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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2011/07/17(日) NO.668号 

「真の国民負担の最小化」を

 東電の福島原発事故の賠償スキームを決める政府案「原子力損害賠償支援機構法案」が、現在衆議院で審議中だ。この法案が多くの問題を孕んでいることは、既に以前のメールマガジンでも指摘をしたが、それに対する自民党の対案戦略が中途半端かつ弱腰なのが気がかりだ。98年の金融国会で民主党が金融再生法を出してきたように、国民経済を真剣に考える本質的対案を出さねば、自民党の政権復帰はいつまでも期待できない。

 自民党の原発被害特命委員会や財金・経産両部会の役員が中心となって、鋭意党としての案をまとめてくれている。そのことには深く感謝をする。しかし、私が懸念するのは、現政権のまやかしの手法に彼らも惑わされていないか、ということだ。「政府以上に既得権益擁護だ」との批判の声すら他の野党から聞こえてくる

 15日の昼に党本部で開かれた会議でも、「直ちに東電を法的処理すべき」という意見と、「(賠償)債務の総額が明らかになった段階で法的処理」という意見が真っ向から対立した。政府は「東電を債務超過にさせない」と明言しているので、それに比べれば、両案とも踏み込んでいると評価することもできる。

 しかし、政府の基本スキームを飲んでしまえば債務超過にならないのだから、債務の総額が粗方判明した段階になっても、法的処理を行うことはできない。自民党の修正提案の中には、「株主等のステークホルダーの責任を求めずして、電気料金値上げや最終的に税金の負担とすることを決めないことを求める」とあるが、さんざん国民の金を注ぎ込んだ結果、東電のバランスシートは、資産売却や株主責任をとる必要もないほど健全化することになる。

 仮にその後、法的処理に移行しても、真っ先に飛ぶのは税金を投入した株主資本であり、これでは金融機関の債権を税金で守ることになってしまう。更には賠償額までカットせざるを得なくなり、結局ツケを負わせられるのは、東電に関係ない国民だけだ。あんまりではないか。

 現時点で既に莫大な賠償債務が見込まれており、事実上債務超過状態にあることは、東電の経営陣も国会等で認めているところだ。JAL同様、企業再生支援機構の安定的管理の下で法的処理を直ちに行い、安定的電力供給をしながら債権債務を整理し、その上で、新しい東電として生まれ変わる将来展望を考えるべきではないか。当然、その際には、カットされてしまう賠償債権は全額国が負担する新規立法を同時に成立させることが重要だ。自民党案にはその視点が全く欠けている。いざ支払いの段になって、全額賠償ができなくなり大慌てしても遅い。大混乱となるだろう。

 15日の会議では、自民党として、額賀原発被害特命委員長らが政府と交渉に入ることについて一任された。しかし、その決着内容まで一任しないこと、そして交渉の節目節目で党内説明をすることも確認された。

 政府の閣議決定にも「国民負担の極小化」の文言はアリバイ程度にあるが、それは「東電を債務超過にさせない」という文言と同時に書かれている以上、まやかしに過ぎない。自民党は決して国民に安易な負担を転嫁させない、「真の国民負担の最小化」に取り組みたい。これこそ、政治の基本だ。そのためには株主資本約1.6兆円、借り入れ約4兆円に手つかず、はあり得ない。