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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2012/03/02(金) NO.700号 

より平安な旅立ちを

 昨年ライブレポートで、任意成年後見人制度を活用している女性の居住施設でご一緒した昼食の様子を掲載した(http://www.y-shiozaki.or.jp/livereport/detail.php?id=1902)。
私の友人の司法書士が任意後見人を務めており、老人ホームから外出し、彼女の大好物のお寿司を一緒に食べに行ったりもしたこともあった(http://www.y-shiozaki.or.jp/livereport/detail.php?id=2110)。
 いつまでもお元気でいて頂きたいと願っていたが、残念ながら昨年末急逝されてしまった。

 この友人は本人とできるだけ会って一緒に食事をしたりして、なるべく家族のような絆を実感してもらえるよう努力しているという。彼は、私も出席したこの女性の住んでいた部屋での葬儀の喪主を立派に務め、永代供養、納骨、初七日、四十九日まで責任を持って携わったという。今後、残務整理と遺言執行に移るとのこと。

 現在身寄りがない、独居の高齢者が社会全体で増えつつある中、成年後見人制度を活用するお年寄りの方が増えている。今回のケースでも、葬儀社も、住職も、「近しい身内がおらず、葬儀もちゃんとできないこともある。生前も関わる人がない人も多い。今回は専門の方が関わってくれてよかった。これからいろいろ相談させてほしい」と言っていたとのこと。彼女は、生前に任意後見と死後の事務を委任しておくことができたためにスムーズに事が進んだが、こういう事例はむしろ少ないのが現実のようだ。

 任意後見以外で成年後見制度が適用される場合は、認知症や精神障害が進行した状況で、裁判所により後見人が選ばれる。その方がお亡くなりになり、適当な身内がいなければ、後見人が葬儀を執行しなければならなくなる。しかし、現行法では死後事務に関する権限が明確でない。つまり、死亡と同時に後見・被後見関係が終了し、預金などには触れられなくなってしまい、葬儀も出せなくなることもあるという。私達の人生の先輩が亡くなられた時は、つつがなく送られるべきだろう。

 被後見人が亡くなられた後、残された財産を巡って混乱がもたらされてはいけないが、現行制度の下では、死亡と同時に後見関係が終わってしまい、法的に不安定になり、葬儀執行を含め、財産処理に関わることで動きにくくなってしまう。法務省は、民法解釈から何も問題ない、と言うが、現場の成年後見人達の困惑と不安は募るばかりだ。この際、議員立法ででも弁護士、司法書士、社会福祉士など法律や福祉の専門家には、こうした問題が発生しやすい被後見人の死亡後の取扱いについて、権限を明確にすべきではないか。

 愛媛県では22年度、341件の後見人が松山家庭裁判所から選ばれたが、内訳は、親族が219件、司法書士が64件、社会福祉士25件、弁護士18件、法人12件、知人1件、その他2件とのこと。今後独居老人等が増える中、専門家の後見割合がますます増えると同時に、期待される役割も大きくなっていくだろう。問題の改善のため、どういう内容の法整備が現場で必要とされているか、仲間とともにしっかり勉強して行きたい。