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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/12/23(水) NO.562号 

子育て支援と生活支援は峻別せよ(12月23日)

 先週金曜日、私の事務所で幼稚園のPTA役員並びに園長先生方と勉強会を開いた。その際、お母さん方から「子ども手当を頂けるのはありがたいが、結局生活費に回してしまい、そのツケが子ども達の世代に回っていくことを考えると、怖い」とおっしゃる方が多かった。中には「子ども手当に心が動き、つい民主党に投票してしまったが、今は後悔している」との発言をする人さえおられた。

 我が家の食卓でも子育て支援の問題は頻繁に話題に上る。身近な例でいえば、私の二男夫婦に今年の4月、長女が誕生した。だが、お嫁さんが職場復帰をしようにも、在住の目黒区には全く保育園の空きがないそうだ。結局12月からの復帰を目指し、来年4月に近所の公立保育園に入れることを期待しながら、唯一空きのあった遠くの無認可保育園に子どもを預けだした。ところが、聞けば保育料は月17万円、車での送り迎えなどを含め合計21〜22万円もの出費がかかり、稼いだ先から保育料に大半が消えていってしまうという。

 世界を見ると、子育て支援のための支出には大きく分けて、@直接お金を配る「現金給付」型とAお金以外のサービスを届ける「現物給付」型の二種類に分けられる。出生率が反転して子育て支援が成功しているフランスやスウェーデンなどでは、「現物給付」型である「保育・就学前教育」や「現金給付」型の中でも支給条件や目的が明確な「出産・育児休業給付」などに手厚い支援をしており、家族手当的な現金給付はあくまでも補完的(フランス35%、スウェーデン25%)に過ぎない。他方、家族手当的な現金給付の割合の高いドイツ(50%)では、全体では日本の3倍くらい子育てに支援しているものの日本、イタリアとほぼ同じ低出生率で苦しんでいる。主要先進国中、日本の子育て支援給付額(対GDP比)は米国に次いでビリから二番目。子育て支援へさらに力を入れていくべきことには異論はないが、しかし、このまま5.4兆円規模の子ども手当を導入すれば、突然、「家族手当のような現金給付」だけ先進国中第一位になり、日本の子育て政策全体の約66%をそうした現金給付が占めてしまうという、実にバランスの悪い政策の組み合わせになる。支出目的のない現金を家族にばらまいて、果たしてどれだけ出生率向上効果があるか、根本的な大きな問題が残るのだ。

 私は選挙を通じ、一貫して児童手当でも860万円の制限を設けており、現金給付である手当には所得制限を付けるべきだと提案してきた。同時に、税金の効率活用を図るには、「現物給付」として保育園・放課後児童クラブの完備(約8000億円)、幼児教育の無償化(約8000億円)、などに加え出産・育児休業支援策のような目的のはっきりした現金給付の充実などの支出をまず大幅に強化するのが急務だと思う。そのうえで、児童手当のような現金給付は、低所得者向けに増額を図る方が政策目的と手段が整合する。雇用創出や景気対策の観点からも、この方がずっと効果が大きい。

 鳩山総理は21日に「子ども手当の所得制限なし」を決め、親の収入が一億でも二億でも関係なく、薄く広く手当が支給されることになった。その政策効果は依然としてはっきりしないまま、子ども手当による重たい負担だけは確実に子ども達に回されていくこととなった。配られるのは単なる「国のお金」ではなく、つけ回しされる借金を将来背負っていかなければならない我々の「子供たちのお金」なのだ。限られた助け合いの原資である税金が無駄に使われることにならないか、その使い道とその政策効果を有権者に代わり、国会で徹底的に検証していきたい。