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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2011/09/10(土) NO.677号 

国際社会で日本を守り抜く

 6日の火曜日に成田を発ち、ワシントンに向かう。「第一回東京・ワシントン対話―3.11後の日米同盟」との会合出席、パネルディスカッション参加が主な目的だが、何人かの要人との会談も予定。

 同日6日の昼前にワシントン・ダレス空港着。昼過ぎ、財務省にブレイナード次官を訪ねる。5月にも会談した、キャンベル国務次官補の夫人だ。続いてFRBにて、イエレン副議長と会談。4年ほど前に、東京で私が講演をした小グループの中のお一人で、当時はサンフランシスコ連銀総裁。大変上品な女性学者だ。

 翌7日の午前中、SECのウオルター委員と会談。日本では、自見金融相や経済界の一部から、SECでも国際会計基準(IFRS)導入を先送りしているのだから、日本でも先送るべきだ、との声が根強くあるが、米国の本音を確かめたいと思い、会談を申し入れた。

 結論的には、SECとして、今後米国を含め世界的に1つの会計基準に収斂させるべきである、という基本線は全くぶれておらず、本年内に米国としての今後の段取りなどについてSECとしての結論を予定通り出す、との方針も変わっていない、ということがよく分かった。やはり、金融相や一部経済界の主張は後ろ向きであり、真に強い日本経済を作ろう、との意識に欠けている。また、民主党内、政権内でも、こうした問題への発言は皆無であるのが、経済に無関心、無頓着なこの政権の特徴。世界の動きについての正確な情報に基づいて、強い日本経済を作るために大いに政権内でも議論してもらいたいものだ。

 7日午後、いよいよ「東京・ワシントン対話」が始まる。初日は公開で、会場は一杯の300人以上の聴衆。主催者挨拶の後、前原民主党政調会長が基調講演。武器輸出三原則の見直し、PKOでの自衛隊の武器使用基準緩和、中国の「ゲーム・チェンジャー」としての行動への対応方針、など、従来からの彼の主張を展開。内容的には賛同する部分が多いが、問題は、民主党内、政権内をどのようにまとめ、それらの政策を実行していくか、だ。政府・民主党内では、早速異論噴出のようだ。普天間問題、TPP問題に強く触れなかったのも、気になった。

 続いて、3.11後の日米同盟に関するパネルディスカッションにて、神谷防衛大教授、シーラ・スミス外交問題評議会シニアフェロー、マイケル・グリーンCSIS上級アドバイザーらと議論。私からは、中国の興隆や北朝鮮問題を踏まえ、日米がもっと緊密に意見調整をして戦略を共有するように提案。特に、中国の影響力が強まる、モンゴルやミャンマーなどメコン地域国などに関する日米協力の必要性を強調。また、野田総理、鉢呂経産相、前原政調会長が揃って、将来的な脱原発を明らかにしているが、安全保障と経済に与える意味合い、影響を深く吟味した上の方針とは思えず、更なる議論の深化を提案した。

 翌8日、会議の合間を縫ってジム・ウェッブ上院外交委東アジア・太平洋小委員長(民主党)、前回の共和党大統領候補であったジョン・マケイン上院議員を、殆ど隣り合わせのそれぞれの議会オフィスに訪ねる。いずれも、中国の進出著しい中でのパワーバランスのシフト、日米の財政制約などを踏まえ、普天間の辺野古移転案を一旦見直すことを主張。深い考えに基づく主張であることがよく分かった。

 最後の「同盟関係と原発・核問題」セッションでは、日本は唯一の被爆国として核不拡散体制でのリーダー的地位を維持する一方、途上国での原発導入支援、日本の安全保障上の立場、電力料金の変動による日本経済へのインパクトなどを複合的に考慮しながら、冷静に、じっくり国民的議論をすべきとの意見があがった。結論的には日本は原発を廃止すべきではない、との考え方が米国側から出され、これを元に活発な議論を行なった。

 野田内閣は、こうした重要政策に関し、何らの与党内議論、国民的深い議論なしに決める事が分かり、手法は鳩山、菅内閣と全く変わらない。一国の針路はもっと慎重に詰め、そして哲学を持って大胆に決め、ぶれないようにしなければ、厳しい国際情勢の中で日本を守り抜くことはできない。

 夕方の便でロサンゼルスに飛び、深夜便で羽田に向かい、朝4時前に到着。朝一番の松山行きに乗る。羽田空港の国際化を進めることを自公政権時代に決めて、良かった。