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NIKKEI NET 特別コラム「ザ・フロントランナー今週の視点」第4回-2001/10/08 号

最後の一手

この10年間、永田町では何度「緊急対策」という言葉が使われただろうか。我々政治家ですら、緊急対策という言葉にはオオカミ少年の匂いを感じるようになってしまった。いまや緊急事態といっても、誰も本当に緊急だと思わない。これこそが、本当の危機の始まりである。
小泉首相という高い支持率に恵まれたリーダーが登場し、いよいよ構造改革に切り込むか、という矢先に、米国での同時多発テロが起きた。その影響の深さ、長さについては誰も予測しえない、正解のない航海が始まってしまった。今こそリーダー達は英知を結集し、社会的ダメージを最小限に食い止める知恵を出さねばならない。最後の一手を打てるか否か、究極の責任は政治にある。
日本の焦眉の急は、不良債権問題を中心とした銀行システム改革と、そのミラーイメージとも言える過剰債務企業の再生にある。先の改革工程表での特別検査やRCC活用などのメニューは、残念ながら市場を納得させるには全く至っていない。つまり、ワンセットで示されねばならない「厳格な資産評価」と「資本不足への対処」への道筋が不明確なのだ。打つべき「最後の一手」とは何なのか、識者の意見はかなり集約されつつある。ただし、問題は信用秩序の機微に係わる。その実行は、相当の情報管理下で行なわねばなるまい。小泉総理だけでなく、全政府への信頼を立て直すことが先決である。

具体的ステップは以下の通りだ。

  1. 現状の株価やテロ事件への報復長期化など経済の先行き不安定化を踏まえれば、99年の資本注入に伴う経営健全化計画はすでに破綻している。公的資本を受けていない銀行も含めて、主要行には銀行法第24条ないし第26条に基づき、経営健全化計画の再策定や改善計画の提出を行わせる。
  2. 金融庁は、銀行法第25条に基づき、主要行全てに対し、「特別検査」を含む立入検査を万難を排して10、11月中に行ない、大口要管理先リストとそれら企業の再建計画を策定させる。
  3. 金融庁は検査結果を踏まえ、追加的に必要な資本額を各行別に確定、まずは減資を経たうえで、銀行に民間から調達させるが、残額を公的資本として「システミックリスク回避」目的のために来年3月末までに普通株を注入する。もちろんその規模は市場を納得させるものでなくてはならない。その際、議決権の行使を含めて、かかる銀行の経営者はほとんど全員引責退陣するなど、経営の抜本改革を行う。
  4. 同時に、リスク管理債権は、市場価格にてRCC(整理回収機構)に一括移管させ、各銀行を「グッドバンク」として新たに蘇らせる。直接RCCに債権を売却してもいいし、スウェーデンのように銀行ごとに設立した「バッドバンク」の株式をRCCが時価で買いとってもいい。さらに、万が一の二次ロスは、当該持ち込み銀行が自行の普通株にて現物弁済する。いずれにしろ、主要行の一部国有化を視野に入れる。
  5. RCCは移管された不良債権の借り手企業を極力再生させるために、自前のスタッフの強化とともに民間のプロフェッショナルズを契約によって大量に集結させる。もちろん、法的処理が相応しいケースもあろう。また、不動産再開発促進のための体制強化も不可欠である。
  6. RCCについては、政府の「不良債権問題を3年間で正常化する」との方針を具現化する覚悟を示す意味でも、5年で組織としての終止符を打つ「5年サンセット法案」を直ちに今臨時国会に提出する。

世界の共通認識となってしまった「もうこれ以上待てない」という気持ちに応える最後の機会を逃すわけにはいくまい。