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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/11/11(木) NO.624号 

二度と政治主導という言葉を使って欲しくない(11月11日)

 昨日で3日連続のTV入り予算委員会審議が終わった。先週木曜日夜、
海上保安庁撮影の尖閣沖衝突ビデオがユーチューブに流出する、という
大きな事件があり、それを受けての集中審議だった。ビデオの全面公開
を唱える我々に対し政府・民主党の強い抵抗で、衆参予算委員会理事な
どだけにしか公開されていなかったが、ビデオ流出によって、中国漁船
が意図的に海保巡視船に体当たりをしてきた事実が、期せずして広く国
民に明らかになった。

 初日、私も質問に立つ。政府内からのビデオ流出に関して総理、官房
長官ともその責任を認め、謝罪する。総理自身も今回の事案を「重大、
悪質、明らかな故意」であると国会で認めた以上、この際ビデオを国内
外に公開するのは当然である。そして、法治国家としての意思を強く示
すため、今度こそ検察庁法14条に基づく指揮権を発動してでも、処分保
留状態のままの船長を「法と証拠に基づいて」起訴すべきではないかと
問うた。仙谷長官はこれに対し、自民党の正式提案があれば検討したい
との珍答弁。政治主導を唱えながら野党からの提案がないと怖くて重大
な政治判断ができないというなら、即刻政権を返上して頂きたいものだ。

(当日の委員会質問の様子は衆議院TVからご覧になれます
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.php?deli_id=40659&media_type=
)

 一昨晩夜8時過ぎ、急遽昨日の集中審議が決まる。ところが、民主党
はTVを入れることを猛烈に敬遠。理事会では「NHKに働きかけ、TV入り
実現に努力する」と言いながら、何人かの同僚議員に確認してみると、
どうやら与党側は早々に「もうテレビ中継はないと自民党に返事した」
とNHKに伝えてしまったようだ。また、昨日理事会で与党理事に確認
してみれば、実際には民主党側はテレビ中継の依頼をNHK側にして
いなかった。与党から指示されない限り、NHKは中継ができない。

 やむなく今朝の理事会で、机をたたいての大議論の末、ようやく1時
間遅れの午前11時からテレビ中継が実現。政府・民主党がここまでTV
中継を嫌がるのは「すべては検察の判断」という認識で始まった虚構の
世界を守ることにきゅうきゅうとし、しどろもどろの答弁を繰り返す閣
僚達を国民に見せたくないからなのだろう。

 三日目となる昨日、昼休み中のニュース速報で、何と海保職員が「問
題のビデオを私がユーチューブに投稿した」と上司に告白したことが知
らされる。午後一時委員会再開時、まず鈴木海保長官から事実関係を報
告させ、予定外の審議を始める。声を詰まらせ、おろおろする鈴木長官。
表情が引きつったままの馬淵国土交通大臣。平静を装うが、うつろな目
の仙谷官房長官。野党からは菅総理以下、仙谷長官、馬淵大臣の責任論
が噴出する。

 仙谷官房長官はその後の会見で、早くも責任論において幕引きを狙っ
た。すなわち、馬淵国交大臣と鈴木海保長官の責任問題について「政治
職と執行職のトップの責任のあり方は異なる」との奇っ怪な論理を持ち
出し、鈴木長官は辞任すべきだが、その上司たる馬淵大臣は辞任不要と
主張した。要は、船長釈放を検察のせいにしたのと同様、官僚に責任を
押しつけ、政治家はほっかむりしようというのだろう。この政権には、
二度と「政治主導」という言葉を使ってほしくない。

 なによりも今回の件において「政治職」と「執行職」の責任を分けて
論じるのは根本的に間違っている。すなわち、10月27日に衆議院にビデ
オが提出される際、官房長官自らが要望書まで出してビデオについて
「極めて慎重な取り扱いに特段のご配慮方要望」と国会に要請している
。この要望書はビデオの扱いが事務方レベルではなく大臣レベルの取り
扱い事項であったことの動かない証拠である。

 とすれば、情報管理責任のポイントはまさに、菅総理、官房長官、国
交大臣がそれぞれ現場にどのような保秘に関する指示を出し、どの程度
それを把握し、指揮していたかである。そもそも、法執行の最たるもの
であった中国人船長逮捕の決断は誰がしたのか。前原国交省(当時)と
仙谷官房長官だった。自分は執行権がないからと言って大臣らが責任逃
れをすることはできず、即刻辞任すべきである。

 国益を侵害した中国人船長は無罪放免で解放する一方、国民が望むビ
デオを公開した海保職員は徹底捜査の上処分し、海保長官という官僚に
全責任をなすりつけようという姿勢だ。強い者には弱く、弱い者には強
く出る。こんなことでは日本はAPECでも世界の笑いものになってしまう
ことを憂慮してやまない。