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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2012/01/23(月) NO.697号 

誰が「原発寿命60年」を決めるのか

 民主党政権における官僚支配が強まり、国民の声を背負った政治の強固な意志はいよいよ不在だ。

 先週の金曜日、私が座長を務める「自民党原子力規制組織に関するPT」を開催し、政府が今月27日に閣議決定、国会提出を目論む「原子力安全庁法案」などに関するヒアリングを行なった。

 政府案では、かつて民主党が3回も提出した議員立法やマニフェストで明らかにしていた「3条委員会案」、すなわち公取委のような独立行政委員会の形態は官僚主導で完全に葬り去られ、さらにIAEAの安全基準にことごとく反する、今回の事故の教訓を学ばない、独立性のない代物となっている。私がその対案をかねてから作成中であることは、メールマガジンでも度々ご紹介してきた。

 しかし、改めて今回のヒアリングを通じ、組織問題以外についても懸念すべきことが明らかになった。例を挙げれば、ニュース等でも報道された、原発の運転寿命を40年から60年に延長する事を可能とする案だ。細野大臣は年頭1月6日の記者会見で「寿命は40年」と明言したが、彼が米国出張で不在の時に突如、「20年を超えない期間で延長可能」と内閣官房の官僚から発表された。

 この事実自体問題だが、更に質問が集中したのは「20年を超えない期間」を、どこで定めるかについてだ。政府案では、実際何年延長するかは法律に書き込まず、政令で決めることになっている。これまた、民主党が野党時代に一貫して批判していた官僚主導の典型だ。政令は国会の同意なく、役所の都合で逐次書き換えが可能だからだ。

 もともと40年という数字に精緻な根拠があるわけでもなく、私も原発の安全運転の延長可能性が科学的にゼロとは断言できない。しかし、寿命40年と法律に定めるのであれば、その延長期間も国会が責任を持って科学的検証をし、法律で定めるべきではないか。延長の可否だけ大臣が決め、その期間は役人が事後的に決めるというのでは、あまりにも無責任だ。

 同じ「政治主導の消滅現象」は、民主党肝煎りの「国家戦略会議」にも見てとれる。消費増税を含む社会保障と税の一体改革や、TPPなど、国家戦略に関わる重要課題では全く出番がない。予算編成にも何の拘束力も持ち得ていない。小泉、安倍政権時代などにおいて、予算編成の基本方針を主導し、その具現化としての「骨太の方針」を閣議決定し、郵政改革や公務員制度改革などあらゆる改革のエンジン役となった経済財政諮問会議からは程遠い印象だ。

 消費増税を悲願とする財務省が、政策決定の主導権を手放したくないため、戦略会議の有名無実化を図っているとも言われている。「政治主導確立法案の断念」に象徴されるように、民主党は何らの反撃もできないまま、官僚の言いなりになっている。

 こんな政治主導不在、徹底した官僚支配の構図の下では、難問山積の日本における問題解決、国民の安心回復はいつまで経っても実現しない。一日も早く真の政治主導を取り戻さねばならない。