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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2011/07/07(木) NO.667号 

安全ではなかった「安全宣言」

 昨日6日の衆議院予算委員会では、玄海原子力発電所の再開問題を中心に質問に立った。概要はテレビでもご覧になった方がいるかもしれないが、一言でいえば、「崩壊しつつある内閣」の恐ろしさを目の当たりにしたという感じだ。

 玄海原子力発電所の再開を巡って、全国民が注目している。特に私が焦点を置いたのは、6月18日に海江田大臣より出された談話「原子力発電所の再起動について」、通称「原発安全宣言」だ。その内容は、原発の安全性が確保されたと謳い、全国の原発立地自治体に対し、原子力発電所の運転再開を要請するものだ。

 予定では、この安全宣言の内容について細かく追及・検証する予定だった。しかしまず最初に、この安全宣言を菅総理は事前に了承していたか、と問うと、総理は「ちょっとどの資料なのかがはっきりしません」と呆けたような様子。委員会室がある種異様な雰囲気に包まれると、続いて菅総理は、「まずは本人に聞いていただけますか」と言い出す始末。委員会室は騒然となり、さすがに中井予算委員長も、「いやいや、あなたが聞いておったかどうか。本人はあなたですよ」と指摘。場内は失笑に包まれた。

 人類史上最悪とも言える福島原発事故が発生して、まだ4ヶ月弱しか経っていない。国民にとっても今なお生々しい悲劇だ。日本の将来を担う子どもたちの健康にも関わる問題だ。だからこそ、原発の再開には慎重かつ十分な安全の検証が必要だ。従来通りの安全基準でGOサインを出してしまった海江田大臣もさることながら、この総理の認識はあんまりだ。

 質疑の中で、総理は全原発のストレステストを行うことを表明した。安全宣言、原発再稼働要請を、既に3週間も前に出してしまっているにもかかわらず。順番がおかしいし、そもそも遅すぎる。

 伊方原発を抱える我々にとっても重要な問題だ。近隣住民の方々はとても心配している。中村知事も政府に対し、原発再稼働の条件として、国による安全基準の確立を求めている。私も、事故後すぐに、暫定的な安全基準をつくり、国内の全原発の見直し、ストレステストをすべきだった、と申し上げた。本来であれば、3月中にでもすべきことだったのだ。

 今回最も振り回されたのは、佐賀県の知事ら首長だ。彼らは安全宣言をふまえ、原発再起動に向けて必死の調整を行っていた。しかし、菅総理はその努力を嘲笑うかのように、安全宣言自体をあっさり撤回してしまった。菅総理にとって、国民に対する約束・宣言とは、その程度のものなのだ。

 知事らは、もう二度と政府を信頼しないだろう。他の立地県の首長らも、佐賀県のケースを目の当たりにしているので、政府の要請や保証には乗れない。日本の原子力政策は、今まさに暗礁に乗り上げてしまったのだ。

 国会議員は法律を作るのが仕事であり、被災者への補償金仮払いや二重ローン問題については、野党が知恵を出して一生懸命取り組んでいる。原発事故検証のための調査委員会法案や、原発事故被害者のための賠償制度法案についても、議員立法で調整しており、今まさに大詰めのところだ。

 動かない政府の代わりに、国民のために、被災者のために、今できることを、私の力の限り、精一杯取り組みたい。