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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2011/06/29(水) NO.666号 

揺らぐ国家の軸を建て直す要

 昨日、原発事故被害に関する特命委・財金部会・経産部会合同会議があり、政府の「原子力損害賠償支援機構法案」に対して「質すべきポイント」とのペーパーが提出され、議論。その中で、最大の「命題」として、(1)迅速かつ確実な賠償、(2)電力の安定供給、(3)金融市場の安定、の3つを上げ、質すべきポイントとしては(1)福島原発事故と今後の対応策の分離、(2)国の責任の明確化、を上げている。

 私からは、まず、今回の事故対応に際しては、基本原則が大事で、それは、(1)迅速かつ「完全」な賠償、(2)電力安定供給、(3)国民負担の最小化、(4)公平性・公正性の確保、(5)日本経済の健全性確保、がその柱ではないか、と指摘。「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参議院議員から、「国の責任の明確化、と書くと、あたかも東電を擁護しているように聞こえる」、と鋭い指摘があり、あくまで東電の責任は追及すべき、との主張が出された。まさに、私が言う「公平性、公正性」であり、その「東電」の中身として、経営者、株主、一般債権者、社債権者の責任の取り方に関する原則が、法治国家として、また健全な資本主義国家として重要であることを再度指摘。

 先週の金曜日、依頼もしないのに珍しく経済産業省の中堅幹部が私の事務所に来た。昨日の東電の株主総会などを控え、「原子力損害賠償支援機構法案」を、野党修正を飲んででも成立させたいという姿勢を見せたいということか。いずれにしても、あらゆる関係者、いわゆるステークホールダーの責任を明確化しないまま、全て電気料金引き上げを通じて全国の家庭や企業に国民に負担を負わそう、という現行案は、無原則で、原発の新しい位置づけの議論もなく、これでは、再生可能エネルギーへのシフト等、新たなエネルギー政策への移行も難しくさせる。そして東電の将来やそこで働く人たちの気持ち、そして日本経済の健全性確保なども全く顧みていない。国家の軸が揺らいでいることを象徴しているとも言えよう。

 もう一つの国家の軸がぶれている案件と言えば、国際会計基準だ。明日30日に企業会計審議会の冒頭、自見大臣が、一昨年6月、与謝野大臣時代に同じ審議会で決めた原則、いわゆる「ロードマップ」を、審議会での議論なしに覆そうとしているのだ。

 一昨年の審議会では、「2012年に上場企業に強制適用の是非を判断し、強制適用の場合は少なくとも3年の準備期間をおき、2015年または2016年に適用開始」とのロードマップを描いたが、先週21日、自見大臣が記者会見でその結論を勝手に覆し、「強制適用の場合でも5〜7年の準備期間を設定する」としてしまい、そのことを明日の審議会冒頭で言ってしまおう、という腹らしい。

 単なる自見大臣の身勝手か、との見方もあったが、昨日の朝開かれた自民党企業会計小委員会で「この方針は自見大臣個人のものか、それとも金融庁としての正式方針か?」と私が問うと、担当官から「金融庁の行政としての正式方針だ」との明言があり、驚いた。同じ担当官が2年前までは私に対し真逆の事を言っていたのだ。政治家の言う事に不本意ながら、唯々諾々として従わなければならない役人のつらさかもしれないが、経済の基本である会計基準に関する国家方針がこんなにぶれていてはダメだ。

 国会に事故調査委員会を設置する議員立法に関し、今日の午後、公明党に対し説明の予定だ。なかなか腰の重かった民主党から、昨日やっと動きがあり、今週金曜日か来週火曜日に説明に来てくれ、とのこと。ここは民主党にも、広い心で考えてもらい、立法府としての良識を示す意味からも、この法案を共同提案してもらい、一日も早く国会にハイレベル専門家による事故調査委員会を憲政史上初めて設置、真相解明を行って世界の信頼を回復したい。今こそ立法府にぶれない良識の軸を据える時だ。