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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2012/07/03(火) NO.720号 

「奇跡の田んぼ、瀬戸内海」を作る

 先月24日(日)、「奇跡のリンゴ」で知られる無農薬・無肥料でのりんご栽培を実践している青森県の木村秋則さんが松山に来られた。かつて私のメルマガ(昨年12月25日、本年3月29日)でも紹介した障がい者のための就労継続支援B型事業所を運営する友人や、自然栽培で作った食材を使った飲食店をご主人と経営する友人などが企画したものだ。

 まずお昼には、「奇跡の田んぼ」を作ろう、と松山市荏原の耕作放棄地を借り受けた田んぼにて、木村さんの指導で田植え。障がい児など子ども達も加わり、約60人が横一列になって田植えを行う。苗は、NPO岡山県木村式自然栽培実行委員会の山田理事さんが岡山から持参してくれたもの。さすがにこれだけの人数だと、比較的大きめの田んぼ一枚の田植えも、あっという間だ。

 14時から荏原公民館で木村さんを交えてパネルディスカッション。改めて「木村哲学」に接し、新鮮な感動を覚える。「私達は、土の中のバクテリアなど、生き物の事、忘れているのでは?」と問われる。「昔の田んぼには、オタマジャクシやあめんぼう、貝など、小動物が沢山いたでしょう?なのに、今、そうした生態系がなくなってしまったのです」、との指摘に、昔の田園を思い出す。

「土の力は無限です。でも、それを止めているのが今の農法では?」、「今、私達がこの自然の中の連鎖を取り戻す義務があると思います。農業は自然を守るのです」と訴える。さらに、「最近各地で漁協の皆さんが自然栽培農法に協力してくれるようになりつつある」という。農業が取り戻す自然の力が、川を通って海に至り、海が豊かになることが段々と理解されてきているからのようだ。

 10年間、全く収穫を得られなかった事があったご自分のつらい経験談を交えて、木村式「奇跡のリンゴ」自然栽培農法の本質を語られ、参加者一同、納得。岡山で頑張っている山田さんによれば、組織としてではなく、個人レベルではあるが、JAにも理解者が広がりつつある、と言う。そういえばここ愛媛でも、JAが農薬使用量を減らす指導を農家にし始めている、と聞いており、脈があるかも知れない。

 夜、主催者の一人がご主人と経営している松山市内中心部のお店「じい家」で懇親会。まずは、木村式自然栽培によるおコメから造った日本酒で乾杯。その他食材も皆木村式農法で作られたものがふんだんにあり、何を食べても健康に良さそう。愛媛におられる木村さんの支援者が集まり、ご本人を交えて楽しいひととき。

 先週の火曜日、自民党で「瀬戸内海再生議連」の立ち上げ会合があった。瀬戸内海に面した各県の漁協幹部が勢揃い、愛媛県漁連を含め、各県から実情を聞くと、木村さんが言っておられた事と相通じる事ばかりだった。

 実は、2001年の第5次水質総量規制によって、海の生態系を支えるために大切な役割を果たす、窒素やリンなどまでが規制対象となってしまったようだ。結果、海の生物多様性や生産力を支える、いわゆる「栄養塩」が瀬戸内海中に少なくなり過ぎ、食物プランクトンや海藻類が育たなくなって食物連鎖の基礎が崩れているようだ。さらに、ダムや堰によって、栄養塩を含んだ水が流れなくなるとともに、砂もせき止められ、海に砂が供給されなくなっている。そのため、瀬戸内海の水は、透明度は増したものの、生息する魚介類が減り、海苔の色落ちも頻発するなど、海が枯れつつあるようだ。

 再び自然の中の連鎖を取り戻すため、自然栽培農法等の試みによって瀬戸内海を再生し、「奇跡の瀬戸内海」を皆の手で作ることはできないのだろうか。瀬戸内海の再生にとっても、木村さん達の挑戦と哲学は、大きな第一歩になるのではないか、という思いを抱いた。

 また、5月の連休に、妻とお邪魔してボランティアをさせて頂いた気仙沼の牡蠣養殖場は、「森は海の恋人」というNPOを運営している畠山さんが経営していたが、この方の考え方にも木村式農法や瀬戸内海再生運動と相通ずるものがあった。

 豊かな海の実現には、自然豊かな森林や豊かな農地が不可欠であり、漁業、林業、農業、いずれにおいても、自然本来が持つ生態系や食物連鎖、すなわち自然を守る力を回復しながら再生をしていかねばならない、という本質を、改めて再認識させられた。

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