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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2012/04/07(土) NO.707号 

廃止する、を廃止する愚

 昨日の新聞を見ると、政府・民主党は、「税と社会保障一体改革大綱」に盛り込んでいた、今国会への「後期高齢者医療制度廃止法案の提出」を断念し、現行制度の修正案の提出を余儀なくされることとなったという。後期高齢者の大半を市町村国民健康保険に移し、その財政運営を都道府県に委ねる、という民主党提案の根幹部分を全国知事会が拒否したためだ。

 そもそも「後期高齢者医療制度の廃止」は、前回総選挙時の民主党マニフェストで、自公政権が導入した制度を批判して高らかに打ち上げたものだが、制度の中身をろくろく詰めず、「廃止する」と勇ましく言ったものの、新たな制度の導入に失敗、現行制度の微修正に終わりそうだ。

 後期高齢者医療制度は、我々の政権下で長時間掛け、うなぎ登りの高齢者医療費問題を100%は解決できないものの、何らかの抜本改善策を導入しなければ、高齢者医療、ひいては医療全体が高齢化によって運営不可能になってしまう、と悩んだ末に到達した「当面の最善策」だった。保険料負担が上がってしまう高齢者のケースもあって、導入直後から沢山のお叱りを受け、その対応に追われた。私も地元松山などで随分怒られた。しかし、我々は矢継ぎ早に改善策を導入して対応し、今日では、殆ど怒られる事もなくなり、制度は定着しつつある。しかし、民主党政権はマニフェストに拘り、あくまでも現行制度の廃止と、負担構造の変更を進めようとしたため、遂に関係者の猛反対を前に、現行制度の多少の変更で行くしかなくなった。実行可能な代案なしに、単に「廃止!」と言っても国民を惑わすだけで、制度自体は全くうまくいかない事が良く分かったはずだ

 同じように民主党がマニフェストで廃止を訴えながら、廃止方針を断念し、これまた現行制度の改善をすることになったのが、障害者自立支援法だ。民主党は、応益負担(定率負担)制度などを理由に、我々が2006年に導入した障害者の自立を目指した新たな法律の廃止をマニフェストで唱え、政権交代後、長妻厚労大臣が同法の廃止を明言の上、廃止を条件に違憲訴訟原告団と和解までしていた。代わって「総合福祉法」なるものを制定する事を約束していたが、先日、野田内閣は、廃止法案を出すことなく、障害者自立支援法の改正案を静かに閣議決定、国会提出してきた。法律の名称も、略称「障害者総合支援法」と、大して変わらず、難病をこの法律の対象とするなど、多少の改善は行われているが、殆ど微修正程度だ。竜頭蛇尾の典型だ。

 ここで誠に許せない事は、私も立法作業に深く関わり、2008年に国会提出した、国や地方公共団体に障害者が作った物品やサービス購入を促す議員立法、いわゆる「ハート購入法」について、民主党は野党時代も、与党になってからも、「自立支援法を廃止するまでこの法律は通さない」と、自立支援法とは何も関係もない議員立法を4年間も店晒しにし、障害者の就労機会を奪ってきた、という事だ。

 政権を担当する事の重みや責任を今でも殆ど感じていないのではないか、と思われる事の連続の民主党政権。100点満点の制度などはなかなかない。大事な事は、絶えず少しでも暮らしに関わる制度を改善し、一歩でも二歩でも前進する事だ。ただ単に、政権のやっている事を否定し、廃止を唱えても、実行可能な代案を導入しないと、国民の暮らしは良くならない。

 日本の抱える問題は多く、深刻であり、残された時間は少ない。ならば、現実的な答えを次々出さねばならず、派手な言動だけでは政治の責任は全く果たせない。我々政治家は、この自覚を深くして行動しなければならない。