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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/10/17(日) NO.619号 

逃げずに「熟議の国会」を(10月17日)

 先週12日(火)から、菅総理の所信に対する予算委員会での基本的質疑が、衆参それぞれ二日ずつ行われた。実は私は9月30日に行われた尖閣問題に関する集中審議から、衆議院予算委員会の理事となっている。菅総理が「熟議の国会」にしたい、と言いながら、実際の国会運営では、いかにして審議時間を短縮するかに終始する姿を目の当たりにし、その逃げ腰振りに驚くばかりだ。
 これまで国会冒頭では、テレビ入りで全大臣出席の基本的質疑を丸々二日間、合計14時間程度行ったうえ、テレビを入れないものの、総理、財務大臣と質疑者が要求する大臣が入る一般的質疑をもう一日行うのが通例だ。しかし、今回民主党側は、テレビ入り基本的質疑を10時間に止めたい、と延々主張し続けた。参院選でねじれ国会となったのだから、むしろ審議時間を増やし、議論を深めながら丁寧に国会を運営すべきところ、全く逆。最後は、武部筆頭理事に、14時間の基本的質疑をやらないなら、我々は委員会そのものに応じず、代わって、野党が多数を占めるようになった参議院予算委で基本的質疑を一週間ほどやる、と強く出たところ、漸く民主党側が折れた。
 しかし、その際、一般的質疑に代え、集中審議を一日行うことでお互い合意し、日程協議は基本的質疑後、と決めたはずなのに、二日間の審議終了後、そのようなことは約束していない、と唖然とする変貌ぶり。どこまでも逃げようとする。
 尖閣沖衝突ビデオ公開問題でも菅政権は理不尽なほど後ろ向きだ。尖閣問題の集中審議を行った30日の予算委理事会で、与野党全会一致でビデオ提出を政府に求めることを決定したにもかかわらず、外交的配慮に関する政府との協議を理由にずるずると先送り。漸く13日の午後、野党が過半数を持つ参議院の委員会での決議の可能性をテコに野党が連携して民主党を押しに押し、漸く二日目の委員会の最後に決議、議長を通じて那覇地検に国政調査権に基づく資料要求をするに至った。理事会決定から2週間も経ってからだった。
 昨日の新聞を見ると、政府・与党は、今後ビデオを公開するかどうかの判断を仙谷官房長官に一任する、と書いてあったが、奇異だ。なぜならば、事は証拠物の公開の問題であり、刑訴法第47条に基づき捜査当局が判断すべき事ではないか。中国人船長釈放は検察独自の判断で、政治介入はなかったことを強調してきた菅内閣が、今度は検察に代わって官房長官がビデオ公開の是非を判断する、というのか。筋が通らない。
 日本政府が、弱腰でぐずぐずしているうちに事態のマネージメントに失敗、ついに中国では反日デモが暴徒化するようになっている。中国ペースで日中関係がこじれているといえよう。今回の事案に対して日本は、どのような圧力にもひるまず、ぶれることなく淡々と、それもスピーディーに司法手続きを進め、船長を起訴すべきであったと思う。このことによって、尖閣諸島が日本固有の領土であることを法執行によって裏打ちすることになったはずだ。もちろん、日中関係の悪化を最小限にとどめる外交努力は水面下で同時並行的にしっかりやることは当然だ。
 明日からの週も、菅政権自らが唱えながらも現実には逃げ回る「熟議の国会」を実現し、混迷する経済政策、外交・安保政策などについて議論を深めていきたい。