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NIKKEI NET 特別コラム「ザ・フロントランナー今週の視点」第10回-2002/06/18 号

新たな政治システム下での経済政策

カナダ・カナナスキスでのサミットを控え、経済財政諮問会議が「骨太の方針」をより具体化する総合的な経済構造改革政策、いわゆる「第二骨太」をまとめた。しかし、「経済社会の活力」を最重視するとしながらも、「実効税率引下げの一方課税ベースは拡大」、「広く薄い負担」、「税制改革と歳出改革は一体」など、制約事項を張り巡らせ、果ては「財源なくして減税なし」とまで言い切り、財政再建に逸る財務省が、景気対策を要求する他の役所と与党を抑え込んだ格好だ。来年度予算も「実質的に平成14年度の水準以下に抑制」と、デフレ型にするというが、構造的なデフレと過剰債務という日本経済が抱える根深い問題は、アリバイ程度の年度内小幅先行減税と新重点4分野への財政資金の集中投下だけでは解決されない。ほぼ時を同じくして公表された政府の税制調査会の税制改革の基本方針と合わせ考えると、とても日本政府が本気で経済を立て直そうとしているとは思えない、というのが正直な印象だ。

もっとも、「国家の台所」を預かる財務省が財政再建を何よりも強調するのは、大国として民主主義の健全性を保っている証左でもあろう。問題は、国家の司令塔が中・長期的にきちんとした国家の将来ビジョンを描き、そこへ向けて適切かつ有効な政策を優先順位を過たず、責任を持って打出す事が重要だが、それができていない。このままサミットで公約をしても日本再生に関し世界を説得できまい。

なぜこのような事が繰り返されるのだろうか?結論を言えば、過去の政策の過ちを自ら認め、新たな領域を冒険してでも切り開くことが、万国どこへ行っても得意でない官僚の政策決定上の影響力が日本では圧倒的に強く、政治が政策決定における森羅万象をコントロールしていないのだ。結局、我々自民党国家戦略本部が提唱する新しい政策決定方式を導入する以外に日本を救う道はない。では、仮に新しい政治システムを導入していたら、現状はどうなっていただろうか?

まず、小泉首相は、官僚以外から政治任用した各分野の気鋭の専門家を約10人、「日本版ポリシーユニット」として官邸の自室に隣接する部屋に常勤スタッフとして置くので、これまでのように、官僚機構の組織代表としての総理秘書官達に、首相に上がる情報も、アイディアも、そして行動も制約される事がなくなる。首相が相談する相手が変わり、情報やアイディアの厚みが圧倒的に増す。そしてわが国が抱える根深い問題の原因と解決方法を、官僚機構とは独立した情報や視点と発想に基づいて詰めることが可能になる。各大臣も、各省3、4人の常勤アドバイザーを官僚以外から置くことによって政策判断の自由度が飛躍的に増すはずだ。

一方自民党政調会長は政策調整大臣であるから、経済財政諮問会議の議員ともなり、党内世論を背負って内閣の政策立案に加わり、後に連帯責任を負う閣議決定を展望して責任ある意見を強力に唱えるであろうし、一方党内では、自ら主宰する政策審議会において党内での政策立案に携わる「うるさがた」を向こうに回し、首相や内閣の意志を体して奮闘するはずだ。また、副大臣や政務官も、自民党内の部会長等を兼務するので各部会を頻繁に召集し、首相の意向を斟酌しながら党内の意見集約に汗をかく。

こうした結果、おそらく日本経済再生の道行きは、まず当初2年程度は、不良債権処理・金融再生・産業再生に集中する。倒産や失業などの痛みに対して経済対策は打つが、その財源は政府保有株式や都市部の行政財産等の大胆な売却により、財政ポジションの悪化は阻止。もちろん、投資減税等産業競争力強化策や行政改革は需要創出の為にも大胆に実行する。そして民間経済が元気を取り戻した3年目当たりから財政再建路線に移行する。財政の大幅黒字化に成功した米国の歴史を見ても「まず経済を自らの力で太らせよ」だ。米国の財政好転幅の6割は経済再生による増収。残りの4割は増税だが、それとて経済回復あっての増税だった。こうした大胆な決断は、考え抜かれた政治にしかできない。