交・安保政策、経済・財政政策など、国家の背骨ともいうべき根幹的な政策が土台からぐらつき始め、国民にも心配が確実かつ急速に広がりつつあるように思う。

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