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毎日新聞夕刊-2002年4月25日 掲載記事

金融庁の特別検査 だめな銀行に退場を迫り、間に合う所に公的資金を!

〜特集ワイド2 今週の「異議あり!」〜

不良債権問題の「切り札」と言われた金融庁による大手銀行13行への特別検査。今年3月期の不良債権処理額は7兆8000億円に達し、柳沢伯夫金融担当相は「公的資金による補強は必要ない」と胸を張った。これで問題は解決へ向かうのか。自民党の塩崎恭久衆議院議員は「何も変わっていない。問題の先送りだ」と批判する。【五十嵐英美】

<特別検査をどう見ますか>
◆マイカルの破たんで、昨年9月にやっと特別検査という言葉が出てきましたが、1月からやると言っていたのを昨秋に前倒しでやったのは、小泉純一郎首相が強く推し進め、金融庁が重い腰を上げたのです。
 しかしそれでも金融庁の動きが鈍いのを見て、私たちは2月、小泉さんに「この国の経済を救える人はあなたしかいない、ご決断を」と迫った。金融庁の公式見解を信じ過ぎている、危機は確実に高まっており早急の処置が必要だと申し上げました。小泉さんは黙って聞いておられた。その後、日銀総裁を会うなどずいぶん動いておられたので、期待をしていました。
 けれど、不良債権処理損額を1兆9000億円上積みした程度で終わりました。不十分です。経営の健全度を示す自己資本比率も全行が基準の8%を上回ったといいますが、実態はもっと低い。市場は全く信用していません。結局、問題の本質に切り込めず、先送りされた。金融システムへの信頼は回復していない。そして最も必要だった、金融監査当局への信頼回復のチャンスも失われました。

<問題の先送りとは>
◆これまでの企業破たんの際の債権回収実績と銀行による引き当て状況を見れば分かります。今、小手先の対応で少し株価が上がり、みんな考えが緩んでもう破たんがないような気分になっていますが、ほとんど何もやっていないのですから実態は変わっていません。
 2月時点で、株価が100円以下などのいわゆる破たん予備軍とされる上場企業の負債総額は約40兆円。単純に言って、40兆円のうち半分の破たんに備えるとすると、それだけで20兆円いります。それに対して銀行は何兆円引き当てているでしょうか。大幅な引き当て不足と言われる理由はここにあります。
 例えば破たんした「そごう」の場合、負債総額1兆8000億のうち1兆5000億円は無担保債権でした。そのうち戻ってきたのは、なんと5%です。担保債権である3000億円が全部戻ってきても、全体の75%が戻らない計算になる。仮に銀行が5%の引当金を積んでいたとしても、新規に70%のロスが出るということです。そごうはまだ大丈夫だろうという第2分類(要注意)なのにです。こうしたケースが次々に出て来て、日本の銀行システム全体のぜい弱性を露呈しています。
 先日、英国金融庁の長官が来日し、話をしたのですが、英国の全銀行資産における日本の銀行のシェアは88年には24%あったのが、00年には5%になったということです。英国の銀行は日本の銀行に対して債権を持つことを縮小しています。先行きが危ないからなるべくカネを貸さなくなっている。米国の格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズは日本長期国債を「ダブルA」から「ダブルAマイナス」に格下げした。先進7カ国では単独で最低です。

<危機的状況ですね>
◆貸している方も借りている方も不良債権処理に時間とエネルギーを取られている。このままでは銀行は不良債権の管理に追われてしまい、企業や産業を支援するという本来なすべき業務が果たせません。外資系の金融機関には日本の銀行、特に主要銀行から転職した人が多い。日本の優秀な人材が給料がよく、やりがいのある仕事のできる外資や海外に流出しています。後ろ向きのことばかりやっていては人が出ていってしまう。「イチロー現象」です。

<どうすれば?>
◆この経済危機を克服するには正面突破、王道を歩むしかありません。銀行のバランスシートの貸し出しという資産価値を、企業が生き残れるかどうか、一つ一つきちんと、正直に、しかも堅めに見ろということです。それにのっとって、だめな銀行には退場してもらい、間に合う所には公的資金を注入し、できる所は自分で資本を調達し、不良債権とは金輪際おさらばしてビジネスモデルを変える。政府主導で銀行を整理し、産業を再生するしかありません。
 先日、竹中平蔵経済財政担当相とシンポジウムで討論する機会がありましたが、竹中さんは「当局(金融庁)がこれで大丈夫だと言うなら我々はもう何も言えない」と言っていました。今後は債権放棄を受けた企業が本当に再建可能かなど4点について経済財政諮問会議で議論し、金融庁に働きかけていくということでした。しかしそれらはまさに3月末までにやらなければなかったことでしょう。当たり前のことを繰り返し言っているだけに聞こえます。