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NIKKEI NET 特別コラム「ザ・フロントランナー今週の視点」第8回-2002/03/26 号

政治システムの改革なくして再生なし

政府が「3月金融危機回避宣言」を行なった。ペイオフ準備も「銀行については出来上がった」と断言している。事実から目をそらす驚くべき見解だ。過去の政策との不整合を恐れる余り、いつまでも実体を正視しないこの姿勢こそ、わが国官僚機構の特徴であり、日本再生の障害となっている。ハンセン病訴訟での控訴断念という官僚的発想を超越した小泉首相の政治的潔さを、今こそあらゆる分野で発揮すべきだ。

去る3月13日、自民党国家戦略本部・国家ビジョン委員会において昨秋から私達が検討してきた新しい政策決定システムに関する最終報告「政治システム New Decision-Making System 」を小泉首相に手渡した。

要は、昭和37年以来の慣行である自民党・与党の事前承認制を廃止し、首相主導、内閣主導で政治家たる大臣等が、国民との約束事であるはずの総選挙等の選挙公約を具現化する政策を国家戦略としてタイムリーに決め、これまでの官僚主導を排除し、真の政治主導を確立しよう、というものだ。

上記のような金融・経済のみならず、社会保障、教育、外交等々あらゆる分野で「司令塔不在」のために、国民は日本丸が誰の船頭の下にどこへ向かって航行しているのか不安に駆られて早10年余りだ。日本の国益をきちんと示し、それに則って諸問題を包括的、タイムリーかつスピーディに判断、対応する司令塔としての役割こそ総理大臣が担うはずなのである。各役所や与党がバラバラに決めた事に追随した結果こそ、今日のわが国の現情だ。小泉首相はこうした古い仕組みを壊し、新しい日本のガバナンス(統治)機構を築き上げる大仕事を担っている。

ただし、与党と内閣が一体化し、政治家たる大臣等が物事を決め、それが結果として国民の幸せに資するようになるまでには、歴史的に根深く、克服容易ならざる難問を数々乗り越えねばならない。

まず我々政治家の質を向上させねばならない。これなくして国民から信頼される政治主導はありえない。その解決策のひとつは公正なる予備選挙だ。また、全ては「人」次第で、大臣等は派閥や当選回数に関係なく能力本位で首相自身によって選任される事は必須の条件だ。これについては党内に「人事評価委員会」を設置する事を提唱している。更に重要な事は、首相や大臣等が、官僚機構から独立した情報とアイディア源を持ち、彼らの判断を補佐する官僚以外の人々が常時回りにいることだ。現状のように、大臣等が四六時中官僚に囲まれていては過去の呪縛からは解放されない。現状打破のためには、首相については英国を参考に常勤の公務員である「日本版ポリシーユニット(政策官室)」を設ける事を提唱し、各大臣も同様の政策官を設ける事が決定的に重要だ。

成功への最大の決め手は政治家と官僚との関係の改善ではないか。国民にとって「優秀な官僚」が絶えず任に当たってくれている事が必要だが、その「優秀さ」は過去の資格や学歴ではなく、その時々の問題解決能力における優秀さのはずだ。そうした優秀さに裏打ちされたアイディアを踏まえた上で、政治家として首相や大臣等が独自に決断することが大事なのだ。

オーストラリアでは首相を筆頭に大臣は役所ではなく国会議事堂内の大臣室に5〜7人の政治任用の常勤アドバイザーと共に執務している。官僚は大臣の要望に応えてプロとして自ら最良と思う政策提言をしているが、最終決断は大臣が自分のアドバイザーと共に行い、官僚も納得している。理由は「大臣は失敗すれば選挙で落ちるのだから、我々役人ではなく大臣が政策の最終決定を行なうのは当然」と言う訳だ。しかし、そのオーストラリアでもここまで来るのに15から20年はかかったと言う。日本に一刻の余裕もないことは明らかだ。