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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2013/09/02(月) NO.771号 

「規制の虜」を克服し、汚染水にも総力戦

 福島原発事故から2年半余。廃炉作業が遅々たる歩みであるばかりか、ここにきて、汚染水問題が深刻化している。事故発生後20日余りで高濃度汚染水が海に流出している事が発見されたが、その後応急措置をしたまま。毎日400トンもの地下水が原発施設に流入するとともに、ほぼ同量の汚染水が発生し、それを地上タンクに貯蔵。そのタンクからの汚染水漏れが明らかになっている。この問題は国内に留まらず、今や国際問題となっている。

 こうした状況下、先週28、29日、私達は異例の2日連続で自民党環境部会・原子力規制PT合同会議を開き、原子力規制委員会関係の平成26年度予算概算要求、ならびに定員要求、および関連事項について審議した。かねてから我々が強く主張し、原子力規制委員会設置法附則にも明定した原子力安全基盤機構(JNES)の廃止ならびに原子力規制委員会への完全統合問題が最大の焦点だった。合同会議での紆余曲折の末、官房長官の最終判断を得て、今臨時国会に統合法案を提出することで決着、予算概算要求も認められ、漸く実現することとなった。

 福島原発事故に関する国会事故調が「規制の虜」との表現で厳しく指摘した規制当局の「専門性の欠如」の解消に向けての第一歩が、JNESの規制委員会への完全統合だ。とりわけ、ここにきて大きくクローズアップされている福島第一原発の汚染水漏えい問題解決に向け、安倍総理が積極的かつ総力を結集して踏み込んで対処をするに当たって、JNESに所属している汚染水や核廃棄物などの専門家の力も規制委員会に取り込んで政府一体となって対処する、というメッセージは大きい。

 そもそもこのJNES統合問題は、我々は当初、昨年9月の規制委員会発足時からの統合、その後は遅くとも本年4月からの統合を繰り返し主張してきたものだ。しかし、今までどおりの規制体制に安住する官僚機構側の抵抗は強く、なかなか議論が前に進まなかった。

 8月28日の自民党合同会議では、ようやく政府側から将来的なJNES廃止・統合方針は明確にされたものの、そのための法案提出に関しては、我々が繰り返し主張してきたこの秋の臨時国会に、との具体的な時期が遂に最後まで明確にされず、参加者からは当局の煮え切らなさに対し、これでは概算要求全体も了とする訳にはいかないとされ、翌朝に仕切り直すこととなった。

 翌29日の朝、再開された合同会議での原子力規制庁池田長官、内閣官房からの再答弁は、「今臨時国会への(JNES統合)法案提出については確約できないが、・・・最大限努力する」と中途半端な回答。引き続き臨時国会への法案提出方針が示されないため、会議は再び紛糾。私からは、汚染水漏出問題の危機的状況を鑑みれば、総力戦に向けた組織統合がいよいよ重要であり、政府としてもっと危機意識を持つべきだ、と申し上げた。

 議論の末、原子力規制PT座長である私に菅官房長官との政治折衝が一任された。会議終了後、早速電話にて官房長官と協議、やり取りの結果、長官自らの責任において法案をとりまとめ、臨時国会に提出する、との決断をされ、一件落着した。菅官房長官の判断に、これまでこの問題に深くかかわってきた吉野・柴山両代議士、川口順子前参議院議員ともども深く敬意を表したい。

 安倍総理は、汚染水問題について、今後は東電任せにせず、政府が予算を使い、経済産業省、原子力規制委員会が中心となって前面に出る決意を表明しており、既に緊急対策、中期的対策を固めている。これら対策を含め、深刻な福島事故への対処策は、いずれも前人未到のものばかり。ここは、国内の知見、能力を総結集するとともに、外国からの力も借り、総力戦で対応し、福島県民、国民、そして世界の懸念の払しょくに努めねばならない。

 そのためにも、今回のJNESの原子力規制委員会への統合は、新しく、しっかりした原子力規制文化を作るための貴重な第一歩となるはずだ。もちろん、これは一つの小さな前進に過ぎず、強力な規制当局を創り上げるためには、さらにやるべき事が山積だ。一方、福島第一原発をはじめ、原発廃炉に向けては、「廃炉庁」創設を含め、万全の体制構築が急がれることに加え、バックエンド問題を含めた原子力政策全体についても確固たる体制の下に早期に再構築をし、我が国国民、および国際的な信頼回復を図ることが急務だ。