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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2012/06/14(木) NO.717号 

原子力規制委員会法案の与野党合意

 未曾有の大惨事となった福島原発事故の反省を活かし、二度とこのような事故を日本で起こしてはならないという強い覚悟と決意を持って、昨年の5月から、国会等の公の場で、国民の安全を確実に確保するための新しい、独立した原子力規制組織の必要性を主張してきた。

 時の政権と推進官庁に翻弄されながら、「安全神話」にどっぷり浸かり、安全文化が根付かないまま起こった惨事、との反省を踏まえることが議論の第一歩だ。そして求められるのは、政権、閣僚の思惑や経済・エネルギー政策、その他あらゆる政治、行政からの圧力から完全に独立し、原子力の安全性に対し、科学的、客観的に責任を持つ組織だ。

 昨年の12月から、自民党内にPTを設置し、その座長として、吉野正芳環境部会長や柴山昌彦事務局長と共に、党内での議論の喚起と調整のみならず、公明党との折衝等について、奔走してきた。その議論がようやく今年の4月にまとまり、公明党との共同提案という形での法案提出に辿りついた。

 国会での審議と並行し与野党の協議が進められてきたが、今日その合意が結実し、自公案の「丸飲み」と言っても良い程、元々の自公案の内容が反映された修正案となった。

(1)原子力規制委員会は自公案通り、独立行政委員会方式、すなわち「3条委員会」とし、委員は国会同意人事とし、その身分は保障されること、
(2)総理の指示権は、自公案通り原子力規制委員会が所掌する事務から除かれること、
(3)ノーリターン・ルールについても、自公案通り発足当初から適用され、例外を5年間のみ認めること、
(4)放射性同位元素等規制や保障措置の所管についても、自公案通り全て原子力規制委員会に一元化すること、
(5)防災指針の策定等についても、自公案通り原子力規制委員会が行うこと、
(6)平時の防災訓練等の事務をつかさどる「原子力防災会議」を設置し、議長を総理、副議長を官房長官、原子力規制委員長に加え、(政府・与党の強い要求により、原子力・防災に関し権限はないが)環境大臣が務めること、また、環境大臣は事務局長も兼ねること、
などがその柱だ。

 協議の中では、新しい組織の設置に乗じて、原子力に関する権益を拡大しようと暗躍する環境省・規制庁準備室の姿があった。彼らは政党間協議の場に入り、参加議員を差し置いて一方的に主張し続け、規制委員会に一元化されたはずの放射性同位元素等規制を環境省に移したり、原子力防災会議の事務を環境省に移し、安全規制の根幹の一つでもある防災指針の策定の権限まで奪ったりしようと、最後まで、国益ではなく、省益のための抵抗を続けた。

 しかし、実務者のある種の良識が、そうした執拗な政府・与党の抵抗を排除し、根幹にかかわる部分については一歩も妥協せず、自公案原案の精神と中身を維持してくれたことは、素直に喜びたい。協議の前線で奮闘してくれた同僚の田中和徳、吉野両環境委理事他、全く新しい独立した規制組織誕生に貢献してくれた各位に感謝したい。

 大事なことは、国民の安全が実際に守られることであり、こうした規制行政を担う、真に安全のために資する有為な人材を育てることだ。
 世界に誇れる専門家委員を選び、各省庁のしがらみや縦割り、しいては「原子力ムラ」の影響をも徹底的に排除し、不当な圧力から完全に解放された、国民の安全本位の原子力規制体制が確立されることを、心から望む。