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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2012/10/04(木) NO.736号 

仏に魂を入れよ…霞が関支配を排す

 先の通常国会で政府・与党が我々の案を丸呑みし、9月19日に正式発足した原子力規制委員会。福島原発事故への深い反省から生まれた国家行政組織法第3条に定める独立行政委員会として、独立性の高い、専門家プロ組織として、厳格な原子力安全規制を担ってもらうはずだ。しかしこのままでは、「仏作って魂入れず」となりやしないか、懸念が日に日に募っている。

 すなわち、これまでの霞が関の動きを見ていると、独立性や専門性に関し、法案審議の過程で我々が明らかにし、法律にも明確に示してきた我々「立法者の意思」の実現が、霞が関支配の論理で歪められつつあり、それを阻止しようとするどころか追認するだけの民主党政権の無策振りを見ていると、先行きが極めて心配な情勢なのだ。「霞が関支配を排し、仏に魂を入れよ」と言いたい。いまだに自宅に戻れず避難生活を余儀なくされている福島の被災された皆さんの思いをなんと心得るのだろうか。

 原子力規制委員会は、国家行政組織法第3条に定める3条委員会として、原子力安全規制に関する法律に基づく「執行」を、いかなる省庁の指揮命令をも受けずに独立して行う機関として誕生させた。従って、総理であろうとも、いかなる大臣であろうとも、そして他の省庁の役人も、原子力規制委員会の職務の中身について口をはさむことはできない。

 しかし、そうした法律の精神を、「霞が関の論理」がじわじわと侵食しつつあるのが見え隠れし、心配が募るのだ。先日、我がスタッフが原子力規制員会に資料要求をしようとして国会内にある各省庁の「国会連絡室」に電話をかけようとして発見したことは、そもそも原子力規制委員会には、同じ独立した3条委員会である公正取引委員会が当然のように設置している「国会連絡室」が設置されていない、ということだ。おまけに、スタッフが規制委員会に直接連絡して資料請求した際、「今後は、規制委員会の件に関しては、環境省の国会連絡室に連絡すれば対応する」と言われたという。驚いた。内閣府や経産省の国会連絡室に「公取委について教えてほしい」というようなものだ。

 環境省はあくまでも妥協の産物として法律の見直しにより内閣府に移管するまでの3年間、「軒を貸す」こととなっただけで、原子力規制に関する法的権限は皆無であり、独立性を担保するためには規制委とは不要な接触もしない、というのが当然だ。我々が法案作成、成立の苦労をし、抜本改革のための独立した原子力規制委員会を作ったのに、霞が関はその独立性を全く無視だ。

 さらに、組織的に専門性を高めるため、我々は法律で原子力安全基盤機構(JNES)の規制委員会への統合を定めた。附則第6条4項にはっきりと明記されている事だ。しかし、霞が関はそれにも猛抵抗している。

 保安院が専門性不足のために電気事業者との逆転現象、即ち「規制の虜」現象が起こったことを国会原発事故調査委員会も指摘したが、一刻も早く統合すべきだ。しかし、原子力規制委員会事務局幹部や内閣官房の原子力規制組織等改革推進室幹部に、その進捗状況を聞いたところ、改めて霞が関が国会軽視、法律軽視をしようとしていることを知り、耳を疑った。

 すなわち、準備室側は「約500人いるJNESの規制委員会への統合は、定数管理上、きわめて難しい情勢だ。総務省からは、『スクラップ・アンド。ビルド』でやってくれ、といわれている。そうなると事務局(規制庁)職員全員をスクラップしないといけないくらいで、困っている」と涼しい顔で言う。事実上、統合はほとんど無理です、と言わんばかりだ。我々は、この9月の規制委員会発足と同時にJNESは統合しなければ、規制組織の専門性を格段に高め、電力会社に頼る規制体制から脱却した、とのメッセージを世界に送れない、と強く主張した。政府・与野党間では、「遅くとも2013年4月には統合」とのコンセンサスは得ている。

 政治がこうした霞が関の体質を強力に変えない限り、国民の原子力に対する信頼は一切回復しない。これこそ「政治主導」であり、霞が関の言いなりになる民主党政権では不可能であることは、とうの昔に証明されている。「安倍新自民党」は次の政権に向けて「真の政治主導」を国民に約束し、その「実現力」を周到に示していくことが必要だ。