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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2011/08/28(日) NO.676号 

日本の民主主義の健全性を示せ

 先週木曜日の25日、菅総理退陣の3条件のうちの残り二つの法律、すなわち再生可能エネルギー法案と特例公債法案を翌26日に成立させるかどうかを巡り、与野党の国対委員長間で緊迫したやりとりが行われた。残された震災関連法案3法の扱いと連動するかたちで議論された。結局金曜日の朝、二重ローン救済法案、私学復旧助成法案、そして私が提案している原発事故調査委員会法案ともに次期臨時国会で成案を得る、との回答が民主党から文書で来た。

 自民党は、原発事故調査委員会法案については、引き続き今国会成立を強く主張したため、民主党も回答の中で「今国会において実務者協議を加速し、成案を得られるよう努力いたします」との所見を加えており、それを受けて金曜日の4時から、実務者協議が再度開かれた。

 しかし驚いたことに、民主党は、これまでの案と寸分違わぬ、事故調査委員会を国会ではなく、政府内に三条委員会として設置する案を再び出してきたのだ。今回の我々の議員立法の肝は、事故処理で問題を起こした政府(行政府)の中ではなく、立法府、すなわち国会に調査委員会を置く、という点である。この重要な点では全野党、そして与党である国民新党も概ね賛成のはずで、おそらく全ての政党の中で、唯一民主党だけが強硬に反対しているのだ。
 
 反対の理由のひとつは、「国会という政局の場で、公正中立な委員の選定は不可能」だというが、これは理由にならない。なぜならば、政府の畑村事故調査委にしても、三条委員会方式の際の人選にしても、政府が全てを仕切って提案してくるので、全く中立性はなく、政府の考えそのもの。それに対し、国会において各党が自己抑制的に、冷静に選考を行えば、与党だけでなく、多様な考え方からの提案による人選になり、政府提案より何倍も中立性が出てくる。協議の中で、共産党や社民党からも「国会の良識で中立性を確保可能だ」と熱い意見が出されてきていた。

 確かに、国会に委員会を設置した場合、政治からの中立性の確保には努力が必要だろう。私達が5月にワシントンを訪れた際、ジョン・ハムレCSIS所長は「国会に置くには、日本の政治は分裂し過ぎている。政争の材料にされてしまう」と言われた。

 そこで私は、「ならば、皆で国会に公正、中立な調査委を作ってみせ、日本の民主主義はまだまだ健全だ、と言うことを証明しないといけない。日本の政治はそこまでレベルは低くない事を示そう」と思いながら立法作業を進めてきたのだ。しかし、どうも、唯一民主党の反対で、国会に調査委員会を置くことができなくなるかも知れない。

 一部には、真実隠蔽のために官僚が、国会に委員会を設置することに裏で大抵抗をしている、との声も聞く。我々はこのことで政権を倒そう、とか、特定の人を追求するために調査をするのではない。これだけ複雑、深刻な事故が起きた原因を明らかにすることによって、日本のみならず、世界の原発政策の将来に判断材料を提供しよう、と思っているのだ。

 7月初から実務的議論を重ねてきた民主党政調「原子力事故影響対策PT」の議員の中には、スリーマイルアイランド事故の際のケメニー委員会などのことを、私たちよりももっと勉強しているのではと思われる議員もいた。今後の与野党実務者協議には、荒井聡同PT座長ないしPT内の詳しい議員を実務者に加えることを提案した。

 立法府が行政府を検証することが、日本憲政史上初のことで、重要なことであることをよく認識している議員は民主党内にも多い。実感としては、過半数はこの志を理解してくれているのではないか。

 日本の民主主義、議会政治には可能性がまだまだ大いにあるはずだ。それを信じることは、翻せば議員を選ぶ国民を信じることに他ならない。私は議会の良識、国民の良識を信じたい。だからこそ、この法案を諦めたくないのだ。