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NIKKEI NET 特別コラム「ザ・フロントランナー今週の視点」第5回-2001/11/19 号

国会が外交情報に責任を持とう

9月11日の米国同時多発テロ以来めまぐるしく動いて来たアフガン情勢。おそらく我々には見えていない動きもたくさんあるはずだ。やはり、外交・安全保障政策の成否は報道などからは知り得ない真実に関する情報をどれだけ正確かつ豊富に持っているかどうか、にかかっているのではないか。

昨年末に発覚した外交機密費横領事件を受け、来年度の外務省の報償費予算は56億円から33億円へと4割カットされる。「各種レセプション等関連経費」など機密費とも呼べないような支出を他の勘定へ付け替えることで、まず25%減額し、報償費そのものも15%減らして、合計で4割のカットだ。与野党とも「減額」の大合唱だった。

確かに、本来の機密費の目的に合致していない支出を切り込むなどの見直しは当然だが、外交の基本である調査・諜報(ちょうほう)はもっと強化すべきだとの議論が欠けていないだろうか。昨秋、公表された「アーミテージ・レポート」でも日本の調査・諜報活動の強化の必要性が指摘されている。私も党の外交部会長を昨年、経験し、日本では正確かつ豊かな情報と歴史的大局観に基づく日本独自の外交戦略や安保政策がいまだに確立されていないとの思いを一層深めた。

米国では1947年に設置されたCIA(中央情報局)が大統領府国家安全保障会議の管轄の下で、政府全体の諜報活動を調整してきた。しかし、監督強化が行なわれないままにしばしば行き過ぎた活動が問題となり、上院では76年に、下院では77年にそれぞれ「諜報特別委員会( Intelligence Committee )」が設置され、原則、秘密会形式での監督の仕組みができ上がった。それでも起きるイラン・コントラ事件(86年)のような活動に対し、米国議会は上院の承認が必要な「独立会計検査官」をCIAに置くこととし、議会への報告義務を課した。機密性を保ちながら、納税者への説明責任を果たすぎりぎりの仕組みと言えよう。

長らくベールに覆われていたCIA予算も97年度、98年度の2年度のみは公開されたが、何とその額は約3兆円にものぼる。もちろんこの予算の詳細は不明だが、日本を含め、世界各国の経済から文化まで幅広く詳細な情勢分析をしていることは実際に日本経済分析を行なっている身近な米国人エコノミストから聞いたことがある。ハーバード大学のボーゲル教授も一時、CIAにおられた。やはり、世界戦略を構築するには正確かつ豊富な情報が不可欠なのだ。

それにひきかえ、日本ではいささか感情論が先走り、外交機密費減額論の一点張りだ。一人前の国家として当然必要な情報収集活動を十分せずに日本独自の世界戦略を組み立てることはできない。もちろん、そのコストを担う納税者への説明責任は確実に果たさなければならず、その役割は国会以外にない。そもそも国会には、外交機密費のずさんな使い方を予算・決算審議を通じて結果として承認してきてしまった責任があるはずだ。外務省だけを非難するのはフェアではない。

世界外交の舞台へ中国が急速に台頭しているなど、ダイナミックな変化を続ける世界情勢を考えれば、外務省の情報収集能力を向上させると同時に、国家の司令塔たる総理官邸にも総理直属の情報収集・分析機関を創設すべき時も来ていると思う。これらを決めるのは国会のはずだ。

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