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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2020/07/03(金) NO.837号 

次なる感染症危機に早期に備える

昨日、自民党行革推進本部としての8つの分野での提言を菅官房長官に申し入れた。

8つの分野とは、以下の通りだ。
1 デジタル規制改革
2 統計改革・EBPM
3 大規模感染流行時の国家ガバナンス見直し
4 経済構造改革
5 官民ファンド見直し
6 防災体制見直し
7 公務員制度改革
8 国立大学法人改革

中で、「大規模感染流行時の国家ガバナンス見直し」と「経済構造改革」の2つのテーマは、新型コロナ感染症危機を受けて追加したものだ。緊急事態宣言下の状況を含め、国民が感じとったであろう不安や不満を考えると、国家のガバナンスの再構築が必要だ。

そしてあらゆる前提条件が変わる中、働き方も企業経営手法も何もかも、グローバルな大きな変化を前に、労働法制を含め、行政、すなわち中央政府も地方政府も今のままで良いはずはない、新たな姿を提案しよう、と皆で議論をした結果、その他6つのテーマもポストコロナの新たな形を含めて議論することとし、昨日、政府に対して提言を行った(https://www.jimin.jp/aboutus/organize/gyoukaku/)。

その中で、感染症危機時の国家ガバナンスに関しては、一足先に先週の金曜日に記者会見を通じ提言を世に明らかにしていた。(「私のHP6月26日付お知らせ参照」)


本年初来の新型コロナウィルス感染症危機は、約120年前の明治30年の伝染病予防法以来のわが国の感染症防護体制の抜本的構造改革の必要性を浮き彫りにした。当時の想定する感染症はコレラなどの疾病であり、各地の保健所が感染源を「点」で抑え、徹底隔離さえすれば抑え込めることが可能であり、その任は保健所が一手に担い、その「保健所中心主義」が基本的に今日まで続いている。

ところが、今回の新型コロナウィルス感染症は、「点」では抑え込むことができず、「面」どころか「3次元」で感染がまん延した中にあっては、保健所だけでは手に負えず、地域医療との一体的、有効な対応もできない中、総理をしてPCR検査等にみられるように、「目詰まりがあった」と認めざるを得ない、感染症防護の国家ガバナンスが十分機能していなかったことが明確になった。

感染症まん延に関する個々のケースの基本的データも手書き、ファックス、という前時代的手法で中央に集めることも容易ではなく、データが共有できないがゆえに、新型コロナウィルス感染症に関する論文も、先進国の中でも圧倒的に少ない、という実態が明らかになってしまった。

提言においては、感染症防護に関する有事の国家としての司令塔機能を、指示命令系統を明確化して格段に強化、感染研・地衛研・保健所等の検査を含めた地域医療との一体的再構築、感染症情報収集の一元化と適切な公開や検疫体制抜本整備などを提言している。

明治以来120年にして初めてこれまでのアンシャンレジームから脱却し、どのような感染症が来ようとも対応可能となり、国民が安心して頂ける体制に組み直そうという試みだ。

この作業は、急ぐ。「検証は新型コロナウィルス感染症が収束してから」、という事がいつの間にか当然かのように言われているが、私は、遅くとも来年の通常国会で関連法の改正を行い、新たな体制に移行しなければ、今回以上の危機を克服することはできない、と強く思っている。

今は法改正作業に手間をかけるより、第二波、第三波の備えに全力をあげたい、という事を理由に、法改正を先延ばししようという考えが聞こえてくるが、私は、第二波、第三波に備えるためにも、可及的速やかに私たちの提言をベースとし、議論を深め、早急に法案化作業に取り掛かり、来年の通常国会での成立を目指すべき、と考える。

理由は、主に3つだ。まず第一に、指揮命令系統を明確にしながら国家の司令塔機能を強化しよう、という機運があるうちに、有事の際の国と地方との関係の再構築すべきで、次なるまん延に間に合うよう、急ぐべきではないだろうか。

第二には、今回PCR検査の実数把握でも苦労したように、基本的データはしっかり一元的に収集すべきだ。既に、厚労省は、HER-SYSというデータ収集システムを回し始めているが、基本的に法律での義務化ではない、予算措置でスタートした。そのため、現状では、地方から中央にあげる必要があるデータ項目109項目のうち、感染症法で義務付けられているのは27項目だけだ。となると、個人の医療情報の提供に関する「2000個問題」(自治体ごとに異なる保護条例を持っている事)を克服するには法的な除外規定が必要であり、かたがた事務負担も考えると、確実な情報収集のためには、法律で情報提供を明確に義務付けることだ。

第三に、軽症者、無症状者に滞在して頂くためのホテル等の施設の法的位置づけも今は不明確であり、準医療機関扱いに法的根拠を持たせないと、財政支出するにも安定性に欠く。

現感染症法は平成10年にできた法律で、比較的新しいゆえ、抜本改正といえども、改正作業は左程過重ではないのではない、と法律の専門家から聞いている。

感染症法以外に、厚労省設置法、検疫法、内閣法、新型インフルエンザ特措法、などの改正が必要だ。次なる、そして、今回以上に致死率が高い感染症等に備えるためにも、是非今回の自民党行革本部提案を、早急に実際の法改正、制度改正に結び付け、万全の備えをすべきと考える。