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2018/07/16(月) NO.815号 

真に子どもを大事にする国を目指して

去る12日(木)、昨年12月から数えて20回目の「児童の養護と未来を考える議員連盟」を開催、先の船戸結愛ちゃん虐待死事件等を受け、本年5月に「ルポ児童相談所」との著書を出版されたばかりの朝日新聞大久保編集委員から、「児童相談所のあり方について」のお考えを聞く。

その議連会合の冒頭、厚労省子ども家庭局長が、7月6日に都道府県等児童相談所設置自治体に対し、「都道府県社会的養育推進計画の策定要領」(以下「策定要領」)など4種類の局長通知を送付した旨を報告した。
 
今日のこの「独り言」では、極めて大事な問題なので、多少長くなりますが(おそらく、これまでで最長の「独り言」)、ここまでに至った経緯と私の考えについて、まとめて説明させて頂きたい。
 
親からの虐待などを受け、保護を必要とする子どもが昨今増加の一途だが、そうした子どもを救うはずの児童福祉法が長らく十分機能してこなかった。終戦直後、道にあふれる浮浪児、すなわち戦災孤児を収容する発想で昭和22年に制定された。しかし、その後の社会構造の変化に伴う家族機能の変容などから、その制度疲労が指摘されてきた。そうした中、私が厚生労働大臣在任中の平成28年、全会一致で、戦後初めての抜本改正を行った。
 
「子どもの権利」、「子どもの最善の利益優先原則」、「家庭養育優先原則」等の新たな理念を導入し、29年には司法関与を強化、さらにそれら改正法の理念実現のために昨年8月には、いくつかの数値目標も含めた「新しい社会的養育ビジョン」(以下「ビジョン」)を取りまとめた。
 
各都道府県は、旧児童福祉法の下で、それぞれ児童養護に関する計画を作成していたが、児童福祉法改正を受けて既存の計画を全面的に見直す必要がある。その見直しをどのような考えに基づいて行うべきかのガイドラインを示すのが厚労省の「策定要領」だ。
 
昨年12月22日、社会保障審議会児童部会「社会的養育専門委員会」に示された厚労省当初案は、改正児童福祉法における新たな理念や「ビジョン」の考え方から大きく乖離したもので、到底受け入れられない内容であった。戦後初めての抜本的な法改正が全会一致で行われたにも拘わらず、そこに示された新たな理念を踏まえない、これまでの路線を大きく変えようとはしない「策定要領(案)」には大きな失望を覚えた。マスコミでも、「厚労省、都道府県に数値目標要求せず」というように、「ビジョン」で示された里親委託率等の数値目標の都道府県計画における設定を不要、との後ろ向きな部分に関する報道ばかりだった。

以来8か月間近く、私たちは改正児福法と「ビジョン」に則って徹底的に戦った。厚労省や一部議員は、児童養護施設の立場や児童相談所の現場への気遣いなのか、なかなか考えを変えようとしなかった。私たちは、厚労省子ども家庭局との間において、あるいは、議連の議論の場において、長く、熱い議論を行ってきた。
 
しかし、議連所属の多くの国会議員、国会外のこの問題の関係者、関心を持つ皆さま、マスコミ関係者などの粘り強い主張と応援があり、なおかつ特記すべきは、船戸結愛ちゃんの死を受けて人々の心に等しく沸き起こった、これ以上の児童虐待は許せない、との国民的な熱い思いの後押しがあり、厚労省から先週発出された「策定要領」は、当初とは様変わりとなり、改正児童福祉法や「ビジョン」の理念や考え方にほぼ則ったものとなったのだ。もちろん、都道府県は里親等委託率の数値目標、その期限を明確に設定し、国はその進捗状況を毎年フォロー、評価し、公表もされることとなった。
 
この半年間余り、私は自らのエネルギーのおそらく半分程度をこの問題に注ぐほどの長くて険しい道のりだったが、全会一致で成立した立法府の意志が貫徹され、戦後初めて、日本を真に子どもを大事にする国への本格的な脱皮とも言うべき大きな一歩を踏み出すこととなったことを嬉しく思う。

様々な論点があったが、最後まで厚労省などとの間で意見の相違があったのは、主に以下の2点。

最大の争点は、上記の通り、里親等委託率に関する数値目標とその期限の設定の是非、であった。改正児童福祉法が「家庭養育優先原則」を明確に定めたことを受け、「ビジョン」では、「乳幼児に関し、3歳未満は概ね5年以内に、就学前までの幼児は概ね7年以内に里親等委託率75%以上」の実現を目指し、「学童期以降では里親等委託率50%以上を概ね10年以内」を実現する数値目標が提案されている。

これに対し、厚労省の当初案では「国全体としては、できるだけ早く75%、50%以上を実現できるよう、都道府県を支援する」との極めて曖昧な表現にとどまり、都道府県には目標も期限も要求しない、との体たらく振り。立法府の作った法律を粛々と執行し、その目指すところの実現に向け、専ら努力するのが行政であるにも拘らず、だ。
 
平成28年度末の全国平均の里親等委託率が18.3%であることから75%達成は土台無理、との声や、地域性を無視した、全国一律の数値目標設定は受け入れられない、と言った、里親の増加によって入所する子どもが減るかもしれない、との危機感を募らせた児童養護施設や、一層繁忙を極めるであろう児童相談所の現場の声などをバックにした、と思われる慎重論が議連でも繰り返された。
 
この間、議連の勉強会においては、改正法の下で自ら変革努力を始めている乳児院や児童相談所長、里親を推進するフォスタリング機関、特別養子縁組斡旋機関、等々、「家庭養育優先原則」を実践する方々の説得力ある現場からの報告などにより、徐々に理解が深まって行った。
 
最終的に厚労省と合意した「策定要領」の表現は、「都道府県においては、これまでの地域の実情は踏まえつつも、1.子どもの権利や子どもの最善の利益はどの地域においても実現されるべきものであること、及び2.上述した(国全体の)数値目標を十分に念頭に置き、個々の子どもに対する十分なアセスメントを行った上で、代替養育を必要とする子どもの見込み等を踏まえ、数値目標と達成期限を設定する」となった。都道府県が考慮すべきは、上記二項目だけ、であることを明確にしたのだ。厚労省は、最後まで数値目標や期限設定に際しては、地域の実情を踏まえて設定する、と主張したが、私たちは、子どもの権利や最善の利益に「地域性」はあり得ず、現状の里親等委託率が低いから今後の数値目標も低くて良い、ということはあり得ない、と反論。今後の日本では、全ての子ども達は、改正児童福祉法の下で等しくその権利が守られ、最善の利益が優先され、その面での地域のバラツキは許されない。厚労省も最後はこの考え方を認めることとなった。
 
もちろん、この数値目標達成が自己目的化し、子ども達が機械的に扱われることは許されず、あくまでも子どもの置かれた個々の事情を踏まえ、十分なアセスメントをそれぞれに行った上で、具体的な措置は取られるべきものであることも明らかにしている。
 
さらに、「国としては、・・・・・、委託率の引き上げの進捗と子どもの状況について丁寧にフォローの上、都道府県の代替養育を必要とする子どもの状況や里親等委託の取組状況を評価し、支援のあり方や進め方について検証する。進捗状況は、毎年、公表する。」とされた。国は、これまでのように、こうした問題をすべて地方任せにして、実態把握すらしない事は今後は許されず、常に全国に目を配り続け、子どもの健全育成の権利が津々浦々で守られるようにしなければならない事、都道府県の代替養育の実態は、国民全体に明らかになる事、なども明確にした。
 
もう一つの大きな争点だったのは、施設の小規模化、地域分散化の問題であり、より具体的には、大舎と言わる大きな児童養護施設本体を改造した、いわゆる「ユニット型小規模施設」を今後とも認めるか否か、だった。
 
「ビジョン」に先立ち、我々が野党だった平成23年に「社会的養護の課題と将来像」との今後の社会的養育に関する政府の考え方が示された。その際、「里親1/3、グループホーム1/3、本体施設でのユニット型1/3」との数値目標が設定された。
 
しかし、改正児福法や「ビジョン」では、「家庭養育優先原則」が明確化され、養育の優先順位は「『家庭』(実の親)→『家庭における養育環境と同様の養育環境』(特別養子縁組、里親)→『できる限り良好な家庭的環境』(小規模かつ地域分散化施設)」であり、今後の施設は、措置前の一時的な入所に加え、高度専門的な対応が必要な場合が中心となるべきで、その高機能化、多機能化が期待され、地域で新しい役を担うことが予定される事となった。従って、小規模施設は、あくまでも地域に分散された、地域に溶け込んだものであるべきだ。
 
しかし、残念ながら、統計上、施設の「小規模化」は進んできているように見えるが、その中身を子細に見ると、シェア的には、実は「本体施設のユニット型」が増え、相対的に「地域分散型小規模施設」は減ってきた。改正法にある「できる限り良好な家庭的環境」の「小規模かつ地域分散型施設」の実現とは全く逆方向に向かってきていたのである。
 
現状、施設に住む子ども達の大半が定員20人以上の大きな施設におり、その中でユニット型が増えていることを踏まえ、今回、厚労省との間での合意は、過渡的に本体施設のユニット化を経てから地域に独立していく場合であっても、概ね10年程度で地域分散化及び多機能化・機能転換を、ごく一部の例外を除き、全面的に実現する「計画」を策定することを条件とした。加えて、昨今注目されているように、施設内の子ども同士の性暴力の横行は、大舎、に加え、事実上大舎と変わらないユニット型施設の居室を中心に行われてきた。子ども同士の間での支配的な人間関係を背景とした行為として後を絶たない性暴力を根絶するためには、入所児童数をずっと少なくし、職員配置を厚くすることに加え、ユニット型であっても、完全独立した合築型の複数ユニットで、少なくとも1ユニットの定員は将来的には4人程度でユニット数も4単位程度までとしなければならない、とした。
 
今回、「策定要領」とともに都道府県等の児童相談所設置自治体に送付された局長通知は、1.「乳児院・児童養護施設の高機能化及び多機能化・機能転換、小規模かつ地域分散化の進め方」、2.「フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)及びその業務に関するガイドライン」、3.「一時保護ガイドライン」、だ。いずれも、改正児福法、「ビジョン」において示された新しい養育を実現するための重要な道しるべだ。
 
また、先月の「骨太の方針2018」においては、議連の先生方や公明党などからの強い応援の結果、市町村、児童相談所の人員、専門性の強化、一時保護の改善、特別養子縁組・里親支援の整備、施設の小規模かつ地域分散化、施設職員の配置基準の強化等、社会的養育の迅速かつ強力な推進に関し、力強い文言が初めてまとまって入った。
 
2年連続、全会一致の児福法改正は画期的だった。しかし、結愛ちゃん事件やその他にも打ち続く虐待事案をみると、法に定める見直し時期を待たずして法改正、制度改正をすべきではないか、との気持ちに私はなっている。自民党議連や、今回立ち上げた超党派の勉強会においても、同様な声が盛り上がりを見せている。
 
最も重要と思われるのは、児童福祉司等の専門性を担保するための、児童福祉関係職の国家資格化ではないか。児童相談所の児童福祉司の為だけではなく、市町村、フォスタリング機関、児童家庭支援センター、特別養子縁組斡旋機関、施設などで働く人たちの能力担保に有効であるとともに、弁護士、医師、警察官などが資格を保有することで、多職種連携が進むのではないか。

また、法律知識に基づいた確かなケースワークを行うためには、やはり常勤弁護士の必置は不可欠。すでに実施済みの明石市の社会的養育担当の若手弁護士の話をお聞きし、改めて思いを深くしている。警察との連携もこれによってより的確に行われるようになり、結果として、貴重な命を守る事となろう。同様に、常勤医師の児童相談所への必置も重要だ。

さらに、何と言っても、児童相談所も児童福祉司も少な過ぎる。大臣時代から強く主張していたが、中核市、特別区はやはり児童相談所を法律上必置とすべきだ。都道府県の児童相談所の負担を少しでも軽くし、懸案の児童相談所内の介入と支援の機能分化を推進するためにも、特に中核市での児相必置は、もはや待ったなしだ。

その他、前回法改正の際には、子どもや家庭に最も身近な市町村の職員のうち、研修対象に新たにしたのは、要保護対策地域協議会調整機関に配置される専門職のみ。ここは広く、子ども家庭担当職員は研修対象とすべきだし、児童家庭支援センターや、施設の家庭支援専門相談員(ファミリー・ソーシャルワーカー)も同様に対象とすべきではないか。

いずれにしても、今回の「策定要領」などの一連の文書発出によって、改正児童福祉法と「ビジョン」に則った、これまでとは全く異なる、新しい社会的養育の態勢整備のスタートが切られた。一日も早く態勢を整え、わが国が、真に子どもを大事にする国に生まれ変わり、全ての子ども達が健全に養育される国になる事を願うとともに、私も引き続き全力投球をしていく覚悟だ。

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