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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2013/03/27(水) NO.756号 

失敗に負けない経済・社会を

 私が本部長代行を務める自民党日本経済再生本部は、週2〜3回のペースで精力的に会合を重ねており、昨日で通算第17回目。講師にベンチャーを育成する専門のスタートアップアクセラレーター、MOVIDA JAPANのCEO孫泰蔵氏をお招きし、ベンチャー育成支援に関する提言を頂いた。

 孫泰蔵氏自身、米国シリコンバレーで働いた経験があり、昨日の会議では数多くの示唆に富む話が聞けた。例えば「スタートアップ・ファースト」制度。政府や自治体の公共調達の一定割合を、創業3年未満の企業に優先的に発注しなければならない制度。

 この制度のお陰でアメリカでは、創立間もない新規企業の、主要な顧客が政府、という例が多数存在するというのだ。日本では、政府や自治体の仕事を受注できるのは、ある程度の実績がある老舗でなければならない。公共調達の受注自体が会社の信頼になったりもする。まさにあべこべだ。

 また、印象に残ったのは、参加議員の一人が、「開業率が上がるのと同時に廃業率も上がるのであれば、競争に負けて退場する労働者を、政府や孫さんのようなアクセラレーターは救いきれないのではないか」という問いに対する答えだ。

「シリコンバレーでは、会社が潰れても落ち込む暇もないぐらいにオファーが来る。事業として上手くいかなかった、イコールその人がダメ人間、ということにならない。シリコンバレーでは、失敗は信頼喪失にならない。失敗はむしろ貴重な経験と評価される。貴重な経験を経た人が欲しいということで、逆に評価が上がったりする。」

 日本では、「倒産」イコール「夜逃げ」のイメージがある。「恥」の文化の日本では、失敗は許されないのだ。しかし、大事なことは雇用を守ることではなく、雇用を生み出すこと。これは自民党と民主党の最大の違いのはずだ。

 孫泰蔵氏は、スマートフォンのアプリ「パズル&ドラゴンズ」の大ヒットで、わずか半年で株価が10倍以上にまで高騰し、一躍有名になったガンホー・オンライン・エンターテイメントの会長も務めておられる。まさに時の人だ。うなぎ登りの成功譚を彷彿させる。

 しかし昨日、孫氏が会合で配った彼の著書を読むと、20代の創業当初は、資金繰りのみならず社内の人間関係にも苦しみ、「いっそ死んで皆にお詫びしたい」と真剣に思っていたというのだ。彼だって苦悩と挫折、失敗を乗り越えての今があるのだ。

 失敗を恥じ、切腹して果てるのではなく、再びチャンスを得、再生できる国にしなければならない。それこそ、私が責任を負う「再生本部」の真の目的の一つだ。引き続き研鑽したい。